医薬品不足が深刻な北朝鮮、政府の対策は「病院で作れ」

医薬品不足が深刻な北朝鮮、政府の対策は「病院で作れ」

1月30日、新型肺炎への対策を報じた朝鮮中央テレビ

韓国・保健福祉省の南北協力タスクフォースチーム長のキム・ジンスク氏が、2018年6月に開かれたシンポジウムで明らかにした北朝鮮の主要製薬工場は11ヶ所だ。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)にある興南(フンナム)製薬工場は、解熱鎮痛剤、ペニシリン、点滴液の原料、結核の治療薬を主に製造しており、66の地域に分工場を持つ北朝鮮最大の製薬工場だ。

ところがWHOの調査によると、各工場で製造している薬品は、成分の含量が基準に満たないもの、細菌に汚染されたものなど、品質管理が劣悪だ。また、国際社会の制裁強化で外資が撤収したことが、医薬品製造に悪影響を及ぼしている。

また、施設の老朽化も深刻だ。平安南道の順川(スンチョン)の順川製薬工場は1958年にルーマニアの援助で建設されたが、当時の設備がそのまま使われているようで、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降、設備の更新もままならない状況が続いている。

その一方、外貨稼ぎのために覚せい剤を製造したことで、不足する医薬品の「代用」として乱用が拡散してしまった。

この状況を打開するため、北朝鮮の保健省が下した指示は次のようなものだ。

「各道、市、郡の病院は薬品を自主的に製造、使用せよ」

デイリーNKの内部情報筋によると、指示が下されたのは5月末のことだ。製薬工場の施設の近代化が行われているが、医薬品不足が一向に解消しない。そこに降って湧いたのが新型コロナウイルスである。

医薬品の需要は増える一方なのに、それを満たすだけの生産ができず、輸入もできない。韓国経済研究院によると、今年1〜4月の北朝鮮の中国からの医薬品輸入は前年同期比で13.23%減少している。そこで、「薬は病院で作れ」という呆れた指示が下されたというわけだ。

医療の現場からは不満の声が続出している。

「政府の指示は製薬工場にしかないような設備を、病院で独自に作れという無茶苦茶な話」

製薬には研究開発、臨床試験など様々な過程があり、いくら医療機関だからと言って、そうおいそれと作られるものではない。料理のようにレシピ通りに作れば簡単にできるというものではないのだ。そもそも、設備や技術者がいたとしても原材料が不足している現状で、製造は非常に厳しい。

薬の手作りは今に始まったことではない。北朝鮮の医師は、薬草、小麦粉などを使って抗生剤を製造し、患者に投与している。

患者を助けようとする医師の懸命の努力が悲惨な結果を生むこともある。昨年、両江道の三池淵(サムジヨン)の病院では、農薬を処方して患者に投与し死なせた医師が、処刑されている。

現実的な代案として持ち上がっているのが高麗薬、つまり漢方薬の活用だ。簡単に製造できるものではない点では西洋医学の医薬品と同じだが、国内でも原料の調達ができるというメリットがある。

政府は国民に薬草栽培を奨励している。バカバカしいと文句を言いつつも、上からの命令とあっては従わざるを得ない医療機関にとって、もってこいの話だろう。

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