インド史上最大規模の銀行不祥事ーHSBC投信レポート

インド史上最大規模の銀行不祥事ーHSBC投信レポート

インドのイメージ

 2018年3月29日、HSBC投信は、現地発の経済レポートで「20億米ドルの不正取引で窮地に立つインド銀行業界」、「インドにおけるESG投資」2つのトピックスを伝えた。

(レポート)
トピックス1:20億米ドルの不正取引で窮地に立つインド銀行界

 インドの銀行界が最近注目を浴びている。2月にインド2位の国営銀行で20億米ドルに及ぶ不正取引が発覚したため、大掛かりな検査が行われる一方、金融界への規制の見直しも進行中である。

 その銀行は、2つの宝石取引グループが複数の行員と共謀して、不正に発行された銀行保証状を利用し、複数の国内銀行の海外支店から不正に融資を受けていたことを明らかにしている。

 インドにおける史上最大規模の銀行不祥事に発展しそうなこの種の事件は、国内第2位の国営銀行に限ったことではなく、この数週間でも、他の複数の銀行における小規模の不正取引が表面化している。このように、銀行についてのネガティブな記事が連日メディアで流れる一方、インド準備銀行(中央銀行)の不良債権処理の枠組みの改訂版が発表されたため、インドの銀行株価は下落した。

 投資家の間では、不正事件を受けて銀行規制が強化されることから、インドの銀行貸出が速やかに増加する見込みは遠のいたとの見方が広がった。

 事件発覚から数週間後、中央銀行はインドの全銀行に向けて、不正取引に使われた銀行保証状の発行を禁ずる通達を出した。

 また、中央銀行は、各行に対して2018年4月30日までに、不正防止のために一部の「技術的な抜け穴」を塞ぐ対策を講じることを求めている。中でも問題になっているのは、国際銀行間通信協会(SWIFT)の銀行間メッセージング・システムと各行のコアバンキング・システムの接続における抜け穴である。

 銀行システム、貸出の伸び、経済への影響などへの懸念のほかに、不正取引事件はインドのコーポレート・ガバナンス基準についての疑念を引き起こしている。

 インド国内の主な企業、産業界を代表するインド産業連盟(CII)は、政府の国営銀行の株式保有率の引き下げと銀行規制の強化、銀行業界におけるコーポレート・ガバナンス基準の改善を提言している。

 また、銀行不祥事の表面化により、国営銀行、中央銀行、政府が、銀行セクターに蔓延している問題の解決に向かって動き出すという意味において、最近の出来事をポジティブに捉える向きもある。

 政府は国営銀行のガバナンス基準と査定手順の改善のために2016年4月に銀行委員会(Banks Board Bureau=BBB)を発足させた。しかし、同委員会は最近発表した声明で、1年前に提言をまとめたが財務省からはまだ反応がないとしている。

トピックス2:インドにおけるESG投資

 インドでESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した責任投資が始まったのはわずか7年前の2011年。インド証券取引委員会(SEBI)は、ボンベイ(ムンバイ)証券取引所とインド国立証券取引所の上場企業のうち時価総額上位500社に対してESGへの取り組み状況の報告を義務付けている。

 ESG情報については、企業が年次報告書を提出する際に、企業責任報告書(BRR)の中に記載することが義務化されている。現在、インド株式指数Nifty50を構成する50社のうち31社(62%)がサステナビリティ(持続可能性)レポート及びBRRを開示している。

 BRRは、企業の社会・環境・経済責任に関する国家自発的ガイドライン(NVG)にある、1.倫理、透明性、説明責任、2.責任ある商品とサービス、3.従業員の福利、4.ステークホルダーの関与、5.人権、6.環境、7.公共政策の支援、8.包括的な成長、9.顧客価値の9原則をベースに制定されている。

 SEBIは2017年にコーポレート・ガバナンス改革案を発表した。改革が実現すれば、インドのコーポレート・ガバナンスの枠組みが有意義な形で改善する可能性がある。

 コーポレート・ガバナンス改革案には、海外子会社を含む子会社のうち、1.非上場企業への資金の流れについては監査委員会がモニターする、2.上場企業は適切な規制の枠組みの下に置く、3.株価に影響を及ぼす可能性がある非公開情報についてはプロモーター(創業者支配株主)またはすべての主要株主と共有することが盛り込まれている。

 改革案は、さらに上場企業の取締役会について、1.最低6人の役員で構成する、2.独立(社外)取締役の比率を最低50%とする、3.女性役員1人を含むことを求めている。

 コーポレート・ガバナンス基準と透明性は、規制要件の強化に伴い、時間とともに改善していくことが期待されている。加えて、株主アクティビズム(株主による積極的な株主権の行使)の向上が、企業による規制順守にとどまらず、ルール順守の精神へと広がることも期待できる。
【編集:AJ】

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