金正恩氏の「拷問要員」までが逃げ出し始めた

北朝鮮の秘密警察・国家保衛省から脱北者が続出 北朝鮮当局は公開処刑を再開

記事まとめ

  • 北朝鮮の秘密警察・国家保衛省は、拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営を担当している
  • 金正恩体制の恐怖政治の象徴で、中国での情報収集やビジネス、脱北者の拉致も行う
  • その国家保衛省の関係者7人が脱北し、公開処刑など厳罰方針がさらに脱北を招いている

金正恩氏の「拷問要員」までが逃げ出し始めた

金正恩氏の「拷問要員」までが逃げ出し始めた

2005年8月25日、韓国・ソウルで行われた人権デモで、北朝鮮の拷問場面を演じる学生たち(ニューシス)

北朝鮮の秘密警察である国家保衛省は、拷問や公開処刑、政治犯収容所の運営を担当する、金正恩体制の恐怖政治の象徴である。

その要員は、隣国の中国にも少なからず派遣されている。彼らの活動は情報収集だけにとどまらず、資金稼ぎのためのビジネスや、脱北者の拉致など多岐にわたっている。

そんな要員の中から最近、脱北者が相次いでいる。

中国にいるデイリーNKの情報筋は、詳細への言及は避けつつ、中国・遼寧省の瀋陽に派遣されていた国家保衛省の要員3人が行方をくらませ、同様の事件が同じ遼寧省の丹東、吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉、北京でも起きていると伝えた。

別の情報筋によると、3人は、中国人名義で作った秘密口座が北朝鮮当局に追跡されている徴候を察知し、身の危険を感じて口座の「少なからぬ額」(情報筋)のカネを全額引き出して逃走した。

そしてこの3人の脱北が、新たな脱北事件を引き起こした。

平壌の国家保衛省で、瀋陽の組織を管轄していた処長(部門長)が先月中旬、家族や関係者を連れて丹東を経て中国に脱出した。処長は3人の脱北を知り、連帯責任を取らされることを恐れて脱北したとのことだ。

北朝鮮当局は最近、しばらく控えていた公開処刑を再開している。その裏事情を良く知るだけに、処長も逃げずにはいられなかったのだろう。

国家保衛省は、自省の要員と偵察総局の要員からなる逮捕班を組織し、遼寧省に派遣。「捕まえるまで戻ってくるな」「捕まえるのが困難ならば殺害せよ」との指示を下した。つまり、成果なく帰国した場合は、厳しく責任を問われるということだ。

情報筋によると、一連の事件で脱北したのは、国家保衛省の関係者だけでも7人にのぼるが、厳罰の方針が第3の脱北事件に繋がる可能性もある。ちなみに、すでに脱北した要員の所在の把握はできておらず、逮捕されたとの情報もないとのことだ。

一連の事件を受けて国家保衛省は、今回の事件とは関係のない者を含むすべての要員や貿易関係者に対して、どこに行って誰に会ったかを逐一報告するよう指示を出している。報告を受けた上司は、要員の報告をそのまま信じず、家族に裏取りをするなどチェックを徹底している。

しかし、あまりにも統制が厳しく、外出すらままならない状況に、貿易関係者は苛立ちをつのらせている。ビジネスで稼いで、最高で年間100万ドル(約1億1100万円)に達する上納金のノルマを達成できなければ、帰国させられてしまうからだ。

営業成績の不振の責任を問われ帰国させられた場合、家族もろとも山奥の農場などに追放され、二度と中国の地を踏めなくなるおそれがある。そうなれば「自由で豊かな」中国での暮らしを取り戻すことはできない。それで脱北を選択する人もいる。

北朝鮮に蔓延する厳罰主義が、不正、隠蔽、さらには脱北をも招く原因となっているのだ。

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