韓国が竹島から最も近い「鬱陵島」を軍事基地化 軍艦常駐で日本を牽制する狙いも…

韓国が竹島から最も近い鬱陵島を軍事基地化 軍艦常駐で日本を牽制する狙いか

記事まとめ

  • 竹島に最も近い有人島である鬱陵島に巨額の予算が支出され、軍事基地に変貌しつつある
  • 鬱陵島に軍艦が常駐可能になると、韓国は日本より早く竹島に急行することができる
  • 鬱陵島への空港建設は1978年から何度も立案されたが、その度に立ち消えになっていた

韓国が竹島から最も近い「鬱陵島」を軍事基地化 軍艦常駐で日本を牽制する狙いも…

■「日本の代わりに独島へ」? 竹島訪問者数が増加


「輸出管理」問題を巡る日本ボイコットの影響で、7月以降急減している訪日韓国人観光客。今年10月に日本を訪れた韓国人旅行者は19万7300人、前年同月の57万1176人から65・5%減という極端な減り方を見せた。

 一方で、このところ観光客を増やしているのが、ほかでもない竹島(韓国名:独島)だ。韓国では2005年に上陸制限が緩和され、民間の遊覧船まで就航している。その訪問者数は9月末時点で、前年を上回る22万6825人に達した。日本ボイコットとの相関は分からないが、現地ニュースメディア「EDAILY」はこれを「日本の代わりに独島へ行こう……経済報復を受けて訪問客史上最大」との見出しで伝えている(10月24日付)。

 竹島行きの遊覧船が発着するのが、西へ87・4キロ離れた鬱陵島(ウルルンとう)。竹島に最も近い有人島だ。

 朝鮮半島東岸からは、最短距離で130・3キロ。面積は八丈島よりわずかに大きい72・86キロ平米だ。島内は峻険な山に覆われ、平地はほとんどない。わずかに開けた海沿いの谷間を中心に、9802人(2019年6月末時点)が暮らしている。

 本土から鬱陵島へは複数の港から2400トン級の快速船が就航しており、所要時間は片道3〜4時間ほど。ただし航路は波が荒く、冬場を中心に年間100日近く欠航する。昔に比べレジャー客が増えたとはいえ、不便で住みづらい離島という環境は変わらない。ソウル起点では、片道だけで1日がかりだ。

 だがそんな鬱陵島がいま、変貌を遂げつつある。来年7月には、5000トン級の旅客船が接岸できる沙洞港が開港。悪天候による欠航も減ると期待されている。さらに2025年4月には、悲願の鬱陵空港が開港予定。就航するのは50人乗り以下の小型機だが、ソウルからのアクセスがわずか1時間に短縮される。

■「軍事基地」に変貌する鬱陵島


 建設費用は沙洞港が約2881億ウォン、鬱陵空港が約6633億ウォン。2つ合わせて日本円で約900億円に上る。韓国政府がこの離島に巨額の予算を支出する理由は、単に住民の利便性や観光振興だけではない。大きな後押しとなったのは、竹島の「実効支配」強化という名分だ。現地大手紙「中央日報」は両施設の建設を、「“日本より早く独島へ行く”、鬱陵島が軍事基地に変身中」との見出しで報じている(2019年10月28日付)。

「軍事基地」というのは、ただの比喩ではない。沙洞港の接岸施設は海軍艦艇用の埠頭400メートル、海上警察用の埠頭175メートル、そして旅客船用の埠頭305メートルからなる。港が完成すれば海軍艦艇1隻、海上警察警備艇2隻が常時接岸可能だという。建設費は、竹島を管理する海洋水産部(省庁の1つ)が62%、国防部(防衛省に相当)が38%を負担している。基本計画が告示されたのは、李明博(イ・ミョンバク)政権時代の2011年だ。

 韓国にとって、鬱陵島に軍艦が常駐可能になる意味は大きい。韓国本土と竹島の距離は、最も近い慶尚北道蔚珍郡の竹辺港から216キロ。海軍の艦艇が竹辺港から急行した場合、4時間かかるという。それに対して日本と竹島は、隠岐諸島から158キロ。韓国メディアによれば、所要時間は2時間50分だ。

「有事の際に艦艇が駆けつけても、日本に遅れを取る」。この点が鬱陵島のインフラ整備を巡る議論のなかで、しばしば強調されてきた。それが沙洞港の開港によって4時間から1時間40分に短縮され、日本に先んじることができるというわけだ。


■島民が待ち続けた空港と「独島防衛」


 鬱陵空港も、竹島問題を背景としてようやく建設が決まった格好だ。

 島民にとって空港はかねてからの悲願だったが、平地の乏しい鬱陵島は建設費と採算性がネックとなってきた。そうしたなかで韓国政府が計画に着手した早い例の1つが、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代の1978年に立案された「独島総合開発計画」だ。「独島防衛」の一環として鬱陵島の戦略的な開発が検討され、空港建設のための現地調査が行われたという。だがこれは1979年に朴正煕大統領が暗殺されたことで、頓挫した。

 日韓の排他的経済水域問題が取り沙汰された90年代半ばにも計画が浮上したが、1997年からのアジア通貨危機にともなう経済危機によって立ち消えに。続いて島根県「竹島の日条例」制定で反日感情が高まった2005年から、メディアでまたその必要性が注目されるようになった。

 2009年には計画が本格化すると伝えられたが、政府は2010年に採算性がないと判断。しかし地元自治体=鬱陵郡及び慶尚北道(道は県に相当)は、その後も「独島防衛」をアピールして建設を求めてきた。国防部も竹島に駐留する警察部隊の支援などに活用可能と見ている、と当時の現地メディアは伝えている。

 やがて朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2013年、政府の予備調査を経て事実上のゴーサインが確定。予算見直しで一時中断したものの、現在は来年4月の着工を控えている状態だ。ただし防波堤に日本が特許を持つ消波ブロックの採用が予定されているとされ、これを巡って建設事業者の対応などを問題視する現地メディアもある。


■「軍事基地」化は不振のイカ漁を救えるか


 新しい港や空港整備はまた、違法操業する中国などの外国漁船の取り締まりに対する期待も大きい。鬱陵島は近年、代表的な特産品であるイカの漁獲量減少に悩まされている。主因の1つは中国漁船だ。中国は2004年に北朝鮮と協定を結び、北朝鮮水域で130〜300トンクラスの底引き網船による操業を開始。大半が15トン未満の小型船で、荒波と格闘する鬱陵島漁民を尻目に、乱獲を続けているといわれる。鬱陵島のイカの販売量は、2010年の2898トンから昨年は750トンに急減。今年はさらに大幅な減少が見込まれる模様だ。

 空港はまた観光客誘致が見込まれる一方、緊急医療の面でも切実な需要がある。その象徴が、10月31日に竹島近海で7人の犠牲者を出したヘリコプター墜落事故だ。この事故は、操業中に負傷した漁民を搬送するため出動した本土の医療ヘリが、帰路に着いた直後に起こった。鬱陵島に海洋警察のヘリが常駐していれば結果は違ったのでは、と悔やむ声は多い。

 結果的に、地元自治体の利益誘導にひと役買う形にもなっている竹島問題。「軍事基地」化していく鬱陵島に、これからまたどんな予算が注ぎ込まれるのだろうか。

高月靖(ノンフィクション・ライター)

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月10日 掲載

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