コロナ苦境で配給停止…「金正恩エリート」に餓死の恐怖

コロナ苦境で配給停止…「金正恩エリート」に餓死の恐怖

慈江道にある軍需工場、江界トラクター総合工場を視察する金正恩氏(2019年6月1日付朝鮮中央通信)

北朝鮮当局は、首都・平壌の市民に対する食糧配給が今年3月を最後に止まってしまったことを重く見て、様々な対策に乗り出している。最も優遇されている平壌市民ですらこの有様ということは、地方の状況は推して知るべしだろう。

一般住民のみならず、平壌市党(朝鮮労働党平壌市委員会)、市内にある政府機関に勤める幹部に対する食糧配給も、3ヶ月前から途絶えていると、米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。

平壌の情報筋によると、別の情報筋は、平壌の一般市民に対する配給は1年前から減り始め、今年2月から完全にストップしたが、3月からは金正恩体制のエリート層である朝鮮労働党や行政機関、軍の幹部に対する配給も止まってしまった。

幹部の家族の中には、生活苦の打開のため、市場に行って商売する者も増えている。それも、幹部である夫の権力をカサに着て、一般の商人を追い出して店を出すというあくどい手法で、恨みを買っている。なりふり構わぬやり方には、それなりの事情があるようだ。

「今の苦境が続けば、一般市民はもちろんのこと、幹部の家族ですら栄養失調になったり、餓死したりする人が出かねない」(情報筋)

1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の際、庶民は盗みや売春など、生き伸びるための手段を選ばなかった。今や金正恩体制のエリートたちまでが、似たような境遇に追いやられているのかもしれない。

北朝鮮国民の多くは、もはや国からの配給など当てにせず、市場での商売で現金収入を得て生計を立てている。

韓国の北朝鮮研究学会と現代リサーチ研究所が、韓国在住の脱北者を対象に行なった調査では、2016年から2019年までの私経済従事者(市場や企業などから全部または一部収入を得ている人)の割合は48.0%に達した。

一方、国営経済従事者(国営企業や国の機関から収入を得ている人)は28.5%だったが、平壌ではこの割合が高いと言われている。勤め先からの食糧配給に頼って生きている人が多いということだ。配給の中断による餓死は、決して大げさな話ではないのだ。

別の情報筋によると、「苦難の行軍」のころでさえも、平壌市党や政府機関の幹部に対する配給は続けられていた。近年は国際社会の制裁強化で量が減り始め、耐乏生活を余儀なくされていたが、新型コロナウイルス対策による影響で、配給そのものがストップしてしまった。

「平壌市の幹部は、都会暮らしなので配給中断による苦痛は地方の幹部より何倍もひどい」(情報筋)

この「苦痛」とは、耐乏生活に慣れていないということだ。平壌の幹部やその家族が、いかに良い暮らしをしてきたかということだ。

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