水害被害の北朝鮮、住宅再建も「個人投資家」が頼り

水害被害の北朝鮮、住宅再建も「個人投資家」が頼り

2019年9月、水害対策に当たる北朝鮮の人々(労働新聞)

韓国の気象庁は15日、ソウル首都圏を含む中部地方では翌朝の朝の雨の後に梅雨前線が北朝鮮に北上し、梅雨明けとなると発表した。梅雨は54日間続き、歴代最長記録を更新、死者・行方不明者50人を出すなど、各地に甚大な被害をもたらした。

韓国より事情が深刻なのが、防災インフラが整っていない北朝鮮だ。国際赤十字社連盟のアントニー・バルマン報道官は13日、米政府のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に、北朝鮮では22人が死亡し、4人が行方不明、住宅8256世帯、農地2万2000ヘクタールが浸水または破損したと明らかにした。

一方、13日に開かれた朝鮮労働党中央委員会第7期第16回政治局会議では、被害状況が次のように発表された。

「雨期の間、江原道(カンウォンド)、黄海北道(ファンへブクト)、黄海南道(ファンヘナムド)、開城市をはじめ、全国的に農作物の被害面積は3万9296ヘクタールであり、家屋1万6680余世帯と公共施設630余棟が破壊されたり、浸水し、多くの道路と橋梁、鉄道が断ち切られ、発電所のダムが崩壊するなど、人民経済の複数の部門で深刻な被害を受けた」

甚大な被害にもかかわらず、金正恩党委員長は新型コロナウイルスを理由に挙げて、外部からの支援を受けないと述べている。

特に被害が大きかったとされるのが、黄海北道(ファンヘプクト)銀波(ウンパ)郡の西隣、黄海南道(ファンヘナムド)載寧(チェリョン)郡だ。

現地の住民がRFAに語ったところによると、郡内では多くの家が浸水し、セメントで建てた家はなんとか持ちこたえたが、土レンガでできた家は完全に崩壊した。土レンガは、文字通り土を固めて作ったレンガで、物資不足の中で国営メディアが使用を奨励していたが、耐久性に問題があると指摘されていた。

金正恩氏は、銀波郡の被災地に医薬品を送ったと報じられているが、この住民によると、載寧郡に対しては中央からの支援金は一切なく、「金の無心をするのではなく、地方政府の力で住宅を復旧せよ」との指示が下されたのみだったという。

2011年の水害では、国際赤十字の支援物資が入ったが、今回はそれも期待できない。復興資金など全くない郡人民委員会(郡庁)が、窮余の策として編み出したのは、トンジュ(金主、新興富裕層)の投資を募るというものだった。

そのスキームは――水害で破壊された農家1軒分の土地をトンジュに与える。トンジュは自らの資金で2軒、または4軒続きの長屋を建てる。うち1軒は郡人民委員会に提供し、残りの3軒はトンジュが販売し利益を得る――というものだ。

つまり、元々住んでいた人は、元の家が建っていた面積の多くを明け渡す見返りに新しい家が得られ、人民委員会も無い袖を振ることはなく政府の命令を守り、トンジュは住宅販売で利益が得られる。マンション建設で広く使われている手法を、災害復興にも利用するということだ。

この発表を受けて、トンジュたちはよりよい土地を物色し始めた。ロケーションによって住宅価格に大きな差があるからだ。人気があるのは、市場へのアクセスが容易な郡の中心に近い地域、大消費地の沙里院(サリウォン)市や海州(ヘジュ)市につながる道沿いなどにある土地だろう。

ちなみにこの地域では、築50年ほどの20坪のマンションは4000ドル(約42万3000円)、新築の30坪のマンションは内装工事前は3000ドル(約31万7000円)、インテリアや配線工事まで終えたものは1万ドル(約106万円)で取り引きされている。

一方、載寧郡から南に50キロほど離れた碧城(ピョクソン)郡に住む農民によると、現地でも8月初頭からの大雨で10軒の家が崩壊した。しかし被災者は、住宅を再建しようにも、市場で資材を購入すると少なくとも1000ドル(約10万6000円)かかるため、考えも及ばないようだ。

郡党(朝鮮労働党碧城郡委員会)は農村宣伝室に避難所を設置、被災者を収容すると同時に、10日分のジャガイモを支給したが、地域の農民たちは「最高尊厳(金正恩氏)がやって来た黄海北道の被災地には軍糧米(軍用の食糧)と資金を支援したというのに、なぜわれわれには何もくれないのか、善心(気前のいい)政治をするフリしかしていないではないか」と、当局の無策に怒りをあらわにしている。

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