経済制裁のシワ寄せか…北朝鮮で「人参ドロボー」が横行

経済制裁のシワ寄せか…北朝鮮で「人参ドロボー」が横行

朝鮮人参を原料とする北朝鮮の商品類(同国宣伝サイト「ネナラ」より)

朝鮮語には「シムボァッタ!」という表現がある。「掘り出し物を見つけた」という意味で使われているが、本来「シム」とは山で自生している朝鮮人参(山参)を指す。効能が高く非常に高価なものなので、1本見つけるだけで一生遊んで暮らせると言われている。

現在、市販されている朝鮮人参は、畑で栽培されたものがほとんどだが、一般的に出荷するまでに4年から6年もかかり、一度栽培した土地では連作できず、10年は休ませなければならないなど、非常に手間がかかるものだ。

北朝鮮では、そんな朝鮮人参を、「シム」を掘り当てるかのように盗み出す窃盗犯が増えていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

人参泥棒が横行しているのは、中国との国境に程近い白岩(ペガム)だ。気候が寒冷で稲作ができないこの地域で、最も儲かる現金作物は朝鮮人参であり、そのため盗難の被害が相次いでいるのだ。

犯人は、平安南道(ピョンアンナムド)から中国製の商品を売るべくこの地域にやってきた商人だ。おりからの制裁不況で品物が売れず、困り果てていた。

そこで損失を穴埋めするために、協同農場の畑に生えている朝鮮人参を盗み出そうとしていた。中国との国境まで数十キロほど離れているが、他の地域と比べて接近が容易で密輸がしやすいという地理的条件を狙ったのだろう。ところが、たちまち農場の管理人に見つかってしまった。保安署(警察署)に突き出されたこの商人は、現在取調べを受けているとのことだ。

朝鮮人参の中でも北朝鮮産のものは特にブランド品として扱われ、2000年代までは高値で取り引きされていた。本場の開城(ケソン)のみならず、全国各地で栽培された朝鮮人参は、水参(スサム、掘り出したままの未加工のもの)、紅参(何度も蒸して乾燥させたもの)に加工した上で、中国本土や香港などに輸出している。もちろん北朝鮮国内の土産物屋でも売られている。

ところが、最近は相場が下がり、水参は密輸しても1キロ400元(約6300円)にしかならないと言われている。

韓国農水産物流通公社の資料によると、中国の人参生産額は2009年から2017年までに63.3%も増加した。旺盛な需要の伸びが背景にある。韓国を見ると、2010年には生産量2万6944トン、輸出単価37.6ドルだったのが、2016年には2万386トン、22.9ドルに減少している。生産面積も減少している一方で、輸出量は増加している。良好な土地や人手の不足はあれど、栽培や加工の技術力と輸出量の増加で対処しているということだろう。

ところが、北朝鮮はそんな流れに追いついて行けず、付加価値の高い製品が生産できていないということだろう。

質の良いものを作ろうと努力しても、1年ちょっとしか経っていないものが盗まれ、安値で中国に売り払われる。農場では遮光幕、ビニール膜、農薬など様々な資材を購入して育ててきたのに、それが一瞬にしてパーになるのだ。また、1年ちょっとしか経っていないものは、薬効成分が少ないため、そんなものを輸出されては北朝鮮産の朝鮮人参の評判が下がり全体の競争力を失うだけだ。

それでも盗難と密輸が相次いでいるのでは、背に腹は代えられない状況だからだ。

貿易会社は制裁の強化以降、数少ない輸出品の薬草、キノコ、朝鮮人参の輸出に力を入れている。それを狙って農場から朝鮮人参を盗む事件が頻発しており、保安署や農場は警備に追われている。

さらには糾察隊(民間人の風紀取り締まり班)も作って、夜間警備に当たっている。それでも被害は起きていることについて「それだけ商売がうまく行かず損をする人が多いから」と情報筋は語った。

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