「反文在寅デモ開催」「反日批判本ベストセラー」韓国で今、本当に起こっていること

■「光復節」現地ルポ 反日と反大統領に分断された韓国の断末魔(2/2)


 韓国にとって、8月15日は日本の統治から解放された記念日「光復説」にあたる。日韓対立が深刻化する今年、首都ソウルでは、10万人規模(主催者発表)の集会が開かれるなど、激しい反日デモが繰り広げられていた。

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 韓国の「夏の風物詩」のひとつである反日映画も活況を呈していた。8月7日に公開された「鳳梧洞(ポンオドン)戦闘」は、公開9日で早くも観客動員300万人を突破するヒット作となっているのだ。

 日本統治下での独立軍と日本軍の戦いを描いた同作は、「見事」なまでの反日映画に仕立て上げられている。笑みを浮かべながら無防備な老人や、女性、子どもを銃で撃ち、刀で刺し殺す日本兵。逃げる女性をレイプする日本兵。銃殺された子どもを抱きながら泣く女性を見て、ゲラゲラと笑い転げる日本兵……。いくら反日のための映画といってもあまりに酷い。

 なお、同作では「残忍な日本軍の少佐」を、9月からのNHKの連続テレビ小説「スカーレット」に出演する俳優の北村一輝(50)が演じている。この少佐は、部下からの報告を、なぜか生きた虎を刀で刺し、いたぶりながら聞く。そして、虎にトドメをさした時に返り血を浴び、その血塗られた顔のままで、「(独立軍を)皆殺しにしてやる!」と叫ぶ。北村は「獰猛で野蛮な日本兵」の象徴役を担わされているわけだが、これまたいくら何でもと言わざるを得ない描写である。

 映画を観終えたばかりの20代の韓国人女性に感想を訊(き)いてみると、

「日本人がいかに酷いかが分かった。周囲にも声を掛け、これからは日本製品の不買運動にもっと力を入れていきたいと思いました」

 確実に、反日運動に一役も二役も買った北村の心中は理解しかねるが、ともあれ、前回紹介した女子高生に加えてこの女性と、不買運動は確実に広がっている様子なのだ。事実、「韓国の原宿」と呼ばれるソウル市の明洞(ミョンドン)に店を構える、日本人にお馴染(なじ)み、カレーの「ココイチ」を訪れると、

「1日200万ウォン(約18万円)ほどあった売り上げが、ここ3週間は100万〜120万ウォン程度にまで落ちています。10月までは頑張ってみますが、このまま長引くとどうなるか……」(韓国人店員)

 このように、今年の光復節は「反日デー」と化したわけだが、一方で当日、文在寅(ムンジェイン)大統領(66)はこんなメッセージを発している。

「日本が対話と協力の道に出れば、我々は喜んで手をつなぐ」

 日韓経済戦争が勃発して以降、

「加害者である日本が盗人猛々しく騒ぐ状況を決して座視しない」

 などと、極めて激しい言葉で日本を攻撃してきたのに反し、「対日融和」を求めるかのような方針に転じたのである。

〈経済影響・世論の過熱も懸念〉(8月16日付朝日新聞)

〈文氏、日本批判を抑制/経済に打撃 懸念か〉(同日付読売新聞)

 各紙は文氏の方針転換をこう分析した。自らが扇動して反日ムードを昂揚させ、日韓貿易戦争を呼び寄せながら、いざ日本がビクともしないと察すると、慌てて反日をトーンダウンさせた格好である。しかし、これまで見てきたように、いくらトップの文氏が反日を抑制しようとしても、もはや韓国の国民は反日をやめることができなくなっているのだ。

『悪韓論』(新潮新書)の著者で評論家の室谷克実氏はこう指摘する。

「反日の動きを、文大統領自身が制御できない段階に入っているということ。自分で煽っておいて、コントロール不能に陥っているわけです」


■「反日批判本」がヒット!?


 他方、反日とセットで親北朝鮮政策を進めてきた文氏の失政を、「しっかり」と批判的に見ている韓国の人たちもいる。それも当然で、光復節の日、対日融和と同時に北朝鮮に媚びるメッセージを送った文氏は、当の北朝鮮から「まれにみるほど図々しい」と袖にされてしまったのだ。実際、ロウソク派のデモの目と鼻の先では、「反文在寅デモ」が開催され、そこでは、

「文在寅は北朝鮮に行け!」

 等々のシュプレヒコールが上がっていた。また、「反文在寅」気運の盛り上がりを象徴するかのように、現在韓国では、7月15日に発売された『反日種族主義』なる本がベストセラーになっているという。

「この本は、徴用工は強制労働ではなかったし、慰安婦も強制性はなく高待遇だったと、韓国の反日教育のウソを暴く反日批判本です」(ソウル特派員)

 そうした本が反日の国でヒットするとは意外な気もするが、

「韓国では、ノンフィクション系の本は千部売れれば御の字ですが、『反日種族主義』は9万部に迫る勢いで驚異的な売上げを見せています」

 と、龍谷大の李相哲教授が解説する。

「この本がベストセラーになっているということは、文政権の行き過ぎた反日政策に嫌気が差している韓国国民が少なくないことの表れと言えるでしょう。盲目的な反日政策が、結局は韓国経済にとってマイナスの影響をもたらすのではないかとの懸念は韓国でもかなり広まっています」

『反日種族主義』の共著者のひとりである、「李承晩学堂」理事の朱益鐘(チュイクジョン)氏はこう語る。

「韓国では今、世論分裂が起きています。光復節に反日派が集結して集会を行った一方、国民の半数は文大統領に反対していて、彼らも同じ日に数万人規模で集結しました。私たちの本も、これまでだったら難しかったでしょうが、今はある程度受け入れられていると思いますし、韓国社会に変化が起きていると感じます」

 反日と親北に明け暮れてきた文氏。その結果、光復節のソウルでは、反日派のデモ隊に反大統領派が「強制労働などなかった!」と詰め寄り、デモ隊が「ケセッキ(この犬野郎)!」とやり返すといった衝突まで見られたのだった。つまり文氏は、韓国世論の分断という事態を自ら招いてしまったのである。しかし、

「この分断状況を、文大統領は親日派を潰す過程のひとつくらいにしか思っていないでしょう。危機感がないんです」(室谷氏)

 事ここに至っては、隣国に憐憫の情が湧くばかりだ。文氏によって分断された「文断韓国」に――。

「週刊新潮」2019年8月29日号 掲載

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