米国で韓国系が絶賛、人気韓流ドラマの巧妙な政治色 「愛の不時着」の歴史修正主義(前編)

米国で韓国系が絶賛、人気韓流ドラマの巧妙な政治色 「愛の不時着」の歴史修正主義(前編)

南北軍事境界線上の板門店で韓国側を見ている北朝鮮の兵士(2019年8月28日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

 韓国ケーブルチャンネルtvNで放映されて歴代第1位の視聴率を叩き出し、日本ではネットフリックス(Netflix)で配信される韓流ドラマ「愛の不時着」。

 南北軍事境界線付近でパラグライダー飛行中に思わぬ事故に巻き込まれ、北朝鮮に不時着してしまった韓国の財閥令嬢が堅物のエリート軍人と出会い、やがて愛が芽生えるというアクション・ロマンスコメディだ。

 メディアジャーナリストの長谷川朋子氏が執筆した記事は、日本や欧米での大ヒットを示唆していたため、配信先のYahoo!ニュースのコメント欄で「ただのステマだ」「いや、マジで面白い、韓国のことをなんでも否定的に言う人は実際に観るべき」などと熱いヤフコメ論争になっている。

 ジャーナリストでYahoo!オーサーの中島恵氏は、「あらゆる人がハマっているのがこのドラマ」だと評している。また、件の記事で筆者の長谷川氏は、「日本のみならず、アメリカをはじめ世界で注目されている」「韓流ファンだけにとどまらず、裾野を広げて独走しているこの勢いは必然的に生み出されたもの」「アメリカの一般紙もこぞって『愛の不時着』を取り上げています」と分析している。

 中島氏が「現代版ロミオとジュリエット」になぞらえるこの作品は、橋下徹元大阪府知事、大御所タレントの黒柳徹子氏、女優の佐々木希氏や大政絢氏、歌手の堀ちえみ氏や三代目J SOUL BROTHERSの岩田剛典氏、お笑いコンビであるトレンディエンジェルの斎藤司氏ら有名人をはじめ、DeNAの梶谷隆幸外野手、阪神の岩貞祐太投手、ラグビー日本代表である松島幸太朗選手や山中亮平選手らアスリートなどにも高く評価されている。

 この記事では、米国における同作品の評判を検証するとともに、「愛の不時着」の核心である「渡れない国境を越える」「歴史を超える」「愛憎を超越する」というテーマの本質を2回にわたって考察する。

有力ウェブメディアが話題に

 まず、同作品の英語題である "Crash Landing on You" であるが、「熱愛で貴方の腕の中に不時着」というイメージとニュアンスであり、韓国語の原題である「??????」や、日本語の直訳題である「愛の不時着」よりも、よほど洗練されている。キャッチーであるため、興味は持ってもらいやすいだろう。合格点以上だ。

 日本でもそうだが、米国においても、不気味な謎の国として知られる北朝鮮の人々に豊かで暖かい人間性があることを描写したこと、あり得ないシチュエーションをロマンスとコメディとアクションで視聴に耐えうる筋に仕立て上げたこと、製作資金の投入を惜しまないクオリティー、出演者のカッコよさなどが高く評価されている。

 ただ、「一般紙もこぞって取り上げている」という状況ではない。長谷川氏が例として取り上げている「ワシントン・ポスト」紙(4月18日付のレビュー)は一般紙というよりも高級紙であり、影響力は確かに強いのだが、同氏の記事が公開された5月20日現在、管見の限りにおいて、それ以外の米一般紙の電子版に掲載されているようには見えない。

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