腐敗摘発された中国の証券業界大物、裁判受けずに放免の背景

腐敗摘発された中国の証券業界大物、裁判受けずに放免の背景

腐敗官僚の摘発が厳格に

 中国では腐敗官僚の摘発が中国共産党主導で厳しく進められており、これまでに党政治局員級の最高幹部が20人以上も失脚し、獄中にあるか、あるいは自殺するなど、いずれも悲惨な末路を歩んでいる。

 ところが、最近、腐敗官僚でありながら、党籍もはく奪されず、裁判も受けずに、ほぼ無罪の状態で釈放されたとみられた人物がいたことが分かった。腐敗幹部として身柄を拘束されていながら、極めて異例の扱いで、無罪放免は初めてとみられる。中国国営新華社電などが報じた。

 この高級幹部は中国の証券業界の監督団体である中国証券監督管理委員会(証監会)前主席の劉士余氏。

 劉氏は中国の中央銀行である中国人民銀行の副総裁や中国農業銀行のトップである同行党委員会書記など、主に金融畑を歩んでおり、2016年1月から2019年1月までの3年間、大臣級の証監会トップの主席を務めていた。

 ところが、劉氏は今年1月、日本の消費者連合団体などに相当する中華全国供銷合作総社(購買販売協同組合)の党組副書記と理事会主任に転出。明らかな降格人事で、エリート街道を驀進してきた劉氏の身に暗雲が漂った。さらに5月には「規律違反および違法行為」の疑いがあるとして、身柄を拘束され、中国の金融業界に大きなショックが走った。

 拘束された腐敗幹部は、通常の場合、取り調べがひと段落した段階で、党籍はく奪、すべての職務を解任される。その後は裁判で判決が下され投獄されるのだが、劉氏の場合は違った。

 中国メディアは10月に入って、「劉氏の捜査は終了した」と報じたたうえで、劉氏は5月からこれまでの5か月間、身柄を拘束されただけで、裁判は開かれず、その結果、事実上の無罪として、釈放されたというのだ。これは腐敗摘発事件では劉氏が初のケースとみられる。

 中国紙『北京青年報』は劉氏と他の犯罪者との違いについて、劉氏は自首し、捜査に協力したと伝えている。このためか、中国メディアが劉氏を名指しではなくて、「劉同志」として敬称としての「同志」という言葉を使っている。

 これについて、香港紙『蘋果(リンゴ)日報』は「極めて異例な扱いだが、劉氏がトップを務めていた証監会は株式の取引を管理監督する最高機関で、党最高幹部ファミリーの株式取引の情報も把握している。劉氏が習近平主席ら現役の最高幹部、あるいは歴代の最高幹部ファミリーの不正な株式投資などの情報をちらつかせて、取引をしたのではないか」との北京の関係者の話を報じている。

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