免許証とマイナカード一本化の先にあるもの 「韓国」では個人情報ダダ漏れで

韓国では全国民が一度は個人情報流出に遭っている? 情報ダダ漏れの事情

記事まとめ

  • 日本政府は26年までに運転免許証をマイナンバーカードと一本化すると発表
  • デジタル先進国である韓国では、様々な手続きが簡素化されている
  • 便利な一方、韓国人は個人情報保護に比較的無関心で情報がダダ漏れとも

免許証とマイナカード一本化の先にあるもの 「韓国」では個人情報ダダ漏れで

■車庫証明が必要のない世界


 日本政府は運転免許証のデジタル化に向け、マイナンバーカードとの一本化を2026年までに目指すと発表した。これにより、様々な意味で利便性が高まると期待されているが、なかなかそうも行かないのかもしれない。デジタル先進国である韓国からの報告。

 日本に比べて韓国は行政業務や銀行業務の処理過程が簡素化されている。個人の身元に関する書類(住民登録謄本や戸籍、家族関係証明書)は地下鉄の駅にあるATMで簡単に発行でき、口座振替やクレジットカード関連の手続きもパソコンや携帯電話から可能である。

 見方によっては非常に便利かも知れないが、あらゆる手続きが電子化された個人情報は、これまで何度もセキュリティに脆弱な問題点を露呈したりもした。

 そして新型コロナ発生後には、個人情報が晒される機会が多くなった。

 飲食店やカフェ、公共機関を利用する際、個人の携帯電話番号や名前などがわかるものを提示するように決められたからだ。このような手続きに不平不満が出ないのは、韓国ならではの独特な現象と言えるだろう。

 韓国人が個人情報保護に比較的無関心な理由は単純だ。

 駐車している車のダッシュボードを見ると、90%以上の割合で、持ち主の電話番号がわかるものが置かれている。

 日本では自動車を購入する際、車庫証明が必要だが韓国はその必要がない。そのため、他人の車庫の前などにも平気で違法駐車をする。

 車庫の持ち主が車を出し入れしたいときは、違法駐車をしている車に書いてある電話番号に電話をし、車の持ち主を呼び出して移動してもらうというわけだ。

 日本や欧米では考えられない。駐車空間が不足がちな都市部のドライバーの生活の知恵とも言えるが、個人情報の流出に繋がるのは否めない。

■自分の車を出すために、他人の車を押しのけたり、車の持ち主に電話したり…


 実際、韓国の駐車問題は昨日今日のことではない。

 車の所有者が駐車責任を持つのは当然というのは日本や欧米の考え。韓国は駐車場の確保より車を所有することが優先し、駐車問題による他人の迷惑を考えない場合が多いのだ。

 駐車問題は韓国の住宅形態とも密接な関係があるが、「開発共和国」(凄まじい不動産開発を皮肉る隠語)と呼ばれる状況とも無関係ではない。

 持ち主の電話番号がわかるものを車に置いておくのは、都心での過剰な不動産開発の結果、駐車スペースと自動車保有台数のバランスが崩れたために生じた現象だ。

 笑い話のようだが、住宅を新築する際、1世帯1台の駐車空間を確保すべしと法整備されたのは2000年以降のこと。

 ソウルで最も高い人口密度を誇る大規模マンション団地の木洞(モクトン)エリアは、1980年代の不動産開発ブームを象徴する団地だが、1世帯あたりの駐車スペースの割合は0・6台に過ぎない。

 自分の車を出すために、他人の車を押しのけたり、車の持ち主に電話したりする様は、ここの朝の風物詩だ。

 駐車を巡る喧嘩も日常茶飯事。電話番号を車に残しても、いざこざが起こるケースも多く、行き過ぎた場合は殺人に繋がり、新聞やニュースに時折登場する。

 ソウル市はこのような問題に対し、公共交通網を拡大し、スムーズな乗り換えをアピールしているが、駐車問題は依然として深刻だ。

 日本と同様に車庫証明の発給も議論されたが、現実的な問題(自営業者や古くからの住宅街の狭い駐車場)のせいで、施行されなかった。

 駐車された車に個人の電話番号を残すほどだから、韓国で個人情報が重要視されていないのは明らかだ。

 個人情報流出による情報盗用や犯罪の標的になると幾度も指摘され、駐車時の電話代行サービスを提供したこともあるが、利用率は極めて低かった。

■個人のプライバシー侵害は無視されているとも言える


 韓国人はせっかちだから、個人情報が流出するリスクがあっても、煩わしいその代行サービスより、簡単な方を選ぶのだ。

 しかしながら、自動車に残された個人の携帯電話番号を狙う犯罪は思ったより多い。

 電話番号を利用した個人情報の流出をはじめ、誘拐、金品要求、ストーキングなどが代表的だ。事件数は減ったとはいえ、女性ドライバーの電話番号はさまざまな面で犯罪の標的になる可能性が高い。

 先に触れたように、新型コロナにより現在は、飲食店やカフェ、公共施設では、個人情報がわかるQRコードを利用することになっている。

 QRコードの登録がない市民は専用の入店記録に記入し、各店が入店者名簿を作成することが義務づけられている。

 そこでは情報提供同意項目があるが、これを重要視する韓国人は思ったより少ない。

 国では新型コロナの拡散防止のため、個人情報(名前や携帯電話番号、最近の海外旅行の有無、発熱や症状)の提示を強制しているが、裏返せば、個人のプライバシー侵害は無視されているとも言える。

 行動履歴を誰かが監視し、どこかに報告される――。最近では女性が連絡先を残す際に盗み見て連絡し、出会いや交際を要求するケースもあった。

 実際、韓国人の個人情報は知らないところで取引される。

 司法研修院の卒業アルバムや有名大学の卒業アルバムなどを結婚情報会社に販売するケースもあり、ハッキングによって流出した個人情報は、中国や第三国に売られるケースが多い。

 韓国人の個人情報は過去100ウォン(10円)程度で取引されたが、今は1ウォン(0・1円)程度で取引されているという。

 中国に流出した個人情報は様々な目的で使われる。

 マーケティング資料や商品購入分析にも使われるが、一部はボイスフィッシングや偽銀行口座開設、ポータルサイトの虚偽アカウント作成、偽パスポートを作るといった犯罪に使われることもある。

■ほぼ全国民が一度は個人情報流出に遭っている計算


 あるショッピングモールサイトに加入しようとして個人情報を入力すると、「すでに加入している会員です」というメッセージが出る時もある。

 すでに情報が流出してしまっているわけだが、それを元に戻すことは容易ではない。

 韓国ではここ数年、大型インターネットショッピングモール、銀行、ポータルサイト、オンラインゲームサイトに保存された個人情報がハッキングによって流出した事例が多い。その場合、500万から1000万人分の情報が失われるという。

 住民登録番号のない幼い子どもとインターネットの使用頻度が高くない層を除けば、ほぼ全国民が一度は個人情報流出に遭っている計算だ。

露出された個人情報がどこに行くのか、どのように使われるのかについては、大きな関心を持つ人がいないことも韓国特有だ。

 個人の自由とプライバシーの保護が先か、公共の利益が先かについては、人によって意見は異なるだろう。

 とはいえ、流出防止についての対策はないに等しく、あっても行き当たりばったりで、韓国人のせっかちな性格が災いしているようだ。

ソウルトンボ
ソウル在住の韓国人ライター

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月24日 掲載

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