北朝鮮現地ルポ――平壌はクルマの数が増え、渋滞が起きるまでになっていた!

北朝鮮現地ルポ――平壌はクルマの数が増え、渋滞が起きるまでになっていた!

金正恩の肝煎りで2016年1月に開館した博物館「科学技術殿堂」。

続く核、ミサイル開発&発射で緊張の度合いを増す北朝鮮情勢。国連による経済制裁など国際社会からの圧力が強まるなか、平壌市民はどんな日常を過ごしているのか!?

現地を訪れると、そこには意外な(!?)光景が広がっていた。

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「平壌(ピョンヤン)に行かないか」ーーそう連絡をもらったのは11月中旬のこと。サッカー北朝鮮代表の取材のため、現地行きを打診されたのだ。これまで取材で同代表を追っていたこともあって声がかかったわけだが、少々不安はあった。核、ミサイル問題で国際的な緊張状態が続くなか、現地に行っても大丈夫なのか、と。

筆者が最後に北朝鮮を訪れたのは8年前の2009年。北朝鮮代表が、44年ぶりに10年南アフリカW杯への出場を決め、平壌で代表チームの合宿を行なったとき以来のことである。

それから北朝鮮はどのような変化を遂げているのか。常に興味はあったし、行くチャンスはそうそう訪れるものでもない。不安を抱えながらも平壌行きを決意した。

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経由地の北京から乗り込んだのは北朝鮮の高麗(コリョ)航空。機内に乗り込むと、どこからともなく日本語も聞こえてくる。このご時世、一体、なんの用事があって北朝鮮入りするのだろう。

そして、機内のキャビンアテンダントに目を奪われた。「美女軍団」を彷彿(ほうふつ)とさせる美女ぞろい。彼女たちが配ってくれた『労働新聞』(朝鮮労働党の機関紙)の1面には「金正恩(キム・ジョンウン)委員長がトラック工場を視察」の記事。トラックが何百台も並ぶ壮観な写真が目に飛び込んでくる。

離陸後に出された機内食はハンバーガー。8年前も同じメニューだったが、パテの味がジューシーで、格段においしくなっている。飲み物はファンタオレンジに近い味の炭酸飲料だった。

15年7月に完成した平壌国際空港の新ターミナルビルは明るく、とても開放的な雰囲気。どんよりとした空気が漂っていた旧ターミナルビルとは雲泥(うんでい)の差がある。

おしゃれなカフェやレストラン、免税店があり、書店の棚にはびっしりと書籍が並び、CD、DVDも充実している。どのお店も品ぞろえが豊富で、店員たちも笑顔での接客が目立つ。

ただし、国際便が頻繁(ひんぱん)に飛んでいるのかというと、そうではない。平壌国際空港から発着する便は、中国の北京行きやロシアのウラジオストク行きなど一日に数本しかない。北朝鮮の国際的なイメージや度重なる経済制裁の影響もあり、この空港を利用する航空会社が今後増えるのかは不明だ。

空港で今回の旅をアテンドしてくれる“お付き”の女性ガイドと男性運転手と対面。

「ようこそ! 平壌に来るのは8年ぶりなんですって? 平壌市内は本当に変わりましたよ。きっと驚くはずです」

女性ガイドは50代くらい。明るく、いろいろな話をして、場を和(なご)ませる。男性運転手は若く、20代後半くらいか。

夜、空港から市内に向かう道中は暗かった。これは正直、8年前とあまり変わりない印象だ。少なくとも市内から離れた郊外の電気事情は「よい」とは言えないようだ。

ただ、平壌の中心部に入ると、一気に明るくなりはじめる。道路の脇には街灯が増え、何よりも一番驚いたのは信号とクルマの数だ。男性運転手が教えてくれた。

「最近、市内はクルマの数がどんどん増えてきて、以前はなかった渋滞も起こるようになってしまった。数年前までは手信号で交通整理を行なっていましたが、今はその仕事をする人も減っています」

なるほど。信号がたくさんできることで、平壌名物ともいわれた“手信号の達人”が、その仕事を奪われているというわけだ。

「手信号だとクルマの事故も多く、それを解消するために信号機が増えたんです。古きよき時代のものがどんどんなくなる寂しさもあるんですけどね」(運転手)

8年前にはほとんど走っていなかったタクシーも増えた。タクシーの車種をよく見ると、国産の平和(ピョンファ)自動車が多く、ボディカラーで運行会社が区別できるようになっている。平壌駅前には、相乗り専用のバン型タクシーが何台も客待ちをしていた。高麗航空が運営するタクシー会社のほか、中国資本が入ったタクシー会社もあり、「国内の数社が競い合って営業に力を入れている」(ガイド)とのことだ。

料金は「1kmで約1ドル。タクシー会社によって、サービスや金額が違う」(運転手)。金額だけ見れば、それなりに安く利用できるようで、今後もっと利用者が増えていくのではないだろうか。

そうこうしているうちに案内されたのは、国家の肝煎(きもい)りで今年4月に建設された「黎明(リョミョン)通り」や「未来科学者通り」の高層マンション街。夜でも煌々(こうこう)とまぶしい光を放つこのマンション街について、女性ガイドは「近年の平壌市内の発展を示す象徴のひとつ」と自慢げに話していた。たとえるなら“平壌の六本木ヒルズ”というところか。成功者や富裕層が住む場所というニオイがプンプンする。

黎明通りを過ぎると、周辺はまた少し暗くなった。それでも、8年前に比べると市内の電気事情はよくなっている印象を受ける。前回の滞在時には頻繁(ひんぱん)にあった停電も、今回は一度もなかった。

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(取材・文・撮影/金明c)

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