「美女も犬のように死んだ」金正恩が引き寄せる暗黒時代

「美女も犬のように死んだ」金正恩が引き寄せる暗黒時代

金正恩(キム・ジョンウン)氏

コロナ鎖国による経済苦境で、犯罪の増加が伝えられる北朝鮮。しかし、断片的な情報は出てくるものの、当局が統計を発表せず、国営メディアも事件報道を原則として行わないため、どれほどの犯罪が起きているのかを知るのは非常に難しい。

そんな中、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が、道内における犯罪の統計について伝えた。発生件数の数字はなく、犯罪の種類別の占有率が示されただけだが、それでも参考にはなる。

先月28日午前、咸鏡北道法務部のイルクン(幹部)を中心に、道内の責任イルクン(組織のトップ)が参加して咸鏡北道安全委員会が行われた。その場で、2021年の道内の司法、安全、保衛機関が処理した種類ごとにまとめた犯罪統計が示され、犯罪との闘争で咸鏡北道が役割を果たせたかについて分析が行われたという。

その内容で注目されるのが、全国的に起きている国家財産貪汚浪費罪の多さで、全体の25%を占めている。勤め先の工場、企業所から資材や設備を盗み出したり横領したりして処罰されたケースだ。

比較すべき過去の統計がまったくないので、この25%という数字を評価するのは簡単ではない。だが、国家財産の窃盗や横領は、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の時代に最も深刻だったと言われているが、最近のコロナ経済難で再び増加に転じたことは大いに考えられる。

実は、今回伝えらえた統計で最も多かった犯罪は、反動思想文化排撃法、いわゆる韓流取締法違反で、全体の4割に達する。だが、海外の映像コンテンツの視聴や販売という、他国でならば罪にもならないような行為を無理やり犯罪に仕立て上げているわけで、我々の視点で見たとき、これを犯罪統計の一部と見るのは適当ではないだろう。

一方、同法は密輸や中国キャリアの携帯電話の使用も取り締まるものだが、そうした行為が数多く摘発されたのは、咸鏡北道の地理的特性によるところが大きい。国境沿いの地域でなければ、そうした行為は非常に困難か不可能であり、全国的な傾向とは言い切れない。

こう考えると、国家財産の横領・窃盗の25%という数字は重みを持つ。

前述したとおり、この種の犯罪は「苦難の行軍」のときに頻発した。そして当時の最高指導者であった金正日総書記は、公開処刑の乱発で犯罪を抑え込もうとした。

当時、公開処刑を目撃したある脱北者の男性は「女性2人は20代後半の美人だった。男たちと一緒に電線を切って中国に売り飛ばして逮捕された。若い女性が杭に縛られ、銃で撃たれて死ぬ姿を見るのはものすごく気分が悪かった」などと証言している。また別の脱北者男性は、公開処刑を見ながら「人間も犬のように死ぬのだ」と思ったと話している。

北朝鮮の人々にとって、あの時代こそはまさに「暗黒時代」だったのだ。核・ミサイル開発に対する経済制裁、過剰なまでの新型コロナウイルス対策による国境封鎖、そして自然災害――北朝鮮を深刻な経済難に直面させている原因のほとんどは人為的なものであり、その責任はほかでもない、独裁者である金正恩総書記にあるのだ。

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