「トランプはステロイドでおかしくなった」の声が続々

「トランプはステロイドでおかしくなった」の声が続々

ホワイトハウス内のクラスターはさらに拡大(時事)

 トランプ大統領の異例のコロナ闘病キャンペーンは、アメリカ内外で物議をかもしている。選挙を優先するあまり、スタッフや側近を命の危険にさらしていることはもちろん、無理やり症状を抑えるためにいくつもの薬を同時投与して健康を維持している(ように見える)こと自体が、国家と世界の大きなリスクファクター(危険因子)になっている。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。

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 すでにお伝えしたように、トランプ大統領はわずか3日で退院するために、強いステロイド剤を使用した。強いステロイド剤には精神の高揚や落ち込み、さらに認知障害などの副作用があり、大統領として正常な判断ができるのかどうかに疑問が生じる。これは、アメリカと世界にとって選挙戦よりも重大なテーマである。なにしろ人類を滅ぼすだけの核ミサイルのボタンを今も握っているのである。

 その影響は、すでにアメリカでも取り沙汰されている。コロナ危機対策として、政府は1兆6000億ドル(約170兆円)の予算措置を提案しているが、民主党のナンシー・ペロシ下院議長との折衝は難航し(民主党は2兆4000億ドルの予算を要求している)、ついにトランプ氏は「民主党との交渉は大統領選挙後まで延期する」と一方的に話し合いを打ち切ってしまった(翌日に一部撤回)。それに対し、怒り心頭のペロシ氏は、「強いステロイドのせいで、大統領の心理が侵されているのではないか」と非難した。かなり過激な発言である。

 実際、トランプ氏の3日間の投薬治療は通常行われるものとは大きく違った。強ステロイド剤であるデキサメタゾンは、精神に影響を与えるだけでなく、糖尿病の誘発などの重篤な副作用を起こす可能性がある。それ以外にも、まだ治療効果が実証されていない「ポリクローナル抗体カクテル」を8グラム投与され、コロナ感染症治療薬として認可されたレムデシビルは複数回使われた。その他、亜鉛、ビタミンD、ファモチジン、メラトニン、アスピリンを毎日服用しているという。こうなると、ステロイド剤の影響がどうかという以前に、そもそも世界で最も過酷な選挙戦を戦う健康状態ではないことは明白だ。

 さて、トランプ氏の心身状態も心配だが、アメリカに暮らす筆者としては、トランプ氏が「キレた」ことで本格的なコロナ対策が選挙後に先送りされた影響も気になる。支援を期待していた国民の多くは落胆し、怒っている。貧困層にとっては、キッチンから貴重な食料が消えたような衝撃である。アメリカでは、この8月に廃業した人が85万人もいる。これは例年の同時期に比べて6割増しの数字だ。

 筆者の行きつけレストランの経営者N氏は、「店の営業はようやく許可されたが、25%しか客を入れてはいけないと決まっている。これでは店をやるだけ赤字になる。人件費も出ない。悪いジョークだ。大統領殿は、救済策は選挙後だというが、本当に薬のせいで頭がおかしくなってしまったのではないか」と吐き捨てる。

 N氏に、選挙までの3週間にどれだけの支援が必要かと問うと、しばらく考えてから「少なくとも3000ドル(約32万円)」と答えた。切実な金額なのだろう。

 トランプ氏の暴走でバイデン氏の支持率は上がっているが、筆者から見ると、同氏も庶民の窮状はまるでわかっていない。リンカーン大統領が、「人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、我々はここで固く決意する」と演説したペンシルベニア州ゲティスバーグを訪れたバイデン氏は、そこで民主党左派同士の対立をやめるよう訴えた。リンカーン演説との落差が際立っただけだ。要するにバイデン氏は敵失に浮かれて、国民の苦しみにはout-of-touch(無知・無関心・音信不通)なのである。

 リベラルを掲げながら国民を見ない挑戦者と、「強いアメリカ」を標榜しながらステロイドを投与してバルコニーに立つ現職が争う大統領選挙は、もはや世界のリーダーを決める戦いには値しない。

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