薬物乱用、性接待…「BIGBANG」の所属事務所がスキャンダルまみれで崩壊寸前

■トップ2人が揃って辞任もバッシングは止まず


 防弾少年団(BTS)、TWICEなどのブレイクにより、日本で勢いを盛り返すK-POP。だがお膝元の韓国ではいま、その業界が大きく揺れている。K-POP3大音楽事務所の一つYGエンターテインメント(以下YGエンタ)が、尽きない不祥事とバッシングで存亡の危機に立たされているのだ。

 YGエンタは個性とアーティスト性を強みとして、内外で高い人気を集めてきた。看板スターの男性グループBIGBANGは、日本で海外アーティスト初の5年連続ドームツアーを行った実績を持つ。また同じく女性グループのBLACKPINKは今年4月、米誌『フォーブス』の「アジアで影響力のある30歳以下の30人:エンターテインメント&スポーツ部門」に選ばれた。この30人には、YGエンタの女性グループ2NE1出身のCLも含まれている。同社はまた勢いに乗り、俳優やタレントのマネジメントにも進出。「冬のソナタ」でおなじみのチェ・ジウをはじめ、カン・ドンウォン、チャ・スンウォンらトップクラスの韓流スターを迎え入れてきた。

 だがこれまでYGエンタを率いてきた創設者のヤン・ヒョンソク代表は、6月14日に「全ての役職と業務から降りる」と宣言。またその実弟で成長に大きく貢献した代表取締役ヤン・ミンソクも、同じ日に辞任を表明した。

 トップ2人が揃って一連の不祥事にけじめをつけた形だが、それでも同社への疑惑やバッシングは収まらない。公営放送KBSは同月18日、「YGに対する不買運動」が急速に広まっていると報じた。また大統領官邸ウェブサイトの国民請願掲示板には、「YGエンタの芸能活動停止を求める」という請願が登場。6月30日現在、約4万200人の同意を集めている。そうしたなか、複数のメディアで所属芸能人の「脱退」まで囁かれる有様だ。


■PSYまで絡んだ性接待疑惑は世界のニュースに


 K-POPの名門とされたYGエンタに、何が起きたのか。

 直接の導火線となったのは、今年2月から吹き荒れた「V.Iゲート」スキャンダルだ。BIGBANGのメンバーV.Iが取締役をしていたクラブを巡り、暴行、売春を斡旋した「性接待」、マネーロンダリング、わいせつな盗撮動画の共有といった疑惑が次々に噴出。V.Iは6月30日現在、売春行為及びその斡旋、業務上横領、証拠隠滅教唆、性暴力特別法違反(違法な撮影)など7つの容疑で書類送検されている。

 YGエンタは「アーティスト個人の事業と事務所は無関係」としつつ、3月にV.Iとの契約を解除してBIGBANGから脱退させた。だが同月にはV.Iが関わる別のクラブの脱税疑惑を巡り、その運営会社オーナーがヤン・ヒョンソク、ヤン・ミンソクの2人だったことが判明。また4月には、V.Iが性接待疑惑に絡む3000万ウォン(約280万円)の宿泊費を、YGエンタの法人カードで決済していたことも報じられた。

 続いて5月27日、民放テレビキー局MBCがヤン・ヒョンソクの性接待問題をスクープする。2014年にマレーシア人資産家をソウルの高級料亭で接待し、懇意とされる遊興店の女性らを斡旋したという疑惑だ。この資産家は、マレーシアの政府系ファンドに絡む巨額の資金流用で国際刑事警察機構から手配されているいわくつきの人物。それをヤンに紹介し、自らも会食に同席したのが歌手PSYだったことも報じられ、人々に衝撃を与えた。YGエンタ出身のPSYは、2012年の「江南スタイル」で世界的な知名度を高めた韓国の代表的スターだ。

 ヤンは資産家と会食したことは認めながら、「知人に招待されただけ」と疑惑を否定。PSYも紹介したのは事実としつつ、「食事の後、ヤンと2人で先に席を立った」と釈明した。だがこの報道を受けてソウル地方警察庁は、事態の解明に着手。遊興店関係者ら10人以上に加え、6月16日にはPSYも参考人として9時間にわたる調査を受けた。PSY召喚のニュースは、英紙インデペンデントはじめ世界各国のメディアに取り上げられている。


