韓国が福島の「放射能汚染」をいつまでも言い続けるせいで、風評被害が収まらない

 韓国では事実も科学的根拠も、感情の前には無力であるらしい。韓国は8月23日より、日本産の農水産物や加工食品17品目ついて、放射性物質の検査回数と検査するサンプル量を2倍に強化すると発表した。だが、それは苦労の末に安全を勝ちとった食品に、放射能汚染の風評被害をもたらす国家的テロにも近く――。

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 徴用工訴訟も、慰安婦問題も、韓国は日本から非人道的な被害を受けた、ということを大義名分にしていたはずである。その韓国が当たり前のような態度で、日本の被災地に非人道的な攻撃をしかけるとは、どういう了見か。

「その前から韓国は、福島や宮城など8県の水産物を全面禁輸にしたままですが、食品などの放射能汚染がほぼ解消されたこの時期に、あえて汚染を声高に訴えるところに、悪質な意図を感じます」(韓国問題を取材している記者)

 それでも、日本の被災地における食品検査がずさんだとか、汚染がなかなか解消されないなどというなら、韓国にも多少の分はあるといえるかもしれない。

 標的にされた被災地では、放射性物質の検査は、どのような基準で行われているのだろうか。

「2012年4月以降、日本では、通常の自然放射線被曝に加わる追加被曝の量が、年間1ミリシーベルト以下になるように定めています。これは国際的な政府間機関コーデックス委員会やEUの基準と同じで、アメリカはもう少し緩い5ミリシーベルトを基準としています」

 こう説明するのは、東京工業大学の松本義久准教授(放射線生物学)。日本の基準は世界標準だというのだが、では、この「1ミリシーベルト以下」という基準はどのように算出されたのか。

「科学的に確認された人体への影響は、100ミリシーベルト以上の被曝で見られる、というところからきています。100ミリシーベルト以下の被曝で、人体への影響が認められたことはありません」

 要は、産まれてから毎年1ミリシーベルトずつ被曝しても、100歳になるまでは大丈夫、という基準で、しかも、

「100ミリシーベルトで影響、というのは一度に被曝した場合であって、食品からの被曝のように長期にわたる場合、影響はさらに小さくなることがわかっています」


■世界で一番安全


 では、被曝をそれだけに抑えるために、食品に含まれる放射性物質は、どこまで許されるのか。松本准教授によれば、

「国は食品が含むセシウムの量を、1キログラム当たり100ベクレル以下、と定めています。ただし、これは食品の50%が汚染されているという前提で算出された数字。コーデックス委員会やEUはこの割合を10%、アメリカは30%としているので、日本の食品に関する放射性物質の基準は、海外の10倍程度厳しくなっています」

 むろん、基準が厳しかろうが、そこに引っかかる食品が続出しているようでは、安全性への懸念が生じても仕方ないが、

「放射性セシウムの濃度が基準値を超える食品は0・1%以下」

 と、松本准教授。福島県出身で震災当初から支援活動を行っている元徳島大講師の佐瀬卓也氏も、

「放射性物質の検査は国のガイドラインを元に各自治体が実施しますが、さらに農協や漁協も自主検査を行い、二段構えになっています。万一、基準値を超えれば回収、廃棄され、県域または県内の一部の区域を単位として、出荷制限等が行われる仕組みです」

 と前置きし、こう続ける。

「震災後2、3年は水産物等に検査段階で基準値を超えるものが比較的多く存在しました。しかし、水産物でも海産種はここ数年、基準値超過なしが続き、淡水種も基準値超過は1%前後にまで下がっています。山菜やきのこ類は、カリウムと似た性質のセシウムを取り込みやすいので、当初は基準値超えが見られましたが、現在は検出例がきわめて少ない。それに仮に基準値を超えた食品を食べても、数百キロ以上食べないかぎり1ミリシーベルトの被曝に達しないので、現実には安全です」

 また福島県では、牛は全頭検査が行われ、

「コメも、サンプル検査ではなく全袋検査が行われていて、2015年から現在まで基準値超えは一度もありません。世界的に見ても、放射性物質の検査をここまで厳密にやっているところはありません。ほかの食品も、放射性物質の検出は非常に限定的で、厳しい検査態勢と国際基準より厳格な基準値を考えると、ある意味、福島県および日本の食品は世界で一番安全だとさえ言えます」


■福島が外交のカード


 こうした科学的データを踏まえると、以下に続く関係者の当惑や嘆き、憤りも、いっそう生々しく感じられることだろう。

「多くの国と地域が日本産食品の安全性を確認し、規制の緩和や撤廃を進めているなか、韓国政府にも科学的根拠にしたがって対応してほしい。農水省としては、韓国がとっている水産物の禁輸措置がそもそもおかしいと考えていて、今回それが強化される形になり、風評被害の問題も含めて残念に思っています」

 こう話すのは、農水省の輸出促進課海外輸入規制対策室の担当官である。

 水産物の禁輸の話が出たついでに、宮城県漁業協同組合の声を伝えると、

「震災前は、ホヤの水揚げ量の約8割に当たる7千トンほどを韓国に輸出していましたので、震災後の禁輸の打撃は相当で、廃業した人も多く無念でした。しかしその後も、キロ当たり100ベクレル以上のセシウムが検出されることはまずないのに、科学的根拠を無視して韓国は禁輸を続け、被災地を差別し続けている。とても人道的な対応とは思えません。韓国が“汚染”をいつまでも言い続けることで、国内外への風評被害が収まらず、残念です」

 続いて、福島県環境保全農業課の担当者は、

「オリンピック・パラリンピックの会合で、福島を名指ししての発言があったことは非常に残念です」

 と言い、こう続ける。

「震災から8年、風評被害から守り、安全性を確保するために、主に三つの対策に力を入れてきました。除染作業。カリウムなどの肥料の施用徹底等による、セシウムを吸収させないための対策。そしてモニタリング検査などの徹底です。その結果、汚染状況は一部の品目でまだ戻っていないものもありますが、大方、震災前まで戻っています。特にお米は全袋、年間1千万袋を測っていて、農家や農協さんは新米から出したいのに、あえてお金と時間と手間をかけている。こうして協力し合い、安全なものしか流通していません。これだけ苦労してやってきた福島県の農家の方々の思いからすると、韓国のすることには“どうして?”と思いますし、“またか”とも思います」

 それにしても、韓国には日本の被災地の食品が安全であることが、伝わっていないのだろうか。

「韓国の研究者や有識者は、福島の食品が安全であることは百も承知です。しかし、政府の意向に異を唱えると総スカンを食らい、職を失うリスクさえあるので、声を上げられないのだと思われます」

 先の佐瀬氏はそう指摘し、思いを吐露する。

「科学的データを元に考えると、水産物の禁輸や食品の検査の強化といった韓国の対応は、明らかに妥当性を欠いています。東日本大震災の影響が外交の負のカードとして利用されることが、残念でなりません。五輪の団長セミナーでの(福島を名指しにして食材の安全性への懸念を示す)発言については、一人の福島県出身者として憤りを超えて、悲しみを覚えます」

 ところで、イタリアやギリシャはもとよりヨーロッパは岩盤が多い土地柄なので、一般的に日本より、もちろん福島県よりも自然界から発せられる放射線量が多い。自ずと被曝の量も多くなる。韓国政府は、日本の被災地をこうも忌むのであれば、韓国人が大好きなヨーロッパに向けても、「近づくな」と、あおるべきではないだろうか。

「週刊新潮」2019年9月5日号 掲載

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