金正恩氏の抑圧体制が量産する北朝鮮の「凶悪殺人事件」

金正恩氏の抑圧体制が量産する北朝鮮の「凶悪殺人事件」

金正恩(キム・ジョンウン)氏

北朝鮮の両江道(リャンガンド)で、凶悪な殺人事件が起きた。それは、北朝鮮の抑圧体制が生んだ悲劇とも言うべきものだ。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、7月中旬のある夜のこと、恵山(ヘサン)市の渭淵洞(ウィヨンドン)で、洞事務長(末端行政機関の職員)の夫が刺殺された。1人で自宅にいたところ、押し入ってきた何者かに縄で縛られ、複数箇所を刺されるという残忍なものだった。

被害者の泣き叫ぶ声に気づき窓越しに覗き込んでしまった隣家の老人も、口封じのために殺されてしまった。

さらに、この老人が殺害される様子を偶然目撃した女性は、犯人に太腿を刺されたが必死で逃げた。叫び声を聞いて人々が集まってきたため、犯人は逃走した。隣人の協力で病院に運ばれた女性は、一命を取り留めた。

北朝鮮でも、他の国と同じように凶悪事件は起きているし、犯罪組織のようなものもある。。

国連薬物犯罪事務所の集計では、韓国の殺人事件発生率(2016年)は10万人あたり0.70件で、世界で最も殺人事件の少ない国の一つだ。一方で北朝鮮の殺人事件発生率(2015年)は10万人あたり4.4件。世界平均の6.2件よりは低いものの、韓国、日本やアジア平均の2.9件よりはるかに高い。

権力者の横暴による事件はうやむやにされる一方で、巷の犯罪については、日本の警察に当たる人民保安省が捜査に当たる。しかし、その捜査能力は高くはないようだ。

今回の事件について当局は、個人間の怨恨による犯行と見て、捜査に乗り出した。「人殺しは必ず捕まることになっている」として根拠不明の自信を見せているというが、捜査は難航しているもようだ。

「当局は、さらなる目撃者を探すために布告を追加で出した。唯一の目撃者である女性の陳述を元に犯人を追っているが、手がかりすら見つけられずにいる」(情報筋)

被害者の妻の肩書である洞事務長とは、洞事務所(末端行政機関の機関)の職員で、近隣住民に朝鮮労働党の政策を伝えたり執行したりする役割を担っている。物資や現金の供出を督促、強要したり、様々な名目でワイロを要求したりすることから、住民にとっては目の上のたんこぶのような存在だ。業務遂行に関連したトラブルで恨みを買い、夫が犠牲になったというのが当局の見方だ。

実際、抑圧体制を末端で執行する保安員(警察官)、保衛員(秘密警察)などが恨みを買い殺害される事件が度々起きている。例えば2012年の12月ごろ、全国各地で「オパシ」(悪徳保安官)が次々に殺害される事件が起きた。

(参考資料:北朝鮮で悪徳警察官が次々に殺害される…妻子も巻き添えに)

しかし、今回の事件は、「目撃者まで殺害する」という残忍なやり口で、一般住民、司法機関の職員のみならず、幹部までも動揺させている。

「幹部たちは、顔を合わせるたびに『気をつけよう』と声を掛け合っている」(情報筋)

北朝鮮で多発する殺人事件の根底には、人民を力で抑えつける北朝鮮の抑圧体制がある。他国では罪にならないようなことでも乱暴に摘発され、運が悪ければ処刑されてしまう。「どうせ捕まったら殺されるのだから、いっそのこと相手を殺してしまおう」という心理が働いてしまうのだ。

関連記事(外部サイト)