不満高まる退役軍人の「ガス抜き」に苦心する北朝鮮政府

不満高まる退役軍人の「ガス抜き」に苦心する北朝鮮政府

労働党第8回大会記念軍事パレード(2021年1月15日付朝鮮中央通信)

4月25日は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の前身である朝鮮人民革命軍(抗日遊撃隊)の創建日だ。1978年から2017年までは「人民軍創建日」(健軍節)として祝われてきたが、2018年からは朝鮮人民軍が正規軍として創設された2月8日に変更された。

4月25日は昨年5月の最高人民会議常任委員会の政令で、国家的名節(お祝いの日)で休日と定め4年ぶりに祝日となったが、デイリーNK内部情報筋は、「今年のこの日には、何の配給もなかった、口だけの国家的名節」で、一般国民には「単なる休日」として認識されていると述べた。

一方、除隊軍官(退役将校)に対しては、様々な特典があった。今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)の前日、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市内に在住する除隊軍官に、名節(お祝いの日)の特別配給が実施されたが、それに続けて食事会が開催されたと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

これは中央からの指示に基づくもので、清津では青岩閣、会寧では会寧館など高級レストランが会場となった。

ちなみに会寧館は、2010年に金正日総書記が巨額の予算を投じて会寧に作らせたレストラン15店舗の一つで、前年の貨幣改革(デノミネーション)で大損した会寧市民の間で高まる反政府感情をなだめるための施設と言われている。しかし、その後の2011年春にも反体制ビラ散布事件、2011年8月15日の会寧館爆破事件など、反政府的な動きが続いた。

一方、両江道の情報筋によると、現地では恵山市の鴨緑閣で食事会が開かれた。除隊軍官が夫婦同伴で招待され、酒、ビール、豚肉、卵、豆もやし、キムチ、スンデ(腸詰め)、トウモロコシ麺、餅、果物が振る舞われたという。

これまでにも、北朝鮮で重要視される整周年(5や10で割り切れる年)の軍関連の記念日に、除隊軍官を招いての食事会が開かれたことがあったが、89周年の今年の開催と夫婦同伴は極めて異例のことだという。

かつては悠々自適の老後生活を送れた除隊軍官だが、国際社会の制裁、コロナ鎖国などで食糧事情が悪化する中で、待遇が急激に悪化し、不満が渦巻いていた。当局は、彼らの生活実態の調査を行うと同時に、豚肉1キロを配給するなど、厚遇で体制を支える核心階層の除隊軍官の懐柔に乗り出していたが、今回の食事会もその一環と見られている。

当局の狙いは大当たりだったようで、除隊軍官に対する関心の高まりに、当人たちは大喜びだという。今後も除隊軍官を激励する行事が頻繁に行われるとの噂も出回り、期待が高まっている。ただし期待が高まりすぎると、裏切られたときの失望は大きいものになるため、当局は今後いかにして行事を開いて除隊軍官の心をつなぎとめるか苦心していることだろう。

その一方で、一般住民は不満たらたらだ。人民班(町内会)を通じて、食事会の費用を徴収させられたからだ。法的根拠のない金品の徴収を指す「税金外の負担」について、金正恩総書記は断固阻止して統制すべきと述べていたはずなのだが。

関連記事(外部サイト)

×