「朝鮮半島でようやく戦争の危険が減りそうだ」と言える理由

「朝鮮半島でようやく戦争の危険が減りそうだ」と言える理由

「9月平壌共同宣言」の発表後に握手を交わす文在寅氏と金正恩氏(2018年9月19日、平壌写真共同取材団)

北朝鮮の金正恩党委員長と韓国の文在寅大統領は19日、前日に続き平壌で首脳会談を行い、「9月平壌共同宣言」に署名して発表した。

「共同宣言」は、前文のほか(1)軍事的な敵対関係終息と戦争の危険の除去(2)交流・協力の増大と民族経済の発展(3)離散家族問題の解決(4)多様な分野での協力と交流(5)朝鮮半島の非核化(6)金正恩氏のソウル訪問――以上の6項目からなっている。

まず評価できるのは、この共同宣言が誠実に実行されれば、朝鮮半島での戦争の危険が相当程度、除去されるということだ。

共同宣言は、「板門店宣言軍事分野履行合意書」を付属合意書として採択している。そこで取り決められた内容の多くは、偶発的な軍事衝突を防止するためのものだ。これがいかに重要であるかは、2015年8月に起きた「地雷爆発事件」の経過を振り返ればわかる。

韓国京畿道(キョンギド)の非武装地帯(DMZ)内で同月4日、韓国軍の20代の下士官2人が地雷を踏み爆発。足を吹き飛ばされるなどの大けがを負う事故が起きた。その場面は後に、監視カメラの映像が公開されている。

この件を巡り、韓国国防部は同月10日、爆発物の残骸を分析した結果、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の対人地雷と一致したことを発表。また、在韓国国連軍司令部の指示で設置された調査チームも、地雷が仕掛けられたのは事件の少し前のことであり、洪水などで北朝鮮側から流れ着いたり、過去に埋められたりした地雷が爆発した可能性はないとした。

実は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は同年4月から、DMZで不審な動きを見せていた。軍事境界線の西部から東部までにわたり、5人〜20人単位で近接偵察と何らかの作業を繰り返していたのだ。

DMZでは近年、北朝鮮の兵士が徒歩で南側に入り、亡命するなどの出来事が相次いでいた。それにまったく気付かない韓国軍の警備の欠陥が指摘されていた一方、北朝鮮側の士気の緩みにも深刻なものがうかがえた。北朝鮮軍はこの頃すでに、食糧不足や性的虐待の横行で、規律が地に落ちていたのだ。

そうしたこともあり、韓国側では当初、北朝鮮が兵士の脱北防止のために地雷を埋設しているものと見ていたフシがあるのだが、冒頭の事件により、事態は一転して南北の対決モードに突入してしまった。

韓国軍は、北朝鮮の地雷が爆発し、兵士らの身体が吹き飛ばされる瞬間の動画を公開。仲間が傷つけられる場面を見た将兵の中には、強い復讐心を抱いた者も少なくなかっただろう。

韓国軍が報復措置として、軍事境界線付近での拡声器による心理戦「対北朝鮮拡声器放送」を11年ぶりに再開すると、北朝鮮が「準戦時状態」に突入。南北が砲火を交える事態に発展した。

つまり、対人地雷を仕掛けた北朝鮮側に韓国を攻撃する意図はなく、韓国側も薄々それがわかっていながら、後戻りできなくなってしまったという構図だ。

実は、軍事境界線の韓国側で暮らす住民らの間では、この事件が近年で最も「危ない場面だった」と言われている。このときは北朝鮮との軍事衝突に備えて防空壕に退避させられた住民らもいたが、北朝鮮とトランプ政権の間で緊張が高まった昨年にも、そのようなことはなかったのだ。

朝鮮半島ではこのように、大小さまざまな「戦争の火種」が日々くすぶってきた。昨年11月、北朝鮮兵士が板門店(パンムンジョム)を駆け抜けて韓国へ亡命した事件も、一歩間違えれば軍事衝突につながりかねなかった。

今後、このようなリスクを劇的に低減できるなら、今回の首脳会談はそれだけで、かなりの成果を上げることができたと言えるかもしれない。

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