■決定打を放った元アイドル練習生


 そして決定打は、6月12日に浮上した新たな薬物問題。BIGBANGの弟分にあたる男性グループiKONのリーダーB.Iが、2016年にLSDを購入していた疑いだ。同時にYGエンタが容疑の隠蔽を図った疑惑も提起され、社会の非難がいっそう高まった。

 YGエンタは同日のうちに、B.Iとの契約解除とグループ脱退を発表。だが回復途上の株価がまた急落するなど混乱は収まらず、トップ2人の辞任で収拾を図ったわけだ。

 この致命的な情報をリークしたのが、24歳の元アイドル練習生ハン・ソヒ。2017年6月にBIGBANGメンバーのT.O.Pが大麻で書類送検された際、一緒に吸引していたとして摘発された女性だ。2人はともに、執行猶予つきの有罪判決を受けた。ハンはその後もトップアイドル並みの美貌とSNSでの過激発言などで、メディアをにぎわし続けている。

 現地メディア報道によると、ハンは2016年8月に薬物絡みで逮捕された。警察は押収した携帯電話のメッセンジャーアプリを通じて、B.Iがハンから薬物を入手するやり取りを確保。ハンも1〜2次調査で、B.IにLSDを届けたと陳述した。ところがハンは3次調査で陳述を翻し、B.Iの薬物入手を否定。そして警察もなぜかその後、B.Iに関する調査を止めてしまったという。

 自分に陳述を翻すよう強要したのがヤン・ヒョンソクであり、B.Iは不正に司法の追及を逃れた――。弁護士を通じてこうした告発を行ったのが、ハン自身だ。アイドルを目指していたハンは当時ヤンに呼び出され、「お前を破滅させるのは簡単だ」「(自分は)調書を全て見ることができる」などと言われたという。一連の経緯を巡ってはまた、別のYGエンタ所属グループWINNERのメンバー、イ・スンフンの名前も飛び出した。イはハンとヤンの仲介役を務めたとされ、B.Iの容疑もみ消しに加担した疑惑が持たれている。

 京畿道南部地方警察庁はこの問題を受け、6月24日の会見で「刑事課長をリーダーとする専門チームを設け、提起された疑惑を徹底的に調べる」と宣言。同警察庁は今年に入って元JYJのパク・ユチョンなど芸能界の薬物汚染問題で相次ぐ成果を上げており、今回の疑惑についても真相解明が期待されている。


■危ぶまれる牙城のこれから


 YGエンタ所属アーティストの薬物騒ぎは、何度も繰り返されてきた。2011年にBIGBANGのG-DRAGONが大麻吸引、2014年に2NE1のパク・ボムがアンフェタミン密輸入、2016年には専属スタイリストのヤン・スンホがコカイン投与、2017年にT.O.Pが大麻吸引、同年にまたラッパー兼作曲家のKUSHがコカイン投与で、それぞれ摘発を受けている。こうした実態から、ネットではYGエンタを「薬局」と揶揄する声も広まった。韓国語の「薬局」をローマ字表記すると「Yak-Guk」、つまり「YG」だ。

 そうでなくてもここ最近、YGエンタの将来を危ぶむ声は少なくなかった。メンバー全員が兵役に就いているBIGBANGの不在を埋める後継者が、育っていないからだ。そこへ来て有望株のiKONとWINNERはそれぞれ、B.Iの薬物問題で傷がついた。特にB.IはiKONの曲の大半を作曲する中心人物であり、その脱退でグループは先行きが不透明だ。

 こうした状況で、所属芸能人の「脱退」が危惧されるのも無理はない。タレントのユ・ビョンジェは5月21日、6月の契約満了とともにYGエンタを去ると公言。ユは過去にも、「YGエンタは薬局」「刑務所に行く人が多い」などと事務所批判を繰り広げたことがある。またB.Iの脱退後、iKONメンバーのJU-NEが自身のインスタグラムでヤン・ヒョンソクのフォローを外したことも注目を集めた。

 7年近い専属契約を結ぶ新人アーティストと異なり、すでに人気のあるスターは1〜4年ほどの契約を結ぶ。この数年の間に契約したタレントたちが、満了を機に次々とYGエンタを去ることも十分あり得る話だ。K-POP業界に君臨してきた牙城の一角がいま、音を立てて揺らいでいる。

高月靖/ノンフィクション・ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月4日 掲載

関連記事(外部サイト)