「日韓」間で交わされた条約を破ることを気にしない「文在寅」にならう韓国の裁判所

■韓国の個人請求権は日本には関係ない


 国家間で交わされた条約が重い意味を持つことは誰もが理解していることだが、韓国に限ってはそうでもないようだ。文在寅政権になってその傾向はエスカレートし、過去の政権時の裁判所の判断をひっくり返し続けている。

■略奪や人権蹂躙を行ったのだろうか


 日本は国際慣例に従って「日韓併合条約」は基本条約が発効した65年12月から将来に向かって無効になると考えるが、韓国は1910年に遡って条約の締結自体が無効だと主張する。

 合法的に締結された約定の破棄を厭わない、韓国独自の解釈である。

 そもそも日本は略奪や人権蹂躙を行ったのだろうか。

 日本による統治を韓国は植民地支配だと主張する。

 ある国が他国を支配する目的と手法は大きく2つに分けられる。

 まずは、本国と異なる制度が導入される1国2制度で、支配国は武力や買収、懐柔などによって他国の支配権を手に入れる。

 被支配地、すなわち植民地は本国の利益のために存在し、一般に資本の投入は最小限に抑えられる。

 現在、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなど英連邦の独立国は、独自の憲法や自治権を有するが、国家元首は英国王で、英国から派遣された総督が国王を代行する。
 
 現在、総督の権限は儀式程度にとどまるが、本国が連邦の国々に関与できる一方、かつて植民地だった連邦各国は英国の政治に関与できない。

 もう一つは領土拡大だ。植民地と同様の手段で手に入れた被支配地域を本国に近い水準まで引き上げて編入する1国1制度で、主にフランスが採用している。

 カリブ海のマルティニークやフランス領ギニアなど、かつてのフランスの植民地は海外県としてフランス国会に議席を持ち、本国政治に関与する。

 日本も1国1制度が基本である。

 明治政府は琉球国を併合し、また江戸幕府が一部を支配していたアイヌの居住地をなし崩し的に併合した。

 琉球国を沖縄県、アイヌの居住地を北海道として本国に編入し、明治時代の半ばまでに本国と同じ制度を導入、1国1制度を整えた。

 韓国や台湾の併合も同様だ。

 朝鮮半島を支配下に置いた後、学校を建設して教育を施し、インフラを整備したが、最終目的は編入で、当時の日本政府は、日本人と朝鮮人の結婚を奨励して同化政策を推し進めた。

 朝鮮人が日本の良民となることを求めた政府が、その朝鮮人を搾取対象とすることなどありえないのである。

■隠蔽と歪曲、無理を通せば…


『反日種族主義』の共著者である李宇衍(イ・ウヨン)が著した『ソウルの中心で真実を叫ぶ』によると、「欲しがりません勝つまでは」「贅沢は敵だ」というスローガンを掲げた当時の軍事政府は、国民に貯蓄を奨励し、朝鮮人を含む労働者の賃金の一部を強制的に貯蓄させた。

 多くの朝鮮人が現金収入を求めて募集に応じ、炭鉱労働に従事したが、過酷な労働に耐えかねて、逃げ出した者も少なくない。

 さらに、日本がポツダム宣言を受諾して、敗戦が決まると職場を離れて帰国する人が続出した。

 退職積立金や強制貯金など、退職に伴う金銭を受け取らずに帰国した不二越の労働者は485人に上り、同社は未払い金9万325円24銭を供託した。

 正規の手続きで退職すれば、賃金や退職金、強制貯金は支払われたが、夜逃げ同然で行方知れずとなった労働者に支払うすべはない。

 不二越の供託金は1人平均186円余りで、現在価値に換算すると37万2000ウォンだ。

 先述の通り、その270倍の支払いを命じる判決が下されたわけだが、未払い金はいうまでもなく日韓請求権協定で消滅している。

 元朝鮮半島出身労働者や元慰安婦が日本にカネを要求し、韓国の裁判所が認める背景に、隠蔽と歪曲、無理を通せば道理が引っ込む韓国社会の悪癖がある。

 韓国政府は、「65年の日韓基本条約で日本から支援を得たことと請求権が消滅したこと」を国民に知らせなかった。

 基本条約の締結に際し、日本は統治によって被害を受けた韓国人に直接補償を行うと提案したが、韓国側は韓国政府に一括で支払うことを要求し、日本側はこの要求を受け入れた。

 日本が個人への補償金を支払ったことが明るみに出ると韓国政府は、国民に補償金を支払うことになる。

 韓国政府は補償金を日本から受領したことを隠蔽して、産業育成やインフラ整備、国の事業に流用した。


■裁判官の心に訴えるか否か


 韓国政府が交渉関連の外交文書を全面的に公開したのは、締結から40年経過した2005年だった。

 公開した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は首相の傘下に設置した特別な組織を通じ、「強制動員被害者は協定で解決済みだが、日本軍慰安婦や原爆被害の賠償請求権は未解決だ」という独特の解釈を明らかにした。

 以後、朴槿恵(パク・クネ)政権までは、日本製鉄や不二越など、労働者の補償問題は請求権協定で解決済みという立場を韓国政府は維持してきた。

 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)が大統領に就き、韓国最高裁はこれをひっくり返したことになる。

 筆者はかつて、韓国人の法律家に韓国の裁判について聞いたことがある。

 原告と被告のいずれが正しいかという客観的な事実は2の次で、いずれの主張が裁判官の心に訴えるか否かで判決が下される例が多いという話だった。

 日本は日韓請求権協定を掲げるが、韓国の裁判所は、国家間で交わされた約定反故を厭わない弁護士出身大統領に倣っている。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月16日 掲載

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