【北朝鮮国民インタビュー】党大会で盛り上がる首都市民、冷ややかな市場派

【北朝鮮国民インタビュー】党大会で盛り上がる首都市民、冷ややかな市場派

朝鮮労働党第8回大会、最終日の金正恩氏(2021年1月13日付朝鮮中央通信)

北朝鮮の政治、軍事、文化、経済の中心といえば、言わずと知れた首都・平壌だ。しかし、それは表面的なものに過ぎない。

経済や物資の流通を司る国家計画委員会は平壌にあるが、それは機能不全に陥って久しい計画経済の名残でしかない。実質的な経済の中心地は、平壌の北東に隣接する平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)と言っても過言ではない。

平城市場には、国内外からの様々な物資が集まり、全国に向けて出荷されている。平壌市民の暮らしを下支えしているのも、この市場だ。

先月開催された朝鮮労働党第8回大会では、国家経済発展5カ年計画が示されたが、
北朝鮮の表の顔である平壌と、裏の顔である平城からの見方はどう違うのだろうか。

デイリーNKは平壌と平城に住む一般市民に対するインタビューを行い、党大会での決定事項についての反応を探った。

平壌市民は、本音か建前か不明ながら、幹部ほどではなくとも国に対する忠誠心を示し、経済計画にも前向きな姿勢を示した。

その反面、平城市民は、地方の住民同様に、党大会に対して冷めきった反応を示している。

2つの市は、平城の中心部から1〜2キロも走れば平壌に入り、さらに20数キロ走れば同市中心部に達するほど、近い距離にある。居住はもちろん入市にすら厳しい制限があり、「成功例」のショーウィンドウとしての役割を担わされた平壌に住む市民と、市場経済という北朝鮮のリアリティの中で暮らしている平城市民との心の距離は、物理的な距離をはるかに上回るものだった。

今回の党大会は史上2番目の長期開催だったが、それについての市民の反応は?

平壌市民Eさん:市内中心部のみならず、周辺区域でも毎日24時間、単位(職場)の警備を行い、毎日総和(総括)を行うなど、大会期間中は緊張を強いられた。特に(党大会の会場となった)4.25文化会館のある牡丹峰(モランボン)区域、隣接する西城(ソソン)区域、中区域の人々は、極寒の中、午前2時に外に出て、通りの掃除を行った。平壌市全体が、1号行事(金正恩総書記が参加する行事)の(安定した開催の)保障のために城塞、盾となった。これが、首都市民としてのあるべき姿で本分だと思う。

平城市民Fさん:会議をズルズル引き伸ばしたからと何が解決するというのか。あんなものに期待するのは愚か者だ。今回、大会に参加した代表が大層苦労したということを見てもわかる。われわれ(平城市民)は、カネをやると言われても(党大会には)行かない。

ー党大会で金正恩氏が総書記に推戴されたが、住民の反応は?

Eさん:元帥様(金正恩氏)の権威と威信が百方に強められた会議だそうだ。平壌市民たちは、党が強化され、元帥様の権威が高くなるほど、共和国(北朝鮮)の威力が強くなると考えている。党委員長(という肩書)は、首領様(金日成主席)の時代から今に至るまで、高くもなければ、権威がある肩書、呼び方ではなかった。

Fさん:党にも委員長がいて、職盟(朝鮮職業総同盟)、農勤盟(朝鮮農業勤労者同盟)、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)にも委員長がいるので、重さが感じられないと判断したのではないか。市民は「総書記でも、委員長でも、それがどうしたというのか」「名前が変わったからと変わるものは皆無」「どう呼ぼうが、最高尊厳は変わらない」と言っている。

ー今回の党大会では、国家経済発展5カ年計画が示されたが、住民の反応は?

Eさん:今、人民班(町内会)の会議や生活総和(総括)で強調されているのは節約だ。節約が党大会の精神を貫徹することだと言って、平壌市民はコメ一粒、水一滴、電気1ワット、紙一枚、ちびた鉛筆の一本に至るまでむやみに捨てないことが、党大会の課業貫徹に貢献することだと考えている。食事が1日1回になっても死ぬことはない。国から配給されたもので作ったお粥をすすってでも、今後5年間は本当にベルトをさらにきつく締め上げ(倹約するの意)てでも、計画遂行のために頑張ろうという気持ちだ。

Fさん:5カ年戦略の目標未達成の責任が、内閣と道、市、郡の人民委員会(県庁、市役所)になすりつけられているというのが、市民の一致した見方だ。

ー5カ年計画の基本は自力更生と自給自足だが、果たして可能か?

