中朝首脳会談 服装に見る両国リーダーの貫禄の差

中朝首脳会談 服装に見る両国リーダーの貫禄の差

中朝首脳会談では貫禄の差が…

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人をピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、中朝首脳会談での両国夫妻のコーディネートに注目。

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 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が、ついに外交デビューした。初外遊先はやはり中国、習金平(シュウ・キンペイ)国家主席との首脳会談だ。そして今回は、妻の李雪主(リ・ソルジュ)夫人も同行していた。

 移動は北朝鮮の特別列車で、北京までの所要時間は26時間という長旅。途中の駅では厳戒態勢が引かれたため、中国の国営メディアが発表するまで、北京入りした北朝鮮の要人が金委員長なのか、妹の金与正(キム・ヨジョン)氏なのか…と憶測が飛んでいたほどだ。

 姿を見せた金委員長は黒の人民服。胸にあのバッジはない。昨年の軍事パレードや今年の新年の辞で見せた紺やグレーのスーツ姿でもない。北朝鮮のトップとして正装である人民服を着用し、訪中の間はそれで通していた。

 同じく外交デビューした李夫人は、ベージュのジャケットを羽織ったように見える膝上丈のワンピース。胸元にブローチを着け、同じ色のハイヒールを履いていた。茶色は落ち着き、安定、安心、素朴さを印象づける色である。2日目も白のシンプルなノーカラージャケット。胸に付けていたのは紺色のコサージュだろうか。初外交にあたって、どちらも自分を主張しない色とデザインだ。

 迎えた習主席は黒のスーツにワインレッドのネクタイ。強さや華やかさを表すとともに重厚で温かく、落ち着いた印象を与える。大国として懐を開いて金委員長を迎えるには、適した色だろう。ワインレッドは、トランプ大統領の真っ赤なネクタイほど積極性や攻撃性、活動性を印象づけないが、明るさや強さに加えて、充実感や成熟した感じを与える色になる。そのためこの色のネクタイは、首脳会談だけでなく企業のトップが集まる会合などで目にする機会が多い。

 習主席が2日目に選んだネクタイは寒色のきれいなブルー。冷静で知的、爽やかで信頼できるイメージだ。温かく迎え入れたが、ここからは冷静に北朝鮮の出方を見つめ、判断するという意思が含まれているような印象だ。

 習主席夫人である彭麗媛(ホウ・レイエン)氏は、李夫人とは真逆で、ファーストレディーの存在感や貫禄を、白地に黒の大きな柄が入った柔らかいワンピースでアピールした。もともと国民的な歌手であり、中国で最も人気があるファーストレディーは、大胆な柄も美しく着こなしてしまう。

 夕食会は鮮やかな紫のワンピース。感性豊かで神秘的、高貴さをイメージさせる色だ。2日目はグレーに白い柄のワンピース、首元にはオフホワイトのストールが巻かれている。その着こなしには、気位の高さや大人の雰囲気が醸し出されていた。習主席夫妻と金委員長夫妻の服装を比べてみると、その雰囲気は大人と子供といった感じだ。老練さと若さや硬さ、洗練さとやぼったさ──まさに対照的である。

 両者の服装からくるイメージは、そのまま今回の首脳会談そのものにも投影されていた。金委員長は驚くほどの低姿勢。そんな彼に習主席は大人感を漂わせて、若輩者を迎え入れたという印象だ。背景にはトランプ大統領との会談を前に、中朝関係を改善し、中国の後ろ盾を得ておきたいという意図があるらしい。それにしても、これまで目にしてきた金委員長とはまるで別人だ。

 握手している習主席と金委員長の写真を見ると、金委員長の肘の位置が上がっているのがわかる。背の高い習主席の高さに合わせて握手をしているため、金委員長の肘が持ち上がっているのだ。いつもは堂々と先頭を闊歩しているが、赤絨毯の上を歩く時も決して習主席より前に出ることはない。

 会談の席では、習主席の話をやや緊張した面持ちで聞いたり、熱心にメモする映像が撮られている。自分の話にメモを取らなかったという理由で、高官を粛正したという噂がある金委員長の行動とは思えないほど、従順さを示している。ちなみに並んで座る北朝鮮の同行者らも、金委員長がメモしている間は一緒にメモしていた。そこは統制が取れているらしい。

 習主席をじっと見つめて、その話に真剣に耳を傾けている間、金委員長の手は絶えずテーブルの上に置かれていた。下心がないことを仕草で示しているのだろうか。自分が話している時は、前にずらりと並んだ中国閣僚らに向かって、右へ左へと視線を配るという気の使いようも見せていた。ちなみに、習主席も金委員長も話している間中、互いに目を合わせることはなかった。

「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」という金委員長。果たして、今度こそ習主席をやきもきさせ、そのメンツを潰すことなく有言実行となるのか…? 5月に予定されているトランプ大統領との会談に向け、その動向に注目したい。

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