米国務省が中国人学者のビザ発給拒否、技術漏洩を警戒か

米国務省が中国人学者のビザ発給拒否、技術漏洩を警戒か

中国側への情報漏洩を警戒

 米国務省は、7月に米国内で開催された国際学術会議に出席する予定だった中国代表団全員のビザの発給を拒否していたことが分かった。このなかには、米側の主催者から正式に招待された研究者も含まれていたが、国務省はビザ発給を拒否するよう、中国内の米国大使館や総領事館に命令していたという。極めて異例の措置で、トランプ政権になってから、中国人スパイによる技術流出を強く警戒していることが大きな理由とみられる。

 学術会議は米国内の2カ所で開かれており、一つは7月15~16日にカリフォルニア州で開催された第42回「宇宙空間研究委員会(COSPAR)」。もう一つは、23~24日にかけて首都ワシントンで行われた全米科学協会(NSF)主催の「全米科学会議」。

 前者のCOSPARでは、中国代表団は地震電磁気観測衛星について研究成果の発表を行う予定だったが、代表団が出席できなくなったことから、取りやめになった。

 また、後者の会議でも同様だが、このうち数人の中国人科学者にはNSFの正式な招待状が届いていた。

 このうちの1人、元米国籍の中国生物科学者で、北京大学の饒毅教授は北京の米国大使館で米国側担当者と面談した際、「あなたにはビザは発給できません」と通告されたが、その理由については明らかにされなかったという。

 饒氏は中国メディアに対して、「大使館は通常、その国の人々と友人になるのが仕事だが、アメリカ大使館は傲慢だった。こんなことをやっていては、アメリカにマイナスの影響を与えるだけだ」と憮然とした表情で語ったという。

 しかも、饒氏は以前は米国籍をもつ米国民だった。饒氏は1991年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)やハーバード大学で神経科学や生物化学の研究に従事。ミズーリ州のセントルイス・ワシントン大学で講師、教授を務めた後、米国籍を取得。その後、中国当局の海外人材呼び戻し計画、「千人計画」に応じ、2007年には米国籍を放棄し中国に帰国した。

 現在、北京市政府がバックアップしている北京脳科学と類脳研究センターの主任と同センター法人代表も務めている。

 饒氏は米国籍を放棄したことが影響したのか、2016年以降、米国での学術交流活動のほか、親族訪問のための渡米ビザさえも拒否されている。

 これについて、在米中国人学者の楊占青氏は、米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の取材に対して「饒氏は米国で長い間、科学研究活動に携わった後、米のハイテク技術を中国に持ち帰り、現在中国でその分野の第一人者になっている。このような過去を持つ人に対して、米政府は警戒せざるを得ないのではないか」と指摘している。

 トランプ政権は、中国当局による米企業のハイテク技術の窃盗を防ぐため、今年6月11日から中国人留学生と研究者らへのビザ発給を制限している。

 米通商代表部によると、中国による知的財産権侵害は昨年だけで、米企業に約6000億ドルの損失をもたらしているという。また、米連邦捜査局(FBI)のレイ長官も今年2月、上院情報委員会の公聴会で、中国人スパイが「教授、研究者、学生」の立場を利用して、米国の学術研究機関から技術情報を漏えいさせていると警告している。

関連記事(外部サイト)