韓国で「ウェブトゥーン」原作のドラマが人気 台頭しているワケと注目の俳優

韓国で「ウェブトゥーン」原作のドラマが人気 台頭しているワケと注目の俳優

韓国で“顔の天才”と言われているアイドルグループ「ASTRO」のチャ・ウヌ(JTBC『私のIDはカンナム美人』、原作:『私は整形美人』より)

■「整形もリアルに」


 韓国ドラマの勢いが止まらない。Netflixで配信されている韓国ドラマの中には日本円で数十億円規模の制作費を投じた作品もあり、映画さながらの迫力で視聴者を獲得している。中でも、最近特に人気なのが韓国発のデジタルマンガ「ウェブトゥーン」原作のドラマだ。

 日本のNetflix視聴ランキングでは長い間、『愛の不時着』と『梨泰院クラス』が人気を二分していた。この『梨泰院クラス』もウェブトゥーン作品が原作。ウェブトゥーンは、「LINEマンガ」や「ピッコマ」だと無料で読め、日本でもシェアが広がっている。

 数年前からウェブトゥーンにハマっていた日本人女性に言わせると、

「日本のマンガにはないテーマやストーリー展開が新鮮です。学歴至上主義や格差社会、外見がモノを言うお国柄だから整形もリアルに描かれている。ストーリーも面白くて、読み始めると止まらなくなります」

 韓国人女性によれば、ウェブトゥーンの最大の強みは「画力よりも“読ませるストーリー性”」だという。

「絵も大事だけれど、読者に『次回が待ち遠しい』と思わせることが重要です。そういうストーリー展開になっている作品がヒットしています」


■唯一の問題はキャスティング


 では、なぜウェブトゥーン作品がよく映像化されるのか。

近年、韓国ではケーブルテレビ局の開局が続き、チャンネル数も増えている。チャンネル数が増えれば、当然コンテンツも必要になる。オリジナル原作でドラマ制作をするにしても限界があり、外国のドラマをリメイクしたり、マンガ原作のドラマが増えている。

 紙媒体とは違い、ウェブトゥーンで配信されるマンガには、読者がコメントを書き込むことができる。制作会社にすれば、高い評価を得たマンガを映像化すれば、ヒットする確率が高いというわけである。

 最近はドラマを見る視聴者の目が非常に厳しく、時代劇等ではたびたび歴史歪曲論争が起こっている。いくらフィクションとはいえ、あまりに史実を逸脱しているので、視聴者が反発するのだ。今年に入ってからも超大作『朝鮮駆魔師』が歴史歪曲と批判され、わずか2話で打ち切られた。マンガ原作であれば、そうしたトラブルが生じることもない。

 唯一の問題は、マンガのキャラクターと映像作品に出演する俳優をいかに一致させることができるかである。人気マンガには熱狂的なファンがいるため、キャスティングは慎重でなければならない。

 2010年から連載がスタートした『チーズ・イン・ザ・トラップ』は閲覧数の累計が11億ビューを記録した大人気マンガだ。ドラマ化する際、男性主人公は早々と決定したが、女性主人公のキャスティングが難航した。候補として名前の挙がった女優がネット上で原作のファンから叩かれ、出演を固辞したからだ。最終的に演技力に定評のあるキム・ゴウンに決定したが、原作ファンを満足させたとは言い難い。

 日本でもマンガ原作の映像化は簡単ではないが、韓国の場合、熱狂的ファンの目がより厳しい。ある程度、ビジュアルが似ていないと放送前から批判されることになるようだ。


■“顔の天才”


 もちろん映像化された作品の中には、マンガから飛び出してきたかのようにピタリとキャラクターにハマるケースもある。

 アイドルグループ「ASTRO」のチャ・ウヌは韓国で“顔の天才”と形容されるほどのイケメン。ウェブトゥーンドラマの『私のIDはカンナム美人』(原作:『私は整形美人』)と『女神降臨』では原作マンガのイケメンキャラクターを熱演。「シンクロ率100%」といわれ、原作ファンを喜ばせた。

 ソン・ガンも注目株のひとり。『恋するアプリ Love Alam』に主演して注目を集めると『Sweet Home−俺と世界の絶望−』『ナビレラ〜それでも蝶は舞う〜』で次から次へとウェブトゥーンドラマで主演を果たし、今や“Netflixの息子”と呼ばれている。中でもNetflixオリジナルの『Sweet Home−俺と世界の絶望−』は1話あたり日本円で約3億円という制作費をかけた超大作。これは韓国の歴代ドラマの最高額でシーズン2も制作される。

 時代は刻々と変わりつつある。韓国のウェブトゥーンが急成長し、ケーブルテレビの台頭やストリーミングが主流になったことで韓国ドラマも新たなステージを迎えている。チャ・ウヌもソン・ガンもまさに時代の寵児といえるのではないか。


■絵が苦手な人でも


 日本のファンが、「次は何を見ようかな?」と悩んだら、ウェブトゥーンドラマを選べば、ハズすことはない。

 例えば、『キム秘書はいったい、なぜ?』(原作:『もう秘書はやめます』)は韓国で好感度の高いパク・ソジュンとパク・ミニョンをキャスティングした時点で成功は決まったようなものだった。『梨泰院クラス』でのいがぐり頭が印象的だったパク・ソジュンだが、このドラマではまったく違うツンデレなキャラクターを演じている。原作マンガのキャラクター以上に魅力的だった2人は視聴者からの評価も高い。

『他人は地獄だ』も韓国での閲覧数が8億PVを突破した同名の人気マンガが原作だ。独特の作画は読者の好みが分かれるところだが、絵が苦手な人でもドラマとなればまた違った印象を受けるだろう。加えて、『ミセン-未生-』に主演したイム・シワンが除隊後の初作品として選んだドラマでもある。映画『パラサイト 半地下の家族』で強烈な家政婦役を演じたイ・ジョンウンも見るからに怪しげな大家役を不気味に演じている。日本人にはむしろ原作マンガよりドラマのほうが楽しめるかもしれない。

 韓国メディアによれば、大手インターネットサービス会社「NAVER(ネイバー)」はウェブトゥーンで世界市場を攻略すると発表。すでに「NAVERウェブトゥーン」は韓国のウェブトゥーンを翻訳し、世界190カ国・地域など約300万人にサービスを配信する漫画アプリにも投資しているという。
 
 ドラマや映画、K-POPに続き、急速にエンタメの世界に台頭しているウェブトゥーン。マンガ大国の日本もうかうかしていられないだろう。

児玉愛子(韓国コラムニスト)

デイリー新潮取材班編集

2021年5月9日 掲載

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