韓国大学教授「慰安婦は自由意志」言及で罰金刑、現在係争中

韓国大学教授「慰安婦は自由意志」言及で罰金刑、現在係争中

『反日種族主義』を批判する抗議デモ(YONHAP NEWS/AFLO)

 韓国で7月に発売され、10万部超という異例のベストセラーになっている『反日種族主義』の6人の共同著者が、韓国のネット上で猛批判にさらされている。

 同書は歴史的資料を基に、慰安婦や徴用工の強制性を否定し、独島(竹島の韓国名)の領有権主張に疑義を示すなど、韓国政府の従来の主張を、「反日主義者の作り上げた虚構」だと断じた。

 11月に日本語版(文藝春秋刊)が刊行されるや、著者たちへのバッシングはさらに過熱。韓国大手のハンギョレ新聞は〈日本人が誤った歴史観を深め、歪曲された歴史観が日本社会に拡散する〉と批判した。

 著者のひとりで落星台経済研究所研究委員の李宇衍(イウヨン)氏の研究所の前では、市民団体が旭日旗と李氏の写真を重ねて燃やしたり、本を破り捨てるなどのパフォーマンスも繰り広げられた。正門前に汚物(犬の糞)を撒き散らした男が、住居侵入と器物損壊の疑いで書類送検される事件も起きている。

 韓国では、政治家のみならず学者ですら、親日的言論がタブー視されてきた歴史がある。発言の主はつるし上げられ、制裁を加えられる。

『反日種族主義』の筆頭著者であるソウル大学名誉教授の李栄薫(イヨンフン)氏も、過去に“痛い目”を見た一人だった。『韓国「反日フェイク」の病理学』の著者で韓国人ジャーナリストの崔碩栄(チェソギョン)氏が語る。

「2004年、テレビの生の討論番組で『慰安婦の強制性』を否定する発言をして、市民団体に糾弾されました。研究所に卵を投げつけられ、ソウル大の学生からも辞職を求める声が上がった。最後は慰安婦施設へ赴き、報道陣の前で、床に膝と手をついて謝罪しました」

 李氏は2006年にも、現代史に関するセミナーに乱入した市民団体に暴行を受け、救急車で運ばれている。そして、今回の出版後は同氏の研究室に2人の男が乱入し、ツバを履きかけられたり、電話で「塩酸をばらまくぞ」と脅されたという。電話やメールによる悪口や脅迫も後を絶たない。

 2013年に世宗大学の朴裕河(パクユハ)教授が書いた『帝国の慰安婦』は、日帝統治を厳しく批判する一方、自らの意思で慰安婦になった女性がいたことに言及し、訴訟にまで発展した。

 出版後、名誉を傷つけられたとして元慰安婦9名が朴教授を告訴。民事裁判で、慰安婦9名に対して各1000万ウォン(当時のレートで約100万円)ずつ支払う判決が下された。刑事裁判では1審で無罪を勝ち取ったものの、2審では逆転有罪判決で罰金刑を言い渡されている(現在最高裁で係争中)。

 2015年には高麗大学の鄭安基(チョンアンギ)教授が「慰安婦は性奴隷ではない」と発言し、学生に糾弾されて辞任。2019年10月には延世大学でも柳錫春(リュソクチュン)教授が慰安婦を「売春の一種」と発言して市民団体に告訴されている。崔氏が言う。

「韓国は左派右派の対立が激しい国ですが、反日という一点では同調しています。『日本=悪』の構図を否定するような言説に対しては、左右が団結して徹底的に攻撃を加える。国家にとって“不都合な事実”に触れるものであれば、なおさらです。『反日種族主義』はまさにこれに該当しました。

 著者たちは、批判する人々に対して『隠れてないで堂々と公開討論しよう』と何度も呼びかけてきましたが、誰も名乗り出なかった。批判も本の内容ではなく著者の経歴など、本質と離れた話にすり変わっている。今回の過激な抗議活動も、異説を排除する韓国社会の反日種族主義が顕在化したと言えます」

 一方で、この本が10万部を超えるヒットになったことは、韓国社会が市井レベルで少しずつ変化しつつあることの現われとも受け取れる。一冊のベストセラーが、韓国社会の「動揺」をあぶり出している。

※週刊ポスト2019年12月6日号

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