「犠牲者数、予測もできない」核実験場近隣で死亡事故多発

「犠牲者数、予測もできない」核実験場近隣で死亡事故多発

水害で被災した銀波郡の復旧現場を視察した金正恩氏(2020年9月12日付朝鮮中央通信)

北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡と言えば、世界的に有名になった豊渓里(プンゲリ)の核実験場のあった地域だ。

その吉州郡で、労働者たちの生命を脅かす事故が多発している。

今年3月に開催された第1回市・郡党責任書記講習会の場で、「住宅を増やせ」との方針が下されたことを受け、朝鮮労働党吉州郡委員会は先月から、住宅建設工事に取り掛かった。現場で働いているのは、半強制の建設ボランティア部隊である突撃隊だ。

ところが、現地のデイリーNK内部情報筋は、突撃隊の間で恐怖が広がっていると伝えた。理由は、建設現場での事故の多発だ。

今回の工事だが、建物を新築するのではなく、元々あった3〜4階建ての建物に、2〜3階を上乗せするというかなり無茶なものだ。数合わせさえできればいいというやり方で、過去に起きた建物崩壊事故を予見させる。

吉州駅前のマンションで行われていた工事の現場では先月17日、突撃隊員3人が3階から転落、28日には2人が転落するなど、事故が相次いでいる。

うち3人が死亡し、2人は復帰が絶望視されるほどの傷を負ったという。5人のうち2人は吉州防腐剤工場の労働者で、3人は食堂の従業員という、建設工事に関してはズブの素人だった。おまけに、安全装備は一切与えられてなかったという。

それ以外にも、湿らせた丸太にかすがいを打って固定した鉄筋の柱の荷重で、足場が崩落する事故も起きるなど、事故が多発し、勤労動員を避けようとする風潮が表れているという。

現場にいる幹部ですら「こんなやり方では、どれほどけが犠牲者が出るかわからない」と、露骨に不満を述べるほどだという。

そんな空気を物ともせず、地元の党委員会は、資材や安全装備がなくても「ともかく工事を進めろ」と急かすばかり。現場には専門家も技術者もおらず、労災事故多発の原因は党委員会にあると批判の声が上がっている。

遺族は、党委員会の責任書記(トップ)の自宅や、人民委員会(郡庁)の庁舎に押しかけて、「中央に信訴(不正行為の告発)をする」と激しく抗議しているが、党委員会は「事故は本人の責任」だとして、補償は勤め先が行うべきだと責任回避に汲々としている。

重罰主義の北朝鮮では、責任を認めた瞬間に本人らのクビが飛ぶことになる。下手をすると、胴体と首が物理的に分離されることにもなりかねない。ともかく責任を認めないのは、生き残るためでもあるのだ。各地域の事情を全く考慮せず、目標を押し付けるだけの中央のやり方に根本原因がある。

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