北朝鮮の大学、中退者急増のワケ

北朝鮮の大学、中退者急増のワケ

平壌教員大学を現地指導した金正恩氏(2018年1月17日付朝鮮中央通信より)

国連人口基金が2008年に行った調査によると、北朝鮮の大学進学率は男性14%、女性8%。大学全入時代となり2009年(77.8%)を境に進学率が減少、2017年は68.9%となった韓国とは対象的だ。(韓国教育省の統計)

北朝鮮では大学に進学することがエリートの証明となっているが、高等中学校(高校)から直接進学する学生は2〜3割に過ぎない。残りは、兵役を終えた除隊軍人や一度は職場に務めた経験を持つ人で、軍や職場から推薦を得て入学する。ところが、せっかくツライ兵役を終えて大学生になったのに、中退してしまう除隊軍人が増加傾向にあると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

ある除隊軍人は、軍の推薦を受けて兵役を終えた後で農業大学に入った。しかし、今は中退してソビ車(個人経営の輸送車両)を使って、大量の商品を地方から地方へ移動させる商売をしている。

昔も今も、朝鮮労働党への入党と大学卒業は、幹部になるための必須条件だ。大学に入るにも幹部になるにも、自らの出身成分(身分)が問われる。以前よりは多少緩和されたとは言え、成分が悪ければエリートへの道は閉ざされている。

しかし、今では商売に成功して富を蓄積し、不動産に投資するほどのトンジュ(金主、新興富裕層)になれば、幹部にならなくとも社会的にはエリートと見なされる時代だ。

教育は無償のはずの北朝鮮だが、大学入学にも卒業にも、「ワイロ」という名の多額の学費が必要となる。学生は、学費、生活費稼ぎのバイトに追われることになる。そこまでして大学を出る必要がない、時間の無駄だと、現実的な判断をして中退してしまうのだ。

そもそも幹部になるためではなく、別の目的で大学に入る人々も少なくない。

北朝鮮には「集団配置」という制度がある。国が労働力を必要とする地域に、兵役を終えたばかりの除隊軍人を大量に送り込むという制度だ。行き先は炭鉱や山奥の協同農場など誰も行きたがらないところだ。

例えば当局は7月中旬、咸鏡北道の穏城(オンソン)にある農場に、除隊した兵士を大量に送り込むと通告している。経済制裁下での輸出に制限のないタバコを増産し、外貨を稼ぎ出すことが目的だ。

生まれ育った故郷から遠く離れ、生活インフラも整っておらず、商売をしようにもまともな市場すらない。そんな集団配置先に嫌気が差して、勝手に故郷に戻ってしまったり、中には脱北したりする人もいる。

そんな制度の対象外となるのは、兵役を終えた後に大学に入ることが決まっている人だ。つまり、集団配置で僻地に送られることを防ぐためだけに、大学に入ろうとする人がいる。その目的が達成できれば、時間の無駄にしかならない大学はさっさと辞めてしまう。

大学を中退する人が増えている背景には、幹部になっても得にならないという考えが広がっていることも関係する。

「除隊を控えて地方大学の入学試験を受けたある兵士は、市場でカネ儲けをする元上官の姿を見て『悩んでいる』と打ち明けた。幹部になるのも難しく、なったとしてもワイロを受け取るポジションにつけなければ、生活が苦しくなるのではないかと考えているようだ」(情報筋)

幹部になっても、それなりの権限を持ったり、住民と接するポジションになければ、ワイロを受け取るのは難しい。子どもの小遣い銭ほどの給料しかもらえないのに、責任は重く、処刑されるリスクすらある幹部になろうと思わないのは、当然のことだろう。

関連記事(外部サイト)