「人体実験」で8人死亡…北朝鮮の製薬業の恐るべき実態

北朝鮮で身寄りのない老人相手に非倫理的な人体実験 10人のうち8人が3日以内に死亡

記事まとめ

  • 北朝鮮の製薬工場は、一時は覚せい剤の製造のため一般医薬品の製造開発を軽視していた
  • そのため、開発を急ぐために被験者の同意を欠いた非倫理的な人体実験も行われている
  • 身寄りのない老人10人に『にんにく注射』を行ったら、10人中8人が3日以内に死亡した

「人体実験」で8人死亡…北朝鮮の製薬業の恐るべき実態

「人体実験」で8人死亡…北朝鮮の製薬業の恐るべき実態

穀物加工工場を視察した金正恩氏(2016年6月16日付労働新聞)

北朝鮮で流通する加工食品、生活必需品の多くは中国製だ。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、国内の工場の多くが稼動中止に追い込まれ、今に至るまで再開できていないのだ。金正恩総書記は、国内製品の生産、消費奨励を何度も訴えているが、さほどうまくいっていないようだ。

多くを中国に頼っているのは、医薬品も同じだ。国内にも製薬工場があるのだが、一時は外貨稼ぎ用の覚せい剤の製造を大々的に行い、一般医薬品の製造開発をないがしろにしてきた。それが、今になって様々な問題を引き起こしている。

デイリーNKの内部情報筋によると、平安南道(ピョンアンナムド)の養老院(老人ホーム)で暮らしていた身寄りのない老人10人に対して、注射が行われた。注射薬は、首都・平壌にある龍興(リョンフン)製薬工場製の「コカルボキシラーゼ」というビタミンB1製剤で、日本で言うところの「にんにく注射」だ。

ところが、10人のうち8人が3日以内に死亡するという、大規模な医療事故に発展してしまった。だが、これはある程度予見されたものだったようだ。

今月初め、中国製の同じ成分の注射を受けた、ある経済官僚が死亡する医療事故が発生したことを受けて、金正恩氏は中国製の医薬品の使用を禁止した。しかし、現在の国内生産では需要を賄えないのが実情だ。

そこで、開発を急ぐために、被験者の同意を欠いた非倫理的な人体実験を行ったのだ。それも、死亡する可能性を念頭に置き、「死んでも問題にならない」と身寄りのない老人を選んだようだ。

8人死亡の報告を受けた金正恩氏は、「試薬や技術力が足りないのならば、まだ(コカルボキシラーゼは)完成段階にはないと率直に認めるべき」だと述べ、同じ工場で製造されている「高麗人参活性丸薬」の検証を行うよう指示を下した。

指示の理由が分かりづらいが、「高麗人参活性丸薬」は難病に効果があり、耐性も副作用もないとの触れ込みで、海外輸出を計画していたが、今回の医療事故で、この工場の製品全体が信用を失い、輸出ができなくなることを恐れたためと思われる。

金正恩氏はさらに「高麗人参そのものを輸出する方がマシだ」「効能のない薬品の開発になぜ貴重な資源を浪費するのか」と関係者と叱責したとも伝えられる。

現在、製薬工場に対しては中央党(朝鮮労働党中央委員会)が検閲(監査)を実施しており、金正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長も関わっているとのことだ。

「輸入に頼らず自主的に医薬品を生産して、先端医療技術を持つのがお上(当局)の目標だったため、今回の事件で党内が大騒ぎになっている」(情報筋)

当局が、国民の健康に貢献する医薬品より、外貨稼ぎ狙いの輸出用医薬品に力を入れるという、異常とも言うべき北朝鮮の製薬業。今回の医療事故を隠蔽したとしても、北朝鮮製の医薬品には成分に問題があることが指摘されており、当局の思惑通りに外貨を稼ぎ出すのは難しいだろう。

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