鉄条網を越えて駆けつける〜♪北朝鮮で流行する「脱北替え歌」

鉄条網を越えて駆けつける〜♪北朝鮮で流行する「脱北替え歌」

金正恩夫妻とモランボン楽団(朝鮮中央通信)

北朝鮮の金正恩党委員長は今月1日、平壌の東平壌大劇場で行われた韓国芸術団の公演を、李雪主(リ・ソルチュ)夫人とともに鑑賞した。その様子は北朝鮮の国営メディアを通じて大きく報道された。

最高指導者が直々に、ご禁制の韓国音楽を鑑賞したことは、北朝鮮の人々に「どうして自分たちはダメなんだ!?」という思いを抱かせてしまう「リスキーな行為」だが、実際にそのような動きが現れつつある。

太平洋を越え 大西洋を越え インド洋を越えてでも

あなたが呼べば駆けつける 無条件で駆けつける

鴨緑江を越え 豆満江を越え 鉄条網を越えてでも

あなたが呼べば駆けつける 無条件で駆けつける

鴨緑江(アムロッカン)と豆満江(トゥマンガン)は、いずれも中朝国境を流れる川だ。つまり、これは露骨に脱北の意思を歌う内容なのだ。

現地の人々はかねてから、韓国、米国、中国のラジオや、あるいはUSBやマイクロSIMに保存されたファイルで原曲に慣れ親しんでいたようだが、金正恩氏公演観覧のニュースを接し、「元帥様(金正恩氏)も歌ってるんだから」と躊躇することなく替え歌にして歌うようになったようだ。

「(お上から)何か言われても『愛には国境がない、という意味だ』とごまかすが、実は(北朝鮮から)抜け出したいという心情が反映されたもの」(情報筋)

北朝鮮の庶民は今までも、金氏一家を称える歌の歌詞を巧みに変えて、体制を風刺する替え歌につくりあげてきた。

当局は度々「替え歌禁止令」を出しているが、今回の歌に関しては今のところ静観しているという。

浮かれムードで韓国の歌を口にする人が多い一方で、おりからの「非社会主義現象」取り締まりキャンペーンで「見せしめ」として摘発され、重罰に処されることを心配し、慎重になっている人も多いようだ。実際に、摘発事例が複数伝えられている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)では、友人の誕生日パーティでK-POPを歌ってダンスしていた若者が保安署(警察署)に連行され取り調べを受けていると、デイリーNKの現地の情報筋が伝えた。歌を聞きつけた隣人に密告されたようだ。

また、朝日新聞は8日、両江道の三水(サムス)で、韓国の歌50曲を聞いてダンスし、USBメモリーにコピーして他人に渡そうとした未成年6人に対する公開裁判が行われ、4人に労働鍛錬刑1年、2人が教化所(刑務所)送りの判決を受けたと報じた。

あるデイリーNKの内部情報筋は、「韓国芸術団の公演を労働新聞が報じたことで、これからはわが国民も韓国の歌を聞いて踊っても良いのではないかと思い始めている人々が多いが、(金正恩氏が)いつ心変わりするかわからないので、今は黙っておとなしくしておくべきだという声も少なくない」と語っている。

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