「金正恩暗殺未遂事件」の全貌 ついに北の住民が反旗

北朝鮮で住民の手で『独裁者』金正恩氏を消そうという衝撃計画が報告

記事まとめ

  • 北朝鮮で住民の手で『独裁者』金正恩氏を消そうという衝撃計画が報告されていたという
  • 正恩氏が乗る専用列車の爆破未遂事件で、今回の計画は国内で一切報じられていない
  • 2004年には列車爆発事故が発生し、金正日氏を狙ったテロ説が流れたが事故と発表された

「金正恩暗殺未遂事件」の全貌 ついに北の住民が反旗

「金正恩暗殺未遂事件」の全貌 ついに北の住民が反旗

決して安泰ではない Reuters/AFLO

 米中が圧力を強めようと、北朝鮮のミサイル実験に歯止めがきかない。何が、金正恩氏を狂気に駆り立てるのか。ジャーナリスト・城内康伸氏がスクープ入手した内部情報によると、圧政の続く北朝鮮国内に、異変が起こっているという。住民自らの手で、この独裁者を消そうという衝撃計画が報告されていたのだ。同氏がレポートする。

 * * *
 ちょうど一年前の昨年5月。北朝鮮の首都・平壌で6~9日までの4日間、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会の第7回大会が開催された。それまで党第1書記だった最高指導者の金正恩氏は、新設ポストの党委員長に就任、「金正恩時代」の到来を内外に宣言した。

 党大会と同じ時期、北朝鮮中西部・平安南道のある都市では、秘密警察に当たる国家安全保衛部(現国家保衛省)の地方組織が、思想教育を目的とする「講演会」と呼ばれる、秘密の集会を開いていた。

 北朝鮮では、数世帯ごとに相互監視させる、戦前の日本で運用されていた「隣組」に似た「人民班」という制度がある。講演会参加者の中心を占めたのは、地元人民班の班長たちだったとみられる。演壇に立った地元の保衛部幹部が切り出した。

「金正恩同志を党の首位に崇めて、党大会が行われている。しかし、“敵”の目的は、われわれとは違う。どうすれば党大会を破綻させることができるか、これこそ、“敵”の最大の目的だ」

 筆者は北朝鮮関係者を通じ、この秘密集会の詳細な記録を入手した。その衝撃的な内容を紹介しよう。

 ただし、情報源の身辺安全を考慮し、集会の具体的な日時、場所など内容の一部をあえて曖昧に記したことを、ご了解いただきたい。関係者によると、保衛部幹部は講演で、次のように言葉を繋いだ。

「党大会を狙う敵の策動が、陰に陽に極致に達している。大会を前後して敵の策動が起こりうる可能性があるだけに、注意喚起のため、道内で最近、保衛機関が摘発した事例について申し上げる」

 幹部がまず報告したのは「1号列車」と称する正恩氏が乗る専用列車の爆破未遂事件だった。つまり、敵とは、北朝鮮内外の反体制勢力を意味する。

 1号列車をめぐるテロの話としては2004年4月、北朝鮮北西部の平安北道竜川郡にある鉄道平義線竜川駅付近で、150人以上が死亡した列車爆発事故が発生した。当時、同駅を通った故金正日総書記が乗っていた専用列車を狙ったテロとの説が流れた。一方、北朝鮮当局は「事故」と発表していた。だが、今回の計画は国内で一切報じられていない。

 報告によると、大学進学に失敗した男が制度に不満を抱き、「体制を転覆させる。そのためにはまず、首脳部(正恩氏)を除去すべきだ」と考えた。男は、正恩氏が参加する行事の開催場へと繋がる鉄道線路に爆薬をしかけ、「1号列車を爆破させるか、転覆させることを狙った」とされる。

 この男の計画は、道内の炭鉱で働く労働者の品定めから始まった。炭鉱夫ならば、大量の爆薬を運び出せると踏んだのだった。街角で「自転車修理をするふりをして」(報告)、居合わせた6人に声をかけ、接近した。

「魚がたくさん獲れる場所を知っている。爆薬を持って来いよ。獲った魚を山分けしよう」。男はこう言って、炭鉱夫をそそのかした。爆薬を水中に投げ込めば、爆発の衝撃で大量の魚が浮かび上がる、という説明だ。

 食糧不足が深刻な北朝鮮では、住民は常に腹を空かせている。3人の炭鉱夫が男の話に乗り、「爆薬、雷管、導火線を秘密裏に(作業場から)持ち出し、男のところに持って来た」という。

 爆破計画はここまでは順調に進んだ。ところが、計画は保衛部の耳に入るところとなる。残る3人の炭鉱夫が不審に思い、「爆発物を人の手に渡すのは問題だ」として、地元の保衛機関に申告したのだった。

 これとは別に、男が平素から、「首領の偉業継承問題(権力世襲を指すとみられる)」に批判的な発言をするのを聞いていた、近隣住民も通報していた。

 その結果、爆破計画は未遂に終わり、「われわれの首脳部を狙ったこいつは捕まった」(保衛部幹部)という。

【PROFILE】しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。

※SAPIO2017年7月号

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