コロナ禍でも順調に拡大するインドへの投資<HSBC投信レポート>

コロナ禍でも順調に拡大するインドへの投資<HSBC投信レポート>

図表1

 2020年8月12日、HSBC投信は、インド経済レポートを伝えた。コロナ禍でもインドへの投資は順調に拡大している。

(経済レポートから)インドでは新型コロナウイルスの感染拡大が続き、累積感染者数は7月6日に米国とブラジルに次ぐ世界3位となった。感染者数の最多記録は連日更新され、感染拡大ペースは現在、世界最速となっている。しかし、感染者の致死率は2.28%(インド保健省調べ)と世界でも最も低いクラスにとどまっていることも事実である。

 6月の経済指標やその他のデータは、大半の部門において経済活動が4月および5月と比べ、大幅に拡大したことを示している。しかし、多くの数値は新型コロナウイルスの感染拡大以前の水準をなお大きく下回ったままであり、また一部の先行指標は7月に早くも上昇から横ばいに転じる兆候を示している。

 直近のデータの中では、外貨準備高の急増が特に注目される。外貨準備高は6月末に5,000億米ドルの大台に達し、増加の勢いは7月も続いている。その結果、インドの外貨準備高は、中国、日本、スイス、ロシアに次ぐ世界5位に躍進した。外貨準備高は、2018年度(2018年4月-2019年3月)に33億米ドル減少したが、2019年度は595億米ドルの増加に転じた。さらに、2020年度第1四半期(2020年4〜6月)のみで310億米ドルの大幅増を記録している。以下では、外貨準備高が急増を続けている理由と、それがインド経済と外国からのインド投資にとってどのような意味を持つかについて考える。

 最近の外貨準備高の増加傾向は、インド準備銀行(中央銀行)が2019年に採用した、米ドル安傾向が強まればルピー高を、米ドル高傾向が強まればルピー安を容認する外国為替政策と相まって拡大した資本流入を反映したものだ。

外貨準備高の週次データは、7月17日現在で過去最高の5,1800億米ドルに達した。外貨準備高の持続的な増加の背景には、経常収支、対外商業借り入れ、外国直接投資のすべてが著しく改善したことがある。

 ポートフォリオ投資は、3月に起きた世界的な株価暴落を受けて、2019年度第4四半期(2020年1-3月)は過去最大の137億米ドルの流出を記録した。しかし、外貨準備増減部分を除いた金融収支は170億米ドルの黒字を記録した。外国直接投資の堅調な流入(120億米ドル)と四半期ベースとしては過去最大を記録した対外商業借り入れ(104億米ドル)が大きく貢献したためだ。

 対外商業借り入れは、国内金融市場の引き締め状況をある程度反映しているため、インド企業のバランスシート改善と資金繰りに伴う借り入れ需要を考えると、増加が続く可能性がある。

 また、明らかにポジティブな変化が、最近数四半期を通して見られた。それは外国直接投資の堅調な拡大傾向である。新規の外国直接投資の対国内総生産(GDP)比そのものは2019 年度第4四半期で1.6%、2019年度全体で1.5%と小さいように見えるが、2019年度の新規投資額は560億米ドルで過去最大となっている。

 一方、外貨準備高の最近の積み上がりは、コロナ禍による景気の後退と国内金融環境のタイト化に対応するために、市中に資金を供給する必要がある中央銀行にとって、重要な「資金源」となっている。

 6月の通貨供給量(M3)は前年同月比12.3%増で、2014年11月以来最大の伸びとなった。増加の要因は、外国為替市場介入と、市中銀行に流動性を供給するための公開市場操作であった。

 外貨準備高が適正水準を満たす大きな規模で維持されているという事実は、世界的な金融不安の波及に対するインドの緩衝機能がそれだけ強化されたことを意味する。急激なルピー安圧力への対処や短期的なルピー相場の乱高下を抑制する中央銀行の能力は、それだけ高まったと言える。

経常収支の改善は2021年度を通して安定的に続く見通し

 インドの貿易収支は6月に2002年4月以来初めて黒字となった。18年ぶりの黒字額は8億米ドルとわずかだが、輸入規制緩和が遅れる一方で、輸出の正常化が順調に進んだことが要因として考えられる。

 ただし、当社は、貿易黒字が持続する可能性は低いと見ている。その理由の1つとして、輸出と輸入の成長の時間差を挙げることができる。インドでもコロナ禍対策で規制した経済活動が段階的に緩和されてきたものの、国内経済の正常化では多くの諸国に遅れを取っている。6月に正常化が進んだ輸出についても、特に今後の世界経済の動向や外需見通しは不透明であり、状況は厳しい。実際に、多くの国が新型コロナウイルス感染の再拡大を防ぐために行動制限を再導入する動きを強めている。ほかにも、国際的なサプライチェーンの混乱の長期化と地政学的な緊張がリスク要因となっている。

 一方、国内需要の先行きについては、直近の経済指標が明暗の分かれる内容となっているものの、2020年度後半(2020年10月〜2021年3月)に改善する見通しである。そうなれば、輸入を押し上げる可能性がある。ただし、経済指標は4月、5月に比べると6月に上昇したものの、7月には上昇が横ばいとなることも示している。その背景としては、行動制限下で蓄積していた消費需要がすでに後退気味であることと、全国一斉に出された全土封鎖とは対象的に、制限解除には地域格差見られることが挙げられる。また、石油価格の値下がりによる輸入総額の下押し効果もピークを打ったと思われる。以上の理由から、当社の予測では、貿易収支は今後数ヶ月で赤字に戻るものの、国内需要の回復が遅れているために、赤字幅が拡大する可能性は低い。
【編集:RO】

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