エンゼルス・大谷翔平の入団会見に見た“謙譲の美徳”の限界−−そこから考察する「日本の分岐点」とは?

エンゼルス・大谷翔平の入団会見に見た“謙譲の美徳”の限界−−そこから考察する「日本の分岐点」とは?

日本ではアスリートから芸能人、政治家まで、とにかくへりくだる傾向が強いと語るモーリー氏。

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが大谷翔平のエンゼルス入団会見からみる「謙譲の美徳」について語る!

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「皆さんの応援で僕を成長させてほしい」

米メジャーリーグのエンゼルス入りが決まった大谷翔平選手は、入団会見でファンにこう呼びかけました。非常に興味深く感じたのは、この言葉を通訳者が“Please help me”と訳したことです。

大谷選手の謙虚さは、日本ではまさに「謙譲の美徳」といわれるもの。ただこの姿勢は、アメリカにおけるヒーロー像には当てはまりません。素晴らしい技能や才能を持ち、高みに上り詰めた人物が、(アメリカ人から見れば必要以上に)へりくだるという感覚が理解されないのです。

通訳者はそれを理解し、へりくだりのニュアンスを消して、「みんなでチャレンジして(二刀流という)奇跡を実現しよう!」という方向にうまくチューニングしました。あの言い方なら、オバマ前大統領の“Yes, We Can”にも近いニュアンス。現地のファンも素直に「よし、一緒に二刀流を実現させるぞ」という気持ちになったでしょう。

日本ではアスリートから芸能人、政治家まで、とにかくへりくだる傾向が強い。才能を誇示することは好まれず、ファンや支持者より下まで降りてかしずく。以前から僕は、日本ではリーダーらしいリーダーが生まれない、上にいる者がみんなの顔を立てようとしすぎて“決断”や“革命”ができないと感じていましたが、今回もそのことを思い出しました。

かつてケネディ元大統領は米国民に、“Ask not what your countrycan do for you, ask what youcan do for your country”と言いました。国があなたのために何をするかではなく、あなたは国のために何ができるか、と。これは「国に殉じろ」という意味ではもちろんなく、受け身で物事を考えず、自分の足腰を鍛えて行動しろということです。

そして同時期、アメリカの黒人たちの間では“Do Your Thing”という言葉が流行しました。直訳すると「お前のそれをやれ」。このニュアンスを日本語で説明するのは難しいですが、他人のことをとやかく言ったりまねしたりするより、自分固有の“何か”を追っていいという意味で、黒人たちはその言葉に熱狂したわけです。

自分の努力で国や社会を前進させることができ、そして“何か”を実現できる―。当時の米社会にはそんな信仰心のような雰囲気があった。これを言い換えれば「希望」ということになるでしょう。ケネディが多くの国民の心に火をつけたのは、単に希望を掲げただけでなく、個々人に“Your Thing”を見つけなさい、とボールを預けたからだと思います。

どの時代にもそれぞれの必然があり、光もあれば影もありますから、このことをもって当時のアメリカすべてを肯定するわけではありません。ただ、そこには長年、膠着(こうちゃく)し続けて冷笑主義に覆われた今の日本社会とは違う変化、そしてそこから生まれる推進力が確かにありました。

2018年、日本はまさにその分岐点にいる気がします。国民は国にねだり続けてきた。税率がどうだ、給付がどうだ、と。もちろん権利も大切ですが、その甘えっぷりに限界が来ているのではないか。受け身体質から脱却し、それぞれの“Your Thing”を見つけた人から見違えるように変わっていく−−そんな1年になる気がしてなりません。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)







国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。『スッキリ』(日本テレビ)、『報道ランナー』(関西テレビ)、『教えて!NEWSライブ 正義のミカタ』(朝日放送)、『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)、『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)などレギュラー・準レギュラー出演多数。







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