農村青年はこうして薬物の「運び屋」になった

農村青年はこうして薬物の「運び屋」になった

故金日成氏が描かれた紙幣でパイプをつくって覚醒剤を吸引する様子/撮影:デイリーNK

北朝鮮では、国営企業だろうが協同農場だろうが、いくら熱心に働いても手にする収入は子どもの小遣い銭にしかならない額。生きていくには商売をするしかない。その元手を借りるために利用するのは、ヤミ金業者だ。

銀行があるにはあるものの、個人が融資を受けるのは不可能に近いため、利息が非常に高いことを知りつつもヤミ金を利用するしか方法がないのだ。そんな人たちは、常に返済に行き詰まるのではないかとの心配を抱えて生きている。中には、返済のために犯罪に手を染めてしまう人もいる。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋はそんな事例を紹介した。

平壌郊外の一大流通拠点、平城(ピョンソン)に暮らしているある男性。元々は農村出身だが、生活費を稼ぐために豚を飼うことにした。大儲けはできないものの、成功すれば生活が安定し、次の商売の元手が稼げると目論んでのことだろう。

しかし、運の悪いことに家畜伝染病のアフリカ豚コレラが北朝鮮で広まってしまい、彼の飼っていた豚3頭も死んでしまった。きちんとした情報が得られていればリスクを避けられたのかもしれないが、北朝鮮の国営メディアに迅速な情報伝達を望むのは不可能だ。

政府からの補償はまったくなく、多額の借金を背負い込むことになった。

そこで、知人から持ちかけられた仕事を請け負うことになった。ある品物を中国との国境まで運ぶというもので、荷物は一見、抗生剤のペニシリンのように見えた。列車に乗って運ぶ途中に列車保安員(鉄道警察)に逮捕された。中身は麻薬だったのだ。平城の保安署(警察署)で取り調べを受けているが、最悪の場合、銃殺される可能性すらある。

彼を犯罪へと追い込んでしまったのは、借金の厳しい取り立てだろう。追い込まれた末に、自ら命を絶つという悲劇的な事件も多発している。当局は取り締まりを行っているが、国営銀行が金融機関としての機能を果たしていない北朝鮮でヤミ金を根絶してしまうと、経済に甚大な影響が出かねない。しかし、保安員とグルになって家を取り上げるなど、度を越した取り立てが事実上放置されているのも事実だ。

「この国では貧しい人たちを守ってくれる手段や装置はほとんどない。殺伐とするばかりの雰囲気に、わずかばかりの借金で不本意ながら犯罪に手を染めてしまう状況がとても残念だ」(情報筋)

社会的に羨ましがられるはずの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍官(将校)ですら、生きていくために麻薬の運び屋をやってしまう。それが、北朝鮮の人々が置かれた状況だ。

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