韓国で「ここまでのひどさは過去に例がない」と言われる大統領選 親日のレッテル貼り、スキャンダル追及で足の引っ張り合い

韓国で「ここまでのひどさは過去に例がない」と言われる大統領選 親日のレッテル貼り、スキャンダル追及で足の引っ張り合い

足の引っ張り合いを続ける両候補

■世界4大革命のひとつと胸を張った後に


 来年3月の韓国大統領選は、与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)氏と、野党第一党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏の一騎打ちと見られている。史上初の国会議員未経験者同士の闘いとなっているが、スキャンダルの応酬で史上最低レベルという評も――現地在住・羽田真代氏のレポート。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領を糾弾する「ろうそく革命」から早いもので5年が過ぎようとしている。

 朴氏を退陣に追い込んだこのデモを、韓国メディアは当時「世界4大革命のひとつだ」と手放しで評価していた。実際、2016年11月27日付の中央日報は「世界が驚くろうそく革命の力」と題した社説でこう訴えている。

《英国の名誉革命と米国革命で新たな政治体制が作られ、フランス革命で自然法と人権が普遍的価値として受容されたとするならば、いま韓国のろうそく革命はこの地に真の市民社会が到来したことを告げる祝砲といえるだろう》

 いかにも肩に力が入りすぎた感じだが、この“革命”をきっかけに大統領の座に上り詰めた文在寅(ムン・ジェイン)の繰り出す政策がことごとく実を結んでいないのを見るにつけ、革命自体の正当性も問われるべきだろう。


■「非好感度」が高すぎる争いに


 ともあれ、そんな大統領の任期も残すところあと半年となり、後任の大統領を決める選挙は2022年3月9日に行われることになっている。

 もちろん5年に1度の国家的イベントなので関心は高いのだが、一方で韓国民からは「全候補者に好感が持てない」「投票日当日には旅行することにした」といった声もあがっている。

 というのも、ここまでのところ、候補者間でどれくらい親日度が深いかのレッテル貼りで言い争いをしたかと思えば、今度は互いの粗探しをするスキャンダル合戦が開始されるという始末。政策論争とは程遠い日常に嫌気がさす人も少なくないようなのだ。

 大統領選はいまどのような状況なのか。客観情勢から候補者の疑惑やそれをめぐるドタバタまで、現状を見てみよう。

 11月5日に大統領選挙の顔ぶれが出揃って候補者は5人となったが、事実上、与党「共に民主党」候補の李在明氏と、野党第一党「国民の力」候補の尹錫悦氏の一騎打ちと見られている。

 韓国・TBSの依頼で韓国社会世論研究所(KSOI)が同月12日から13日行った世論調査によれば、李在明氏(32.4%)、尹錫悦氏(45.6%)と尹氏がリードしている。

 他方、韓国のネクストリサーチが11月6・7日で実施した「非好感度」に対する世論調査では、李在明氏(60.4%)、尹錫悦氏(54.6%)と、李氏を忌避する割合が高かった。


■Xファイルの存在


 非好感度調査は韓国リサーチも同月5日から7日まで行っており、李在明氏(59.5%)、尹錫悦氏(56.1%)とこちらも李氏の方が高い。気になるのは、両者共に非好感度が50%を超えている点だ。李在明氏と尹錫悦氏双方から疑惑が噴出し、どちらが良いかというよりはむしろどちらがマシかを選び取る選挙の様相を呈している。

 李在明氏は城南(ソンナム)市長時代に行われた開発事業不正疑惑が浮上、捜査の行方次第では大統領選史上初の途中辞退という爆弾を抱えている。以前には有名女優との不倫疑惑も取り沙汰され、こちらも解決していない状態だ。

 一方、尹錫悦氏は検事総長時代に与党議員を起訴した際の不正疑惑が問題視され、彼も捜査対象となっている。加えて、彼の妻に株の不正取引や経歴詐称疑惑が浮上。義母は高齢者施設の違法開設および資金の横領などの容疑で逮捕・起訴され、一審で懲役3年の判決が出て控訴中の身だ。20件もの疑惑が記述された「尹錫悦Xファイル」と呼ばれる怪文書も存在し、それが炸裂すれば命取りとなりかねない。


■少年時代の貧しさをアピールすべく


 SNSで“大選(大統領選挙の略)”と検索すると、

「文大統領が率いるような国が更に5年も続けば、大韓民国は滅びたも同然だ。若者たちがその後始末をしなければならない」

「大統領候補者のようなクレイジーな奴らが韓国には存在する」

「ここまでひどい大統領選は過去に例がない」

 など、選挙への失望感はかなり大きいものとなっているようだ。

 ライバルにリードを許し、その差を挽回したい李在明氏。少年時代の貧しさをアピールしようと当時の写真をSNSに投稿していたのだが、元々カラーだったものを白黒へ加工していたことが判明してしまった。

 11月に入り、李氏の妻が自宅内で転倒して病院に運ばれる事故が起こり、この時彼はスケジュールをキャンセルして妻の看病にあたった。しかし、写真の一件があったからか、国民からは「妻の転倒を政治利用しているのでは?」という疑いの声が多く寄せられていた。

 加えて、事故直後に「玄関でキスとするほどに夫婦関係が良好だ」というニュースが配信されていたことについて、「そんなことをわざわざ他人に言うか? 余計に怪しい」との疑念も渦巻いている。

 ことほどさように、政策とは無関係な要素がてんこ盛りで、史上最低レベルと称される今回の韓国大統領選挙は、最後までもつれにもつれそうだ。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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