Eさん:国からの配給がなければ、平壌市民は大量に餓死するだろう。ある程度配給があれば、持ちこたえられる。何もないところから自給しろと言われると途方に暮れる。

Fさん:いつまで自力更生と言っているのか。首都建設、発電所建設、(革命)史跡地建設など国家建設への動員と、軍隊への支援(軍向けの食糧の供出)さえなければ、地方は楽になる。

ー地域の特性に合わせた支援を示唆して、セメント1万トンなどと言った具体的な目標も示した。

Eさん:地方の親戚たちの暮らしを見ると、豊かな人は(昔の)地主より豊かで、貧しいい人は死ねずに生きている。住む家がなく、(勤め先の)機関の警備室で縮こまりながら寝泊まりして、夏になれば穀物の山の上で寝ると聞いたが、支援をしてあげて人民の地上の楽園になればいい。

Fさん:セメント1万トンは決して少ない量ではない。大切なのは、本当に送ってくれるかどうかということだ。(お上は)この手の目標を示すことを好む。

ー党大会では非社会主義、反社会主義現象防止について改めて強調されたが、現地の空気は?

Eさん:不順宣伝物を見たり流布したりしたら平壌市から追放される。党がするなということは、してはいけないという反応だ。

Fさん:非社会主義とか反社会主義とか言うのはいい加減やめてほしい。これでは恐ろしくて生きていけないというのが、こちらの雰囲気だ。好奇心で(外国の)映像を見たことがあるが、反動的なものではなく、愛やら恋愛やらそんなものだった。(お上は)何をそんなに恐れて、ブルブル震えているのか。

ー党大会では国防力強化を主な成果として掲げ、今後も核開発を続けると宣言した。米国に新しい政権ができた今、核開発は必要か?米朝関係はどうあるべきか?

Eさん:少しでも油断すると、今の南朝鮮(韓国)のように、植民地の奴隷になってしまうという党の思想を聞くたびに、ベルトをきつく締め上げてでも国防力を強化する道が正しいと思う。米国は信じるに足る国ではなく、百年の宿敵と思う。関係改善の可能性はないのではないか。

Fさん:核開発に莫大な予算が注ぎ込まれているらしいが、それで肥料、農薬、タイヤを買って農業に使えばいいというのが市民の考えだ。朝米関係は、米国がわが国(北朝鮮)を飲み込もうとしないのでなるならば、改善するのがいいと思う。

ー南北関係改善は必要か?

Eさん:北南関係の改善を期待している。南朝鮮からタダでいろいろ支援してもらわなくても、交流すればいいのではないか。(関係が)よかったころを考えると、越えられない山はないと思う。金剛山(クムガンサン)も双方から行き来して、離散家族も再会できればいい。誤解と不信を解消して、緊張を解いて同じ領土を行き来して、平和に暮らそうとは思わないのかと南朝鮮に問いたい。

Fさん:北南関係は改善されるべきだ。邪心を持たずに助けてくれるというのに、なぜ受け取らないのか理解できない。プライドでメシが食えるわけでもないのに、同じ民族なのだから、助け合って生きていきたい。

ー党の規約に関する問題を扱う部署を新設し、不正行為の監督、信訴(不正行為の訴え、内部告発)処理機能を強化したが、住民の反応は?

Eさん:党中央と全国の道、市、郡の組織が、党の強い統制下にあってこそ、信訴請願のような人民の声をすくい上げ政策に反映されるのではないか。幹部たちは大変だろうが、人民にとってはいいことだと思う。今回、「以民為天(民を以て天と為す)」のスローガンが叫ばれたが、首領様の時代のように、人民大衆の中に入る党になるという意図なのだろうが、本当に実践するイルクン(幹部)がどれほどいるかわからない。

Fさん:そんな部署がなかったから不正腐敗が蔓延していたとでも言うのか。(もっと権限の強い)部署があったころにも、不正腐敗は常に存在した。信訴したからと問題が解決するわけでもなく、力のない人が信訴なんかすれば二度死ぬ羽目になる。

ー今まで金正恩氏に頻繁に随行していた趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏が超スピード出世して、(金正恩氏の妹の)金与正(キムヨジョン)氏は重要なポストを得られなかったが、住民の反応は?

Eさん:趙甬元同志は忠誠心が強く有能で実践力のある人だというのが、平壌でのもっぱらの噂だ。金与正同志は、(金日成氏に繋がる)白頭山の家門なので、肩書が大切だとか考えたことすらなかった。

Fさん:外見で判断する限り、男(趙甬元氏)の方は頭がよさそうだ。どれほど長持ちするか見ものだ。太陽に近寄りすぎれば危険だ。女(金与正氏)の方は、元帥様の妹だということは変わらないから、(肩書が)何であろうと関係ないだろう。

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