全世界を覆う「非寛容な時代」の憂鬱 米国で、欧州で、そしてアジアで台頭する「自国第一主義」の厄災

(舛添 要一:国際政治学者)

 アメリカでは、トランプ大統領が人種差別的な発言を繰り返している。イギリスでは、EUからの「合意なき離脱」を厭わないボリス・ジョンソンが首相に就任した。香港では、容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする法改正に反発する市民のデモが続いている。6月2日には、ドイツ・ヘッセン州カッセル県のワルター・リュブケ知事が、メルケル首相の寛大な移民政策を支持したために、ネオナチによって暗殺された。

移民とヘイトと極右の台頭

 いずれも世界や個々の国の平和や繁栄、社会を構成する個人の幸福の増進の助けになるどころか、むしろそれを阻害するような不快な出来事である。フランスの国旗、三色旗は「自由、平等、博愛」を意味し、アメリカ独立革命、フランス革命などを経て、人類が到達した理想、あるいは人類が進歩した証を象徴するものだ。

 トランプやネオナチによる人種差別は、ヘイトスピーチのような形で日本でも行われているが、600万人ものユダヤ人を虐殺したヒトラーの蛮行につながっていく。20世紀における人類最大の愚行である。現代の政治指導者の重要な任務はこの愚行を繰り返さないことであり、その意味で、世界一の大国の大統領がトランプであることは人類の恥である。

 さすがにナチスの反省の上に成立したドイツでは、最近では7月20日のヒトラー暗殺未遂事件の75周年記念日など、歴史を忘れないための催しが繰り返し行われている。記念式典で、メルケル首相は人権と民主主義の重要性を強調し、人種差別や反ユダヤ主義を弾劾したが、そのドイツでも、移民の増加に対する国民の反発を利用して、AfD(ドイツのための選択肢)のような極右のポピュリスト政党が勢力を拡大している。

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