「女性イナゴ商人」踏みにじる金正恩体制に北朝鮮国民が反発

「女性イナゴ商人」踏みにじる金正恩体制に北朝鮮国民が反発

2018年9月20日、韓国の文在寅大統領らと白頭山を訪れた金正恩氏(平壌写真共同取材団)

近年の北朝鮮経済の大きな流れは、市場経済と計画経済のハイブリッドな経済体制への移行だ。それに従い、内閣は市場や各機関の経済活動への統制を強めている。その実態は明確になっていない部分も多いものの、当局がこうした取り組みの中で、実質的な税収の拡大を目指していることだけは間違いない。

それは、最近強化されている「イナゴ商人」の取り締まり強化にも現れている。本来、市場で商売するには、市場管理所に市場管理費という名の税金を支払わなければならないが、払えるほどの儲けがない零細商人、負担を嫌う商人は、市場の周辺や人通りの多いところに露店を開き商売をする。そんな人々を「イナゴ商人」と呼ぶ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、最近行われた取り締まりの様子について伝えているが、そのやり口のひどさは、市民が驚愕するほどだという。

当局は、従来の安全員(警察官)、糾察隊(各組織の取り締まり班)に加え、地域の人民班長(町内会長)を動員して、取り締まりに当たらせている。

事件が起きたのは先月28日のこと。赤ん坊をおぶった30代女性が、道端でサンチュ(チシャ)とネギを売っていたところに、人民班長の集団がやって来た。女性は「売り切れるまで(商売できるよう)見逃してくれ」と頼み込んだが、「さっさと立ち去れ」と追い払ったという。

この過程で口論が起きたようだが、人民班長の集団は女性の髪を掴んで引きずり、足蹴にするなど暴力を振るった。程度は不明ながら、女性は負傷したようで、病院に搬送される騒ぎとなった。この話はあっという間に市中に広がり、人民班長に対する怨嗟の声が上がった。

人民班長は、防犯活動、住民の思想動向の監視、税金の徴収など行政・治安機関の末端要員の顔と、住民の生活を細かくケアするソーシャル・ワーカーのような顔を併せ持つ存在だ。恨まれることもあれば、頼られる場合もあるが、住民の支持を失えば役割を十分に果たせなくなる。

今回、特定の人民班長に対する何らかの動きが起きているかは不明だが、一部の市民は安全部(警察署)と洞事務所(末端の行政機関)に対して、人民班長をイナゴ商人取り締まりに動員するのは止めて欲しいと要求する事態となっている。

ごく限られたものではあるが、長期間閉じられていた国境が開かれ、貿易が再開されたものの、食糧難の解消には至っておらず、食糧が底をついた絶糧世帯が大幅に増加している。

当局は、庶民が食糧難を耐えしのぐための些細な商売を取り締まり、個人が山を切り開くなどして作った畑を没収している。庶民を豊かにするはずの「国家経済発展5カ年計画」が、庶民を苦しめている。

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