金正恩印の特別配給、平壌市民の期待に満たず

金正恩印の特別配給、平壌市民の期待に満たず

朝鮮労働党軍事委員会拡大会議に参加した金正恩氏(2020年5月24日付朝鮮中央通信より)

1994年7月8日は、北朝鮮建国の父である金日成主席が亡くなった日だ。毎年この日には、首都・平壌の市民に対して特別配給が行われてきた。

平壌のデイリーNK内部情報筋は、今月4日から6日までの間に市内の配給所でコメと副食物の配給が行われたと伝えた。

それに先立つ今月2日と3日、平壌市内の人民班(町内会)の会議を通じて「配慮配給の緊急供給」が伝えられた。そこで伝えられた内容を見ると、「金正恩党委員長の配慮で配給が緊急に行われた」ということを市民に熟知させたいという当局の意図が露骨に見て取れる。

「首領様(金日成氏)の逝去の日を迎え、敬愛する元帥様(金正恩氏)が施してくださった特別な配慮」

「首領様の恩徳と変わらぬ元帥様の愛が、世代を超えて平壌市民に受け継がれた」

ちなみに会議に参加できなかった人は、その内容がまとめられた文書を渡され、きちんと読んだか確認されたとのことだ。

「元帥様のご配慮」が強調されるのは、平壌の食糧事情が非常に厳しいことと関連がある。

平壌では他の地方と異なり、市民に対する食糧配給が続けられてきた。1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時ですら、配給が完全に絶えることはなかった。ところが、今年に入ってから様子がおかしくなった。1月、2月に配給が行われず、3月になってから3ヶ月分を一気に配給。1ヶ月分の量も12日分に減らされ、コメではなくトウモロコシが配られた。

また、配給する量を少しでも減らすため、平壌市民証を持たずに居住している人に追放令まで出した。

さらには、いかなる状況でも続けられてきた幹部に対する配給も途絶えてしまった。

金正恩氏はこの状況に危機感を覚えたのだろう。先月行われた朝鮮労働党中央委員会第7期第13回政治局会議で平壌市民の生活保障問題を議論し、内閣の全体会議で平壌市民に良質の住居環境、生活用水、野菜を供給するための重大決定を採択した。

新型コロナウイルス、国際社会の制裁、脱北者と韓国などに視線を向けさせ、食糧不足で悪化する世論をコントロールしようと試みたが、それでは役不足だったため、特別配給を行った上で「ご配慮」を強調したのだろう。

ちなみに各配給所には、配給の実施状況について、朝鮮労働党平壌市委員会に報告するよう指示が下されている。

制裁とコロナで青息吐息の北朝鮮。頑張って「無い袖」を振ってみたものの、平壌市民の反応は今ひとつかもしれない。

特別配給が行われるという知らせを聞いた市民の間では「もらえなかった4月、5月、6月の三カ月分の配給がもらえるかもしれない」との噂が広がった。当局にとって、噂による期待値の上昇は非常に面倒なもので、期待を下回る結果となれば市民は満足せず不満を抱く。

しかし「元帥様のご配慮」と銘打っておけば、政策を宣伝する効果がある一方で、不満を抑制する効果もある。金正恩氏の政策に不満をあらわにすれば、政治犯扱いされるリスクがあるがあるからだ。

結局、今回配られたのは7月の1ヶ月分だけ。それも、コメ3にトウモロコシ7の割合で混ぜられたものだ。しかし、高級幹部の多く住む市内中心部ではすべてコメで配られた。また、キャベツ10キロ、キュウリ7キロ、ナス5キロ、テンサイ5キロ、ズッキーニ10キロ、塩5キロ、醤油、油が各1瓶が世帯ごとに配給された。卵は1人あたり2個だった。

この内容に、平壌市民はさぞやストレスをためていることだろう。

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