【環球異見】北ミサイル連射 韓国紙「米韓の放任が許した北の横暴」 ワシントン・ポスト「崩壊した近隣への脅威縮小論」

【環球異見】北ミサイル連射 韓国紙「米韓の放任が許した北の横暴」 ワシントン・ポスト「崩壊した近隣への脅威縮小論」

2019年8月6日未明、西部作戦飛行場で新型戦術誘導弾の発射を視察する金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 北朝鮮が7月25日以降、国連安全保障理事会の決議に反して短距離弾道ミサイルなどの発射を連続して強行している。トランプ米大統領は「短距離であれば問題ない」とし、日韓両国も抑制的な対応にとどめているが、韓国紙は米韓首脳の放任が北朝鮮をこうまで増長させたと批判。米紙もトランプ氏の対応の甘さに警鐘を鳴らし、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との「個人的外交」の危うさを指摘した。

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 □韓国 東亜日報

 ■米韓の放任が許した北の横暴

 韓国紙の中では、北朝鮮が6日に新型短距離弾道ミサイルを発射する前日に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、輸出管理の優遇対象国除外を決めた日本政府に対抗し、「南北協力で平和経済が実現すれば、一気に日本に追いつける」と発言していたことに注目、文氏の対北政策の見通しの甘さを危ぶむ論調が目立った。

 朝鮮日報は7日付社説で、北朝鮮が2週間内に4回も繰り返したミサイルなどの発射で、その都度、発射場所や飛距離、高度を変えたことを挙げて「いつどこでもミサイル防衛網を避け、韓国全域を攻撃できるとの脅迫だ」と指摘した。

 さらに、北朝鮮は6日に外務省の報道官談話で、5日から始まった米韓合同軍事演習を非難し、「南朝鮮(韓国)は殴られるような行為を控えるのが賢明だろう」と脅しつけた。そんな中、金正恩朝鮮労働党委員長への“ラブコール”を続け、国家安全保障会議(NSC)にも出席しなかった文氏に対し、社説は「軍の統帥権者として国家防衛義務を放棄しているとの疑問を提起せざるを得ない」と批判した。

 文氏にとって選挙に生かせるカードが「南北融和ショー」と「韓日貿易戦」しかないという事実を、金氏は承知の上で、米国を説得して制裁を解除しろと圧迫しているとも分析。韓国が言う通りに動かなければ「今後、さらなる“パワハラ”に出る可能性がある」と解説した。

 東亜日報の7日付社説は、北朝鮮が5月以降、いずれも新型の、短距離弾道ミサイルを指す「戦術誘導兵器」や「大口径操縦放射砲(多連装ロケット砲)」の試射と称する挑発を6回も重ねたことから、兵器開発のための試験発射を「事実上、仕上げた」との見方を示した。にもかかわらず、トランプ米大統領は「短距離は問題ない」と意に介さず、文政権は「注視する」とだけコメントして口を閉ざしている。社説は「弾道ミサイルであれ、新型ロケット砲であれ、ひとまず短距離なら、新兵器の開発・生産を容認するお墨付きを与えたことにほかならない。北朝鮮の狙いもこれだった」と読み解く。

 北朝鮮は談話で、米韓が「防御的」とする演習に対抗し、「われわれも防衛に必須の威力ある手段を開発、実験、配備せざるを得ない」と強調。米韓をなめてかかったような主張で、社説は「北朝鮮は韓米両国を手なずけることに成功した」と論じた。

 今後の非核化交渉も思い通りに運ぼうとし、いざとなれば、テーブルを蹴るのも辞さないと言わんばかりの態度がにじむ。北朝鮮をこうまで増長させたのは、北朝鮮指導者との歴史的会談や南北融和に前のめりになった米韓両首脳を置いてほかにいない。

 社説は「南北協力を通じた平和、それを通したもう一つの勝利というおまけを夢見る理想主義の裏には、こうした思いもよらない欺瞞(ぎまん)的な現実がある」と警鐘を鳴らしている。(ソウル 桜井紀雄)

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 □米国 ワシントン・ポスト

 ■崩壊した近隣への脅威縮小論

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは、北朝鮮が先月来3回目のミサイルなどの発射を強行した直後の2日、「試験発射は北朝鮮に実利をもたらす」と題した解説記事を掲載した。

 記事は「一連の発射の目的は米国に圧力をかけ、非核化交渉が再開した際の譲歩を引き出すことにあると広く認識されているが、兵器を研ぎ澄ますなどの実利も北朝鮮にもたらしている」と説き、「トランプ大統領の甘い対応は、北朝鮮に(荒行も不問に付してしまう)外交的バッファー(緩衝装置)を与えている」と警鐘を鳴らした。

 具体的には、トランプ氏が短距離弾道ミサイルの発射なら問題なしとし続けるなら、仮に米軍による北朝鮮の空爆が行われる際、精度が高まった北の短距離ミサイルが韓国の24基の原発を標的にしてくると指摘し、「米国が強い姿勢で臨まないのなら、北朝鮮は(交渉が再開するまで)試験発射をおそらくさらに重ねる」と予測した。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は2日、解説記事で「北朝鮮のミサイル試験発射が、トランプ氏の金(正恩)氏との個人的外交の危うさを増大させている」と説いた。

 これまでトランプ氏は、金氏と良好な関係を築いたおかげで北朝鮮がミサイル試験発射を中断させ、日本や韓国が北から受ける脅威も縮小したと主張してきたが、論拠が崩壊したというわけだ。短距離弾道ミサイルは米国には届かなくても、日本や韓国は射程内である。トランプ流に「短距離は、多くの国が実験している」で片づけられる問題ではない。

 記事では、トランプ氏が7月31日にホワイトハウスで、過去に米朝首脳会談開催の候補地として挙がったモンゴルのバトトルガ大統領と会談したことなどを根拠にモンゴルでの次回首脳会談開催を示唆している。大統領再選に向けて外交的成果を強調したいトランプ氏は、何としても北朝鮮との決裂は避けたいのだろう。だが、4回目の発射直後の6日に北朝鮮外務省が発した報道官談話は強烈だ。

 「コミュニケーションのセンスを持ち合わせない輩(やから)との実りのない疲れるだけの対話ならもうこりごりだ」(佐渡勝美)

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