インド経済レポート「ムーディーズによる格上げの背景」ーHSBC投信

インド経済レポート「ムーディーズによる格上げの背景」ーHSBC投信

インドのイメージ

 2017年11月30日、HSBC投信は、経済レポート(インド市場を見る眼〜現地からの報告)を伝えた。

(レポート)トピックス:ムーディーズによる格上げはモディ政権の改革推進への評価

 インドは11月17日、早めのクリスマス・プレゼントを受け取った。ムーディーズがインドの国債格付けを予想外に「Baa3(BBB-に相当)」から「Baa2(BBBに相当)」へと1段階引き上げた。なお、格付け見通しは「ポジティブ」から「安定的」へと修正された。ムーディーズによるインド国債の格付けは、現在、フィッチ・レーティングス及びスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のそれを1段階上回ることになる。

 投資家はインドの格上げを長らく待ち望んできたため、主要アセットクラス(通貨、債券および株式)はいずれも、格上げを相応に織り込んではいたものの、このタイミングでの格上げは予想外であった。実際、足元では、経常収支赤字は拡大傾向、インフレ率は反転、また本年7月に導入された物品サービス税(GST)による経済成長率や税収への影響が懸念されてもいた。さらに、最近の原油価格の上昇や米国の利上げ観測の高まりとも、時期が重なっていた。

 市場はこの発表を好感している。インドルピーは発表後数日間にわたり上昇し、株式市場も史上最高値を更新した。10年物国債利回りも発表後に低下している。

 ムーディーズによる格上げの背景には、モディ首相が2014年5月の就任以来進めてきた改革の着実な進展がある。インド政府は構造改革を積極的に進めており、特に、公式経済の拡大(インフォーマル経済の撲滅)、行政機関の効率性改善および透明性向上に加え、負債コストや株式資本コストの抑制に繋がる財政や金融面でのプルーデンス政策(健全性および安定性の維持を図る政策)を重視している。

 以下は、政府による改革の実例である。
- GSTの導入および高額紙幣廃止は、長期的な課税ベースの拡大を目指したものであり、これにより政府には減税余地が広がるとともに、公共インフラ、医療および教育への歳出拡大の道が開けることになる
- 防衛や鉄道など、これまで外資参入を規制していたセクターを開放した
- 手当の直接給付制度(DBT:各種補助金などの手当を受益者の銀行口座に直接振り込む制度)採用や、JAM番号トリニティ(銀行口座と国民ID番号であるAadHaar、さらに携帯電話を結び付けることで金融サービスの統合・効率化を図る措置)の導入により、補助金の給付漏れに対する効果的な対策を打ち出した
- 2016年末に施行された「破産・倒産法」が、今後数年間、企業への融資状況を一変させる可能性がある
- 政府は2017年10月、国営銀行の不良債権圧縮や資本増強のため、320億米ドルという過去最大規模の資本注入を行うと発表した。待望されていた資本増強策(2017/18年度の国内総生産(GDP)の約1.3%に相当)は、これまでの政府の公約を大幅に上回り、その規模は過去10年間に国営銀行に注入されてきた合計額より多い

 今回のインド国債の格上げは、過去3年半にわたるモディ政権の改革推進に対する遅すぎる反応であったとも言える。ムーディーズによる格上げという「信任投票」は、インドの改革プロセスに対する評価であり、また当社が投資家に対し一貫して主張してきたインドの成長ストーリーを支持するものでもある。

 世界銀行が最近発表したビジネス環境ランキングで、インドは順位を30も上げた。依然として190カ国中100位台にあるものの、政府が事業環境の改善を強力に推進し、これが評価されている点は注目に値する。

 今回の格上げまでには長い年月を要したが、政府が引き続き経済成長ポテンシャルの向上に取り組み、同時に財政健全化路線を堅持すれば、今後はもっと速いペースでの格上げが期待できるだろう。

 当面は、ムーディーズ以外の格付け会社が追随してインドの格付けを引き上げるかに当社は注目している。大手3社(ムーディーズ、S&P、フィッチ)のうち2社から格上げを得られれば、インドは世界の投資家から資金を集めるパワーを大幅に高めることになろう。

【編集:AJ】

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