金正恩も止められない「キレた兵士」の暴走に北朝鮮が戦慄

金正恩も止められない「キレた兵士」の暴走に北朝鮮が戦慄

朝鮮労働党第6回細胞書記大会で演説した金正恩氏(2021年4月7日付朝鮮中央通信)

昨年の収穫が底をつき、食糧事情が悪化する「春窮期」を迎えている北朝鮮。コロナ鎖国の今年はその程度が例年に増してひどいようだ。そんな中、住民の間ではある種の不安が高まっていると、中国との国境に接する慈江道(チャガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

国境警備強化のため現地に派遣された軍の暴風軍団と第7軍団の兵士に対しては、4ヶ月に渡る冬季訓練が終わる今年3月まではそれなりの食糧配給が行われていた。ところが、今月に入ってからはその量が徐々に減り始め、副食(おかず)がなくなりつつあるという。

現地住民は、彼らが民家を襲撃して人を殺し、食糧を奪う盗賊団になるのではないかとの恐怖に震えている。

北朝鮮においても、軍が民間人の領域を犯すのは「禁断の行為」だ。しかし、本能には勝てない。飢えた兵士たちは駐屯地周辺の民家、農場を襲うのはもちろんのこと、災害復旧の派遣先でも乱暴狼藉を働く。金正恩総書記は、被災地での窃盗に対して重罰で対処する方針を示したが、さほど効果がなかったようで、兵士の集団が「馬賊」呼ばわりされる状態は続いている。

前述の通り、当初は補給に力を入れていた当局だが、派遣期間が長期化するにつれ、物資の輸送にも問題が生じた。情報筋は詳細に触れていないが、輸送過程での横流し、着服などが相次いだことは、今までの事例を考えると想像に難くない。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)に派遣されていた暴風軍団に対しては、今月5日、最高司令官(金正恩総書記)の撤退命令が下されたが、慈江道には正式の命令が届いていないようで「すぐに撤収するだろう」「いやまだ居座るだろう」と相反する噂が流れていると情報筋は伝えた。

ただ、「未だに撤収に関する指示は下されていないが、夏季訓練の前や、障壁、高圧線の設置工事が8割程度進めば、時間差を置いて国境沿線の全地域からの撤収命令が下されるとの見方も出ている」と情報筋は伝えている。

第7軍団の指揮部は咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)で、暴風軍団は平安北道(ピョンアンブクト)徳川(トクチョン)に本部がある。本来の駐屯地から離れ、設備の整っていない出先での勤務が長期化したことで疲労度が増し、「思想状態」にも問題が生じているようだ。

当局は、地域住民とズブズブの関係にあり、密輸や脱北に手を貸す国境警備隊を信じることができず、思想状態が「良好」と見られていた暴風軍団と第7軍団の兵士たちを、内陸地方から国境沿いの地域に派遣した。

しかし、国境越しに「豊かな中国」を生まれて初めて目の当たりにした兵士たちが、衝撃を受けないはずはないのだ。彼らの思想の緩みは、部隊復帰後に目撃談の形で、地域社会に広がることだろう。

第7軍団、暴風軍団が撤収する前から、前述のコンクリート障壁、高圧線の設置作業にあたる建設部隊の兵士たちが大量に派遣され、地域住民の不安はさらに高まっている。

今のところ、彼らには1日にトウモロコシ飯600グラム、塩漬けの白菜入りのスープ、塩漬けの大根などがきちんと配食されているが、1〜2ヶ月もすればその量が減るだろうと地域住民は見ている。

「国からの配給が不足すれば、それを補うために、民間人の家を襲って、鶏、ウサギ、犬などの家畜を盗み、秋になればトウモロコシ、大豆、白菜、大根などすべてを奪い尽くすだろう」(現地住民の声)

この地域の住民は、密輸で生計を立ててきたことから、それをできなくする兵士に対する視線は厳しい。生きていくには、山を切り開いて畑を耕し、作物を作るしかない。それすらも飢えた兵士が虎視眈々と狙う現状の中、「希望が持てない」とため息をつくばかりだ。

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