五輪サイバー攻撃に懸念=ロシアの報復警戒―大会・国民生活に影響

五輪サイバー攻撃に懸念=ロシアの報復警戒―大会・国民生活に影響

ロシアのプーチン大統領=2014年2月、南部ソチ(AFP時事)

 延期された東京五輪・パラリンピックの開幕予定日が半年後に迫り、日本へのサイバー攻撃が活発化するのではないかという懸念が再び高まっている。英政府は昨年10月、ロシアの情報機関が東京大会の関係団体を標的にしていたと発表。ロシアは組織的ドーピングをめぐって選手団が五輪から排除されており、報復目的の妨害が仕掛けられれば、国民生活にも影響が出かねない。

 ◇本番の準備?

 「東京で夏に開催されるはずだった大会の関係当局者・組織を狙うサイバー偵察が活動に含まれていた」

 英政府は当時の発表で、異変があったのは延期が昨年3月に決まる前のことで、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の「偵察」だったと指摘。大会期間中に本格的な攻撃を行うための準備の可能性を示唆した。

 2018年平昌冬季五輪では開会式当日にサイバー攻撃が発生。中国や北朝鮮を装い、事前に「オリンピック・デストロイヤー」と呼ばれるマルウエア(悪意あるソフト)がばらまかれ、チケット印刷を含む運営システムに影響が出た。

 英政府の発表と同じ日に米司法省は、平昌大会の攻撃などに関与したとして、GRU「74455部隊」の6人が起訴されたと発表。「ロシアほど悪意を持ち無責任にサイバー能力を武器化した国はない」(司法省高官)と非難した。

 GRUは、1940年代に日本で逮捕・処刑されたスパイのゾルゲで知られる軍の情報機関で、旧ソ連国家保安委員会(KGB)後継機関より強大だ。2016年の米大統領選に介入したと指摘され、18年にGRUの12人が起訴。ただ、ロシアは「(米国の)臆測だ」(プーチン大統領)と事件への関与を否定している。

 ◇ワクチン情報も

 五輪はサイバー攻撃と隣り合わせだ。平昌大会以外にも、12年ロンドン大会で電力システムが標的になったとされ、リオデジャネイロ大会があった16年に世界反ドーピング機関(WADA)が情報を盗まれた。

 「攻撃が東京大会の妨害に用いられた場合、大会にとどまらず、国民生活に深刻な影響が及びかねない」。日本の公安調査庁は20年版報告書で警鐘を鳴らした。

 標的は五輪にとどまらない。英政府の昨年7月の発表では、KGB系の情報機関とつながりがあるとされるハッカー集団「APT29」が、米英などが開発する新型コロナウイルスのワクチン情報を狙っていた。

 この集団は、米政府機関を数カ月間ハッキングし、職員のメールを監視していると昨年12月に伝えられ、激震が走った。バイデン大統領は就任前から「政府のあらゆるレベルでサイバーセキュリティーを最優先する」と身構えている。 【時事通信社】