トランプ氏が握る金正男Jr.の処遇 米朝決裂なら新指導者か

金正男氏の息子・キム・ハンソル氏がFBIの保護下でニューヨークで生活か

記事まとめ

  • ドナルド・トランプ大統領がG20閉会翌日に板門店で金正恩氏と会談し、注目を集めた
  • 米国側は、北の後継者の資格を持つ金正男氏の息子をFBIの保護下に置いているという
  • 米国政府のもつこのカードは、金正恩氏にプレッシャーをかけ続けることができるらしい

トランプ氏が握る金正男Jr.の処遇 米朝決裂なら新指導者か

トランプ氏が握る金正男Jr.の処遇 米朝決裂なら新指導者か

板門店の北朝鮮側に立つトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(ゲッティ=共同)

 電撃的かつ史上初となる米大統領の訪朝は、大阪G20の話題など一気に吹き飛ばす注目を集めた。しかし、笑顔の握手の裏側では米朝両国の熾烈な駆け引きがあった。

「会談が実現したことで、一番ホッとしているのは金正恩・朝鮮労働党委員長だったはずです。北朝鮮はそれだけ追い詰められていた」(北朝鮮ウォッチャー)

 G20閉会翌日となる6月30日、南北軍事境界線がある板門店でトランプ米大統領は金正恩と約50分間会談した。29日のトランプのツイッターでの呼びかけをきっかけとする“劇場型外交”に、なぜ金正恩は応じたのか。それは自身の窮状があったからだとされている。

「2017年に決議された(対北朝鮮制裁に関する)国連安保理決議案は、北朝鮮経済に深刻なダメージを与えたといわれている。経済制裁により北朝鮮の命綱である中国向け輸出は前年比で88%も減少しており、国内経済は破綻寸前になっているという分析も出ています」(ソウル特派員)

 こうした経済危機は金正恩体制をも揺るがしている。守旧派である朝鮮人民軍幹部たちが力を取り戻すなど、不安要素が拡大しているのだ。その中でも金正恩に不安を覚えさせているのが、米国側が握る“カード”だという。

◆ニューヨークで生活?

 朝鮮半島情勢に詳しいジャーナリストの赤石晋一郎氏が解説する。

「今年に入ってから韓国の大手メディアなどで、マレーシアで暗殺された金正恩の異母兄・金正男氏の息子であるキム・ハンソル氏が米CIAの手引きで米国に入り、FBIの保護のもとニューヨーク郊外で生活していると報じられました。すでに20代半ばのハンソル氏は金正日の孫にあたり、北の後継者となる資格がある人物です。米国は“ポスト金正恩”を見越して、ハンソル氏を保護しているとの見方が広がっているのです」

 当初、ハンソル氏を保護していたとされる脱北者団体・自由朝鮮も米当局と連絡を取り合う関係にあり、彼らの反体制活動が北にとって厄介な存在となっているのは間違いない。そうしたなか、米国政府は“ハンソル・カード”をチラつかせることで、「いつでも体制転覆できる」というプレッシャーを金正恩にかけ続けられる。つまり、そのカードはトランプにとっての“ジョーカー”にあたるというのだ。

「かつてトランプは北朝鮮に対して『炎と怒りに直面することになる』と軍事攻撃を示唆したことがあるように、その予測不能な行動を金正恩は最も怖れている。一方でトランプにとっては北に核放棄プロセスを実行してもらわなければ面子が丸潰れとなる。その両者の思惑が合致し、まず歩み寄ろうとしたのが今回の電撃会談だったのです」(同前)

 そして米国の保護下にあるとされるハンソル氏の処遇は、金正恩の出方によって左右されることにもなる。

「このまま北が核保有を続ければ、米国は本気で金正恩体制の転覆を考えざるを得ない。そのとき北の新指導者としてハンソル氏の存在が浮上するはずです。ただ、これまで“まさか”を実現してきたトランプゆえに、米朝関係がこのまま蜜月になる可能性もないとは言えない。そうなった場合は、父の正男氏も2017年に消されたように、ハンソル氏の存在そのものが邪魔になりかねないでしょう」(前出・北朝鮮ウォッチャー)

 トランプが「急がない」とする今後の米朝協議の過程で、“ジョーカー”はどう切られるのか―─。

※週刊ポスト2019年7月19・26日号

関連記事(外部サイト)