「死んだのは孤児だから…」金正恩体制支える奴隷労働の生々しい実態

「死んだのは孤児だから…」金正恩体制支える奴隷労働の生々しい実態

三池淵郡の建設現場を視察する金正恩氏(2018年8月19日付労働新聞)

国連人権理事会の第42回定期会合(スイス・ジュネーブ)で20日、北朝鮮の人権状況に対する普遍的定期審査(UPR)報告書が採択された。同報告書には、北朝鮮の人権状況を改善するための262の勧告が盛り込まれている。

北朝鮮はそのうち、国際労働機関(ILO)への加盟を求める勧告について、即座に受け入れないが拒絶でもない「留意」するとの反応を示している。しかし、表現としては「留意」であっても、本音では拒絶だろう。世界でも最悪の「奴隷労働」国家である北朝鮮が、ILOの基準に従って国家経済を運営することなど不可能だからだ。

そのような現実を示す例は、枚挙に暇がない。

韓国の北韓人権情報センター(NKDB)は昨年3月、脱北者からの聞き取り調査を元にして、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が工事に動員され事故に遭っても、まともに補償をしてもらえない実態を告発した。

また、声があげられない立場の弱い人ほど、扱いがひどくなる。当局は、両江道(リャンガンド)の白頭山観光鉄道の建設現場に、コチェビ(ストリート・チルドレン)を多く動員し、事故で亡くなっても「死んだのは孤児だから何事もなかったかのような扱い」(現場の声)をしている。

当局が責任を認め、謝罪した例もあるにはあるが、それは被害者に特権層などがからんでいる場合に限られる。

最近ではあるガラス工場で、大型のガラス板を貨物列車に積み込む作業中に事故が起き、3人が死傷した。ところが、工場は遺族に補償をしないばかりか、「騒ぐな」と脅かす始末だと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

事故が起きたのは今月初め、南浦(ナムポ)にある南浦ガラス連合企業所でのことだ。

北朝鮮を代表するガラス生産工場である同企業所は、黄海南道(ファンヘナムド)夢金浦(モングムポ)の豊富な良質の砂などを使い、板ガラスなど1000種類の製品を生産している。

この日、労働者は貨物列車に工場で生産した大型のガラス板を貨物列車に積み込む作業を行っていた。本来、ガラス製品を荷積みする際には、フォークリフトや移動式クレーンを使用する。しかしこの日は何らかの理由で機械を使えず、出荷を急ぐ企業所は、列車1両あたり北朝鮮としては破格の100ドルから200ドル(約1万800円〜2万1600円)の報酬で地元の若者を雇い、作業に当たらせていた。

四隅に木の台座をはめたガラス板を4人で持ち上げ、列車に積み込んでいたところ、ガラス板が急に倒れてきて、3人が下敷きになり、死傷した。

事故の知らせを聞いて死傷者の家族が現場に駆けつけてきた。3人は若くて誠実な労働者で、幼い子どもを抱えていた。ところが、ガラス工場は家族に対し、次の要求を突き付けた。

「ガラス破損を弁償しろ。騒ぐな」

家族は激しく抗議したが、工場側は「労働者が国家的損失をもたらした」との主張を繰り返したという。遺族は一切の補償を受けられないまま、遺体を収拾し、静かに葬儀を終えるしかなかったという。

このガラス板がどこに使われるか情報筋は明らかにしていないが、国家的プロジェクトに使われるもののようだ。そのような仕事をしていて事故で死傷した場合、当局は通常、手厚い補償はしなくても、見舞金と葬儀代くらいは出すのが一般的だと情報筋は説明した。不平不満が吹き出したり、噂が立つことを恐れてのことだ。

「ところが、彼ら3人に対しては『カネ儲けをしようとして死んだ』とひどい言葉を投げつけ、あれこれ言うなら責任を取らせると言われ、結局静かに葬儀を済ませた」(情報筋)

「人間中心の主体(チュチェ)思想」を掲げる北朝鮮だが、事故に巻き込まれ亡くなったり怪我をした人に対する扱いを見ると、到底人間を大切にしているとは思えない。

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