鉱山・農村への「強制配置」がもたらした北朝鮮軍の腐敗堕落

鉱山・農村への「強制配置」がもたらした北朝鮮軍の腐敗堕落

労働党第8回大会記念軍事パレード(2021年1月15日付朝鮮中央通信)

北朝鮮の金正恩総書記が、今年1月の朝鮮労働党第8回大会で提示した「国家経済発展5カ年計画」。その達成のために、兵役を短縮し、繰り上げ除隊させられた元兵士を、労働力が不足している農村や炭鉱などに集団で送り込む「集団配置」が行われている。

開始早々、各地でトラブルが噴出して当局は対応に苦慮している。デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の情報筋が、その詳細を伝えている。

トラブル発覚のきっかけとなったのは、労働力を受け入れる側による問題提起だ。咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市にある羅南(ラナム)炭鉱機械連合企業所内の党責任書記は先月末、企業所に送り込まれた元兵士たちと個別談話(面談)を行い、生活面での問題はないかなどを聞き取った。

すると、彼らは次々にこんな不満を口にしたという。

「なぜ自分だけここに送り込まれたのか理解できない。自分と同じ時期に入隊した連中は、全員(集団配置の対象から)外れた」

繰り上げ除隊と集団配置は、大学進学が決まっている者など一部を除き、全員が対象になっていたはずなのに、本人以外の全員が外れたというのはただ事ではない。大々的な「手段配置逃れ」が行われていることを察知した責任書記は、中央党(朝鮮労働党中央委員会)を通じて、1号報告(金正恩氏への報告)を行なった。

軍の総政治局も大慌てで捜査に着手。その結果、情報筋が触れているだけでも第3軍団、第9軍団、620訓練所、108訓練所など、不正行為が極めて広範囲で行われていたことが判明した。現在、中央党、総政治局、保衛局(元の保衛司令部)による合同検閲(監査)が行われている。

不正行為の手口は次のようなものだ。

集団配置を「ビッグチャンス」と見た隊列部(人事担当)の書記は、個々の兵士の文献(個人情報ファイル)に手を加えられる権限を振りかざし、集団配置の対象者に取引を持ち掛けた。カネを受け取って生年月日と入隊年月日を修正し、対象から外れるようにしたのだ。

責任書記はさらに、隊列部の参謀担当者にもワイロを掴ませておけば、問題をもみ消してくれるとアドバイスした。責任書記が一種のブローカーの役割を果たし、隊列部全体で不正行為を働いていたということだ。

当たり前のように行われてきたこの手の不正行為だが、非常に運の悪いことに、金正恩氏にまで報告される大事件となってしまった。

その後、金正恩氏からは「首領の軍隊、党の軍隊である人民軍には特殊(不正)などありえない。以民為天(民を以て天と為す)、自力更生の理念を深く刻み込み、社会主義の新たな勝利を勝ち取ろうとする全党、全軍、全民の革命的意志に冷や水を浴びせ、党の路線の執行、貫徹に逆らう特殊行為に対する強い組織規律を立てること」という内容の「1号方針」が下された。

この方針に基づき、2期訓練(冬季訓練)までに不正に関連した者は多くが生活除隊(不名誉除隊)させられるだろうと、情報筋は見ている。

一般の兵士たちは「みっともない不正行為がついに摘発された」と、取り締まりを歓迎する一方で、表面上は志願の形を取っているものの、実際は強制である集団配置が続く限り、不正行為の根絶は困難だろうという見方が大勢を占めている。

そもそも集団配置は、国の経済にとって重要な職場なのに誰も行きたがらず、今いる人員も次々に逃げ出しているところに、人を無理やり送り込むというものだ。例えば鉱山は、革命化処分(一種の島流し)の行き先として使われるところで、労働環境も生活環境が劣悪で、労災死亡事故も耐えない。

鉱物の対中輸出が盛んに行われていたころには、給与面で待遇がよかった鉱山もあったが、国連人権理事会の対北朝鮮制裁で鉱物輸出が禁止されてからは、すっかり没落してしまった。

また、戸籍が都市戸籍と農村戸籍に分けられ、移動や居住の自由が制限されているため、集団配置の対象になれば、比較的豊かな都会に戻る可能性を絶たれ、人生を「詰んだ」形になりかねないのだ。人生を狂わされ、絶望のあまり凶行に走る者すら出ている。

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