野犬に襲われ無残にも…北朝鮮「21歳女性兵士」の悲劇

野犬に襲われ無残にも…北朝鮮「21歳女性兵士」の悲劇

北朝鮮の女性軍人 ?Roman Harak

韓国で2014年4月に発生したセウォル号沈没事故では、304人もの貴重な命が失われた。韓国政府は沈没直後から長期に渡り、海底に沈んだ船体内で行方不明者の捜索を繰り返した。事故から3年後、韓国政府は船体を引き上げて、船内を隅々まで捜索、行方不明者の遺骨を収集した。

このように韓国の人々にとって、家族の遺骨を手厚く葬ることはとても大切なことだが、それは同じ民族である北朝鮮の人々も同じだ。死者や墓地を粗末に扱えば、怒りを爆発させる。

それなのに、家族との再会を果たせず、丁重に葬ってもらえない人々も少なくない。例えば、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)に勤務する兵士だ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、清津(チョンジン)市郊外に駐屯する高射銃部隊で兵役についていた21歳の女性兵士の非業の死について伝えている。

黄海北道(ファンヘブクト)の農村出身のこの兵士は、部隊に配属された5年前から副業小隊で勤務し続けてきた。この「副業」とは、部隊で消費する食糧を生産することを指す。朝鮮人民軍は慢性的な食糧不足に悩まされており、それを解消するために副業地と呼ばれる農地を所有、兵士たちに食べさせる農作物を生産している。

彼女は、トウモロコシ畑で農作業中に、周囲を徘徊していた野犬に噛まれてしまった。周囲には人が大勢いたが、傷口が小さかったことから、本人を含めて誰も大したこととは考えなかったようだ。農繁期で忙しかったこともあり、結局病院には行かなかった。ところが、数日後に亡くなってしまった。実はこの犬、狂犬病に感染していたのだ。

副業小隊は慢性的な飢えに苦しむ兵士たちの「生命線」であり、農繁期に作業を休むのは難しい。そうした事情が、彼女の死を引き寄せてしまったのかもしれない。

狂犬病は、発病すれば治療方法のない恐ろしい病気だ。発病を防ぐ唯一の方法は、複数回に渡って狂犬病ワクチン接種を受けることだ。日本では国内での感染は長年起きていないが、北朝鮮と軍事境界線を挟んで向き合う韓国では、度々発生している。その多くが、軍事境界線を超えてやってきた野生動物を媒介にしたものと言われている。

昨年韓国で猛威を振るった家畜伝染病、アフリカ豚熱(旧称アフリカ豚コレラ、ASF)も同様のルートで北朝鮮から広がったものと推測されている。

部隊は、家族に亡くなったことを知らせ、遺体を引き取るように一方的に通告した。しかし、新型コロナウイルスの感染防止対策として国内移動が制限されている今、家族は黄海北道から数百キロ離れた清津まで行けないために、部隊で手厚く葬ってもらいたいと伝えた。

情報筋は、彼女の遺体がどのように葬られたかについて触れていない。一方で現地の別の情報筋は、事故で亡くなった兵士が、まるでゴミのように捨てられた件について伝えた。

事故が起きたのは今年4月末。清津郊外の青岩(チョンアム)区域に駐屯する部隊で、訓練中に平安南道(ピョンアンナムド)出身の20代の兵士が、銃の暴発で顎の骨の一部が吹き飛ばされる重傷を負った。しかし、まともな治療を受けられず、骨髄まで炎症が広がり、数日後に死亡した。

部隊は「事故は本人の不注意によるもの」だとして、葬儀費すら出そうとせず、家族に一方的に遺体を引き取るように通告した。結局、兵士の遺体は棺桶にも入れられないまま、裏山に埋められてしまった。この話を伝え聞いた市民は、あまりにひどい扱いに憤っているという。中でも、自分の息子、娘を軍隊に送り出した親たちにとっては、決して他人事ではないのだ。

しかし、朝鮮人民軍はもちろんのこと、北朝鮮では国のために働いて亡くなった人なのに、当局が丁重に葬らないことがしばしば起きる。費用負担に加え、事故の責任が自分たちにあることを認めれば、問題になりかねないからだ。最悪の場合、責任者が処刑されることすらあり得るのだ。

生きている人の命を救うために、死者を粗末に扱う。これが人間中心のチュチェ(主体)思想を標榜する北朝鮮の現実だ。

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