北朝鮮で広がる「統一懐疑論」と韓国国民の「統一への冷めた見方」

北朝鮮で広がる「統一懐疑論」と韓国国民の「統一への冷めた見方」

4月27日、板門店で南北首脳会談を行った北朝鮮の金正恩委員長と韓国の文在寅大統領

北朝鮮と韓国の対話が進む中で、北朝鮮国民は韓国からの経済協力、統一への期待感が高まっていることはデイリーNKでも既報のとおりだ。喜びのあまり期待感が暴走するほどだった。

しかし、5月に今年2回目の南北首脳会談から開催されてから2ヶ月以上が経ち、北朝鮮国内では統一への期待感を訝しむ声が上がりつつある。

平壌のデイリーNK内部情報筋は「住民は統一すればいいと期待している」と前提を起きつつも、ある種のあきらめムードが漂いつつあると、現地の雰囲気を伝えた。

「統一しても庶民の暮らしは楽にならない」(情報筋)

北朝鮮の国営メディアは南北の融和ムードを連日のように伝えたが、一般の北朝鮮国民は政府から騙され続けてきたため、逆に疑っているというのだ。統一を望む気持ちに変わりがなくても、統一したとしてもその効果には懐疑的というわけだ。

この情報筋もその中のひとりだ。

「市民は統一を望んでいるが、だからといって南朝鮮(韓国)に自由に行けるようにはならないだろう。南に親戚がいるとして、訪ねていったら帰っくる者はいないだろう。だから政府は南朝鮮訪問を許可しないだろう」(情報筋)

南北の往来が可能になったとしても、堂々と脱北されるのを防ぐためにそう簡単には許可を出さないと見ているのだ。体制を維持するために移動の自由を極度に制限している北朝鮮で暮らしてきたからこそ、このような発想になるのだろう。

情報筋は言及していないが、韓国に存在する統一に対する冷めた見方が、北朝鮮国内の世論に影響している可能性も考えられる。

世論調査機関・韓国リサーチが今年の1月に韓国国民800人を対象に行った「2018年南北関係と統一についての国民意識調査」によると、「統一を急ぐ必要はない」が58.5%、「できるだけ早く統一したほうがいい」が26.7%で、あまり統一に積極的でない姿勢が伺える。また、「北朝鮮はどのような国」という問いに「北朝鮮は同じ民族だが違う国」が73.2%、「同じ国」が25.2%と答えた。

韓国の政府系シンクタンク・統一研究院が満19歳以上の韓国国民1000人を対象に行なった「2018統一意識調査」によると、「統一が必要だ」という問いに「そうだ」と答えた人は2017年の57.8%から70.6%に増加した。

ただ、「北朝鮮に興味を持っている」という問いに「そうだ」と答えた人は45.8%から47.6%に増えるにとどまり、興味を持っていない人も52.3%に達した。

スマート学生服が韓国の小中高校生5274人を対象に行なった調査では、全体の32.7%が「南北統一に否定的」と答え、「統一が実現したらしてみたいこと」の1位は「列車に乗って中国とロシアに行く」(41.2%)で、北朝鮮よりもその先の大陸に興味を持っている生徒が多いことがわかった。

南北融和ムードを受けて、韓国国民の持つ北朝鮮のイメージは多少なりとも改善したが、北朝鮮への関心はさほど高まっておらず、統一に後ろ向きという姿勢にも大きな変化はなかった。

仮に統一が実現するか、あるいは自由往来が認められるようになったとしても、韓国国内に根強く残る脱北者への差別意識が、北朝鮮国民を苦しめることになるだろう。

全州紀全大学の教授を務める脱北者のチュ・スンヒョン氏は、今年3月にハンギョレ新聞とのインタビューで「中国朝鮮族が二等国民だとするならば、脱北者は不可触民だ」と述べ、韓国在住の脱北者は差別を避けるために、朝鮮族のふりをせざるを得ないと指摘した。

チェ教授はまた、著書『遭難者たち』の中で次のように述べている。

「命をかけて非武装地帯を越えた私だが、(韓国に来て)すぐに『剰余人間』に転落した。北朝鮮では一度たりとも飢えたことがなかった私が、韓国で来て初めて飢えというものを経験した。生活費を稼ぐためにガソリンスタンドを訪ねて面接を受けたが断られてばかりだった。求人広告が掲載された生活情報誌が部屋の片隅に積み上がっていったが、脱北者を雇ってくれるところは一つもなかった」

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