「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

「革命の道具」として使われる北朝鮮の女性たち

提綱「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」(画像:デイリーNK)

かつては女性政策が進んでいると言われていた北朝鮮。現在の北朝鮮政府の前身にあたる北朝鮮臨時人民委員会は、1946年7月に女性の選挙権、被選挙権の保障、強制結婚の反対、離婚の自由、養育費訴訟権の認定、一夫多妻制の否定などを謳った「朝鮮男女平等権法についての法令」を発表した。またその後、女性をジェンダーロールから解放するための様々な施策を行った。養育や家事の社会化がその一つだ。

それから70数年。女性の地位は向上した部分もある一方で、依然として改善されていない部分もある。そんな現状が、北朝鮮の思想教育にも反映されている。

デイリーNKは、平安南道(ピョンアンナムド)の内部情報筋を通じて、朝鮮社会主義女性連盟(女盟)がメンバーを対象にして行った講演会の提綱(レジュメ)(画像)を入手した。題名は「女盟員たちが社会公衆道徳を自覚的に守ることについて」だ。

「女性の社会主義道徳確立の必要性を説き、資本主義の弊害が生活に浸透することを防ぐ」ことを目的としたこの講演会だが、言い換えれば風紀取り締まりだ。提綱の内容は次のようなものだ。

「女性がいくら容姿が美しく、知識レベルが高くとも、公共の場で分別のない行動を行い、自分が楽するだけならば、文明的でない行動だ」

「道徳的に低劣な軍隊が闘いで勝てないように、道徳が欠如した社会は脆弱なものだ」

「社会に道徳規律を確立するための思想を強調し、社会主義文明建設を推し進めていくことは、社会主義の本来の姿を守り、革命隊伍の一心団結を盤石に固めるために重要な要求」

これは、昨年から始まった非社会主義、反社会主義現象の取り締まりの一環として行われているようだ。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞が今年5月25日に掲載した社説「全社会に美しく高尚な道徳気風を徹底して確立しよう」には、一連のキャンペーンを行うに当たっての、北朝鮮当局の現状認識がわかりやすく現れている。

「今、帝国主義者どもはわが共和国を中から崩すために悪辣に策動している。制裁封鎖の度数を高めることと同時に、腐ったブルジョア道徳と生活様式を突きつけ、人々の精神状態を壊し、わが国内部に不和の種を蒔こうとしているのが敵どもの凶心だ。道徳紀綱が弱まれば、社会主義の本来の姿が乱され、さらには血と汗で勝ち取った革命の戦勝物すらも失うということが、過去の社会主義建設の歴史が刻んできた血の教訓だ」

つまり、韓流など外部からの文化を受け入れることは、思想の乱れを招き、それは1980年代後半の旧共産圏崩壊のような事態に繋がりかねないと危惧しているということだ。

この20年で進んだ市場経済化は、家庭における女性の地位を大きく変化させた。かつては夫の後ろをついて歩く存在だったが、今では経済的な主導権を握っている。女性は男性と違って、国から割り当てられた職場に所属する必要がないため、市場で自由に商売をし、一家の生計を担うことになった。

そんな女性が自由にファッションや韓流を楽しむことは、社会によからぬ影響を与える(と、当局は考える)。また、提綱で言及されていないが、女性たちの間では思想教育用の講演会の欠、飲酒、喫煙、幹部への抗議、悪口などが以前に比べて増加していると情報筋は伝えている。

逆に、経済的な力を持ち、自由に社会活動を行う女性を抑えつければ、男性にも「良い影響」を与えるだろうと、当局が見ているため、女性をターゲットにした思想教育を行っているというのが情報筋の見方だ。伝統的な女性への蔑視と、現代女性への認識が複雑に入り混じっている。

もちろん、当局の考える「国や党、首領、革命のために黙々と働き、身を捧げる」という女性像と、現実の女性の行動は乖離している。それを元に戻そうという流れが、当局の行動の根底にあることは言うまでもない。

前述の労働新聞の社説は、また、女性に対しては次のような要求を突きつけている。

親を失った子どもたちを育てた降仙(カンソン)の地の「乙女の母」のように、戦争老兵(朝鮮戦争参戦者)、栄誉軍人(傷痍軍人)の生活を肉親の心情で世話をする多くの美風先駆者たちのように、助け合い導く集団主義的気風がどこでも高く発揮されなければならない。

しかし、口では高尚なことを言っているが、実態は伴っていない。例えば、美風先ここで言う「美風先駆者」の選抜においては、カネが飛び交っているのが実情だという。

参考記事:北朝鮮、カネまみれの「品行方正」大会・・・表彰も献金次第)

また、栄誉軍人との結婚は半ば強いられたもので、それを巡ってトラブルも発生している。女性が「革命の道具」として使われているということだ。

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