米中貿易協議決裂:中国に後遺症リスクの懸念 中国指導層は長期的視点から賢明な判断を下せるか?

1.米中貿易協議決裂の舞台裏で何が起きていたのか

 昨年12月1日の米中首脳会談の合意から始まった米中貿易協議は、本年4月末頃までは順調に進んでいた。

 筆者が4月後半に北京を訪問した際には、中国政府関係者や経済専門家の間で、もう間もなく何らかの合意に到達して、米中摩擦は少なくとも一時的に鎮静化に向かうという楽観論が広がっていた。

 ところが、5月9日、10日の両日、劉鶴副総理がワシントンDCを訪問し、ロバート・ライトハイザーUSTR長官らと協議を行ったのち、期待された合意には達せず、事実上協議が決裂した模様である。

 この米中協議の予想外の展開の中で何が起きていたのか。

 5月末前後にワシントンDCで米中問題に精通した専門家数人に直接面談して確認したところ、概ね以下のような状況が分かってきた。

 複数の専門家はいずれも米中交渉当事者ではないため、一定部分の推測を含んでいるが、その見方はほぼ一致していた。

 米中協議は4月末まで、劉鶴副総理とライトハイザーUSTR長官の間で順調に進展し、百数十ページの合意文書が作成された。

 劉鶴副総理はそれを中国共産党最高幹部層である政治局のメンバーに提示したところ、米国の要求に対して譲歩し過ぎであるとの強い批判を受け、合意文書の20〜30%相当部分について修正を余儀なくされた。

 その修正案を米国側に提示したところ、最終段階での中国側からの突然の大幅修正要求にドナルド・トランプ大統領が激怒し、米中協議が断絶したというのが専門家らの一致した見方である。

 加えて、彼らは交渉断絶のもう一つの理由として、協議の最終段階で米国側が中国側に対して受け入れることが極めて難しい何らかの要求を行ったことが考えられるという点も指摘した。

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