外交チームは「親中派」なのか!? 「バイデンはパンダに抱きつく」説を国務省元高官に直撃

外交チームは「親中派」なのか!? 「バイデンはパンダに抱きつく」説を国務省元高官に直撃

バイデン氏がファミリービジネスで中国と近いことは事実だが(AFP=時事)

 アメリカでは、ようやく政権移行の手続きが始まり、バイデン政権発足に向けて動き出した。日本にとって気になるのは、大統領選挙でトランプ陣営からさんざん追及されたバイデン氏と中国の蜜月である。尖閣問題などで利害が対立する中国とアメリカが接近すれば、日本はどうなるのか。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、バイデン政権の対中政策について国務省の元高官を直撃した。

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 ジョー・バイデンという人は、存外、芯の強い政治家かもしれない。45歳の時に脳動脈瘤の手術を受け、生死の境をさまよった。議員活動を続けることも危ぶまれたが、政界に復帰してからは上院外交委員長などの要職を歴任し、オバマ政権では8年間、副大統領を務めた。

 今回の大統領選挙では、トランプ氏から、脳の手術をしたが頭は大丈夫か、クスリで元気に見せかけているのではないか、などと挑発され、「Sleepy Joe(寝ぼけたジョー)」と呼ばれ続けた。それに対し、バイデン氏は汚い言葉は使わず静かな戦いを貫く、いわゆる「ローズガーデン戦略」で応じた。最終的にアメリカの有権者はバイデン氏を選んだのだから、この戦略は奏功したと言うべきだろう。

 筆者は、バイデン氏が上院外交委員長の時にオフィスで会ったことがある。懐刀の秘書と話し込んでいるとバイデン氏がひょっこり現れ、簡単な会話をした程度だったが、穏やかで真面目な人柄を感じた。その時に、日本に大いに興味を持っている、日本から学びたいことがいろいろある、と語っていたことも印象に残った。

 そのバイデン氏が発表した新しい外交チームに対して、共和党は早くも攻撃態勢を取っている。要の国務長官にアントニー・ブリンケン氏、国家安全保障担当補佐官にジェイク・サリバン氏、国連大使にリンダ・トーマス・グリーンフィールド氏を充てる陣容に対し、共和党のトム・コットン上院議員は、「彼は今やパンダ・ハガー(パンダに抱きつく人=親中派)に囲まれており、中国に甘い顔をしたいという衝動が増すばかりだろう」と揶揄した。反中で知られ、共和党の次世代のリーダーであるマルコ・ルビオ上院議員も、「アメリカの衰退につながる」とこき下ろしている。

 この評価は妥当なのだろうか。もし本当にバイデン政権が中国寄りであるなら、尖閣問題を抱える日本にとっては脅威になる。国務長官になるブリンケン氏はバイデン氏の側近として長く盟友関係にあったが、対中政策については親中派という説と反中派という説があり、はっきりしない。間違いなく言えるのは、誰もが認める実務家としての能力と粘り強い性格である。ブリンケン氏をよく知る国務省の元高官に話を聞いた。

「ブリンケン氏は、重要案件は部下ととも徹底的に研究し、調べ、戦略をじっくり練ってから交渉にあたる。相手を脅したり押さえつけたりする強引な手法はあまり好まず、粘り強く話し合うタイプだ」

 中国への態度はどうか。

「彼は、中国はいまやアメリカの競争相手になったと公言している。トランプ大統領が同盟国との関係を悪くしたために、中国に付け入る隙を与えてしまったとも言っている。一方、日本との交渉というのは、常に忍耐を必要とする。簡単には決まらない。議院内閣制と大統領制の違いもあるが、そういう交渉はブリンケン氏に向いているだろう。そして、日本はいったん約束すれば必ず守る美徳を持っている国だ」

 日本人としてはホッとする話だが、この元高官は尖閣問題については大きな懸念があると指摘した。

「バイデン政権にとって、中国の海洋進出は大きな懸案になる。沖縄周辺の海域も対象になるので、日米は共同して対処する必要がある。尖閣諸島は南シナ海より危険だ。日本の自衛隊は、尖閣防衛のための演習をしていない。国内の反対論もあるのだろう。それに対して、中国は戦争をよく知っている。南シナ海よりたやすく奪取できると考えるかもしれない。

 それはアメリカにとっても好ましくない。この問題でバイデン政権が中国に妥協して日本を見捨てるようなことはない。バイデン氏もブリンケン氏も、東アジア政策についてはオバマ政権の方針を大きく変えないだろう。オバマ大統領が常に言っていたのは、アメリカ、日本、インドの連携で中国を抑え込むということ。日本は、バイデン政権との関係構築と同時に、インドとの連携を急ぐ必要があるだろう」

 アジア外交に関しては、巷間言われるような、バイデン氏が安易に「パンダに抱きつく」ようなことはなさそうである。ただし、ブリンケン国務長官を筆頭に、日本にとってはなかなか手ごわい交渉相手が揃うようだ。

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