米大統領を「絶対に死なせない」 WHMUの重要任務とは

米大統領を「絶対に死なせない」 WHMUの重要任務とは

エアフォース・ワンでは外科手術も可能 ZUMA Press/AFLO

 米大統領の健康を徹底管理し、万一の際にはあらゆる手段で大統領の命を救う。それが大統領専属医師団「WHMU(ホワイトハウス・メディカル・ユニット)」に与えられた使命だ。在米ジャーナリストの武末幸繁氏が、知られざるWHMUの実態を明かす。

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 WHMUは大統領と副大統領、およびその家族の健康管理を行い、病気やケガをした場合は手術を含めた最高レベルの治療を行う「スーパー・ドクター」集団だ。

 WHMUは、大統領の移動手段や食事、医療などを担当する「ホワイトハウス軍事局」の所属で、基本的な人員は、医師5名、看護師5名、医師アシスタント(PA)5名、救急医療隊員(衛生兵)3名、事務管理者3名とIT管理者1名の計22名で構成される。

 ユニットには内科、外科、救急医療などの専門医に加え、時々の大統領の健康状態に合わせた分野の医師が集められる。医師の指名は大統領および大統領府スタッフが行い、軍医から選ばれることが多い。

 今年1月に就任したトランプ大統領も、約40年間ホーム・ドクターを務めたハロルド・ボーンスタイン氏ではなく、WHMUの常駐医、ロニー・ジャクソン氏(海軍少将)を主治医に指名した。

 なお主治医は一般的に「ホワイトハウス・ドクター」と呼ばれ、WHMUのディレクターを兼務する。

 WHMUはホワイトハウス内に診療所を構え、いつでもただちに大統領のもとに駆けつける態勢をとっている。薬剤や医療器具はもちろん、手術や緊急蘇生ができる医療機器を完備した診療所は、大統領の「プライベート病院」のようなものだ。

 さらに、最低1人の医師が「エグゼクティブ・レジデンス」と呼ばれる大統領居住エリアに常駐し、24時間、不測の事態に備えている。

 もちろん、大統領の日々の健康管理も重要な任務だ。

 1974~1981年にかけて、フォード、カーター両大統領の主治医を務めたウィリアム・M・ルカシュ氏は、「大統領の性格やストレスの状態など、健康に及ぼすすべてのことを把握するよう努めている。ホワイトハウスのキッチン、食器、食器置き場や配管設備にいたるまで衛生面への配慮も万全を期している」と当時のインタビューで語っている。

 近年は、愛煙家として知られたオバマ大統領が、「ホワイトハウス・ドクターの強い要請によりニコチンガムで禁煙を成功させた」エピソードがメディアで報じられた。

 私見ではあるが、フォード大統領が93歳という長寿をまっとうし、それ以降も3人の大統領(カーター、レーガン、ブッシュ・父)が卒寿(90歳)を迎えたのも、大統領時代に徹底した健康意識をホワイトハウス・ドクターに叩き込まれたためではなかろうか。

●たけすえ・ゆきしげ/1959年福岡県生まれ。雑誌編集者などを経て1988年渡米。2005年からフリーランスに。現在邦字紙「さくら」の編集長も務める。

※SAPIO2017年8月号